韓国映画振興と大衆文化発展のために『スポーツ朝鮮』が毎年主催している青龍映画賞。2000年の第21回は朝鮮日報社、文化放送、メガボックス・シネフレックスが後援し、テサン・グループの協賛により開催されます。授賞式は、12月1日(金)17:50からソウルの国立劇場大劇場で開かれ、MBCテレビを通じて全国生中継されます。部門は、最優秀作品賞,監督賞,男女主演賞,男女助演賞,撮影賞,脚本賞,技術賞,新人監督賞,男女新人賞,人気スター賞,韓国映画最高興行賞,チョン・ヨンイル映画評論賞の15部門。
この賞の面白い所は、映画ファンのインターネット投票(90%)と専門家の意見(10%)を総合して候補作を決定し、すべての候補作を映画祭の形で上映、審査委員は映画祭で全候補作を見て審査し、その審査結果は新聞ですべて公表されるという点です。映画祭では直近の一年間のヒット作・話題作・問題作などが20作品前後上映されますので、ここ一年間の韓国映画を鑑賞するにはまたとない機会です。
また、青龍賞は韓国映画界の年末のお祭り。授賞式の日にはすべての映画撮影はお休みとなり、スターを含む映画関係者が勢ぞろいします。普段はなかなか生で見ることができない大スター達にも、青龍賞の授賞式に参加すれば簡単に出会うことができます。授賞式の日にソウルにいらっしゃる方は是非参加してみてください。
第21回青龍賞の対象作品は1999年12月から2000年11月11日までにロードショーされた韓国映画。インターネット投票の締め切りは11月16日で、抽選で1等から5等の賞品や参加賞があたります。投票は青龍賞のホームページ(韓国語)でできます。
メガボックスと一緒にする青龍映画フェスティバル
期間 |
11月25日(土)〜30日(木) |
会場 |
メガボックス・シネフレックス ソウル江南区サムソン洞のコエックスモール内 |
入場料 |
当日:4,000ウォン
インターネット前売:3,000ウォン
※ 『スポーツ朝鮮』の割引クーポンをお持ちの方は3,000ウォン
|
上映作品 |
『JSA』,『ペパーミント・キャンディー』,『反則王』,『春香伝』
『秘花 〜スジョンの愛〜』,『アウトライブ −飛天舞−』,『リメンバー・ミー』,『Interview』
『魚座』,『ハッピーエンド』,『なせば成る』,『キリマンジャロ』
『リベラ・メ』,『燃ゆる月』,『プライベートレッスン 青い体験』,『友引忌 −ともびき−』
『少女たちの遺言』,『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』,『ほえる犬は噛まない』
『アナーキスト』,『寵愛』,『LIES/嘘』
|
お問い合わせ |
TEL 02-6002-1200 |
インターネットによる合計99,317人の読者投票を総合した結果、各部門の候補作&候補者が決定されました。これらの候補作は、11月25日(土)〜30日(木)まで東洋最大規模のシネコンであるメガボックス・シネフレックスで開かれる「メガボックスと一緒にする青龍映画フェスティバル」で、9人の審査委員により審査されます。もちろん一般観客の鑑賞も可。
● ちょっと解説
2000年最大のヒット作であり、かつ話題作となった『JSA』が、最優秀作品賞・監督賞・男優主演賞・女優主演賞・男優助演賞の5部門でノミネートされました。ベテラン監督イム・グォンテクの『春香伝』も最優秀作品賞・監督賞・女優助演賞・新人男優賞の4部門でノミネートされ、『ペパーミント・キャンディー』は最優秀作品賞・監督賞・男優主演賞、『反則王』は最優秀作品賞・監督賞・男優助演賞、『秘花 〜スジョンの愛〜』は最優秀作品賞・監督賞・新人女優賞と、それぞれ3部門でノミネートされました。今年は上記5作品が最優秀作品賞と監督賞でノミネートされ、賞取りレースの中核をなしています。
それ以外で注目したいのは、男優主演賞・女優主演賞・女優助演賞・新人監督賞の4部門でノミネートされた『リメンバー・ミー』。主演のユ・ジテ&キム・ハヌルの自然な演技が話題となり、2000年上半期にヒットした恋愛映画ですが、この作品のノミネートには映画ファンの投票が大きく寄与したようです。
男優主演賞ですが、ここ数年常連だったハン・ソッキュの名前がありません。これは今年ハン・ソッキュ主演作が一本もないからです。また、今年ノミネートされたのはいずれも1990年以降にデビューした男優ばかり、更に言えばシン・ヒョンジュンを除いた四人は1995年以降にデビューした若手というのも目を引きます。
女優主演賞は、もうすっかりこの部門のお馴染みになったシム・ウナとチョン・ドヨンに、『JSA』のイ・ヨンエがどこまで肉迫できるかが注目されます。
男優助演賞は、なかなか渋いセレクションになっています。韓国映画には名バイ・プレイヤーと呼べる存在があまりいないのですが、今年は『ナンバー・スリー』の「灰皿投げ」で一躍有名になり、2000年には『反則王』,『なせば成る』,『リベラ・メ』などで活躍したパク・サンミョン、『あきれた男達』でデビューし、『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』に出演した後、『JSA』で大きく花咲いたシン・ハギュン、脇役専門から今年『アナーキスト』,『なせば成る』で印象的な演技を見せたイ・ボムス、『ユリョン』で腹を裂かれてしまう料理長を演じ、2000年には『幸福な葬儀屋』と『キリマンジャロ』に出演したチョン・ウンピョ、『世紀末』,『身魂旅行』,『リベラ・メ』の三作品に出演したチャ・スンウォンと、いずれ劣らぬ活躍振りの5人がノミネートされています。
女優助演賞は、若手のユン・ジヘ,チェ・ジョンユン,ハ・ジウォンの3人がノミネートされているのが目を引きます。彼女らは新人女優賞でもおかしくないフレッシュな顔ぶれ。ちなみにユン・ジヘは『女校怪談』でガリ勉の女の子を演じていた女優です。今回ノミネートされた『プライベートレッスン 青い体験』では、全裸のセックスシーンを熱演。『燃ゆる月』のキム・ユンジンは本来主演のはずですが、助演でのノミネートとなっています。あの配役ではいたしかたないかも知れません。
日本でも「韓国の新世代監督,映像世代,386世代」といった言葉が浸透してきましたが、今年の新人監督賞候補も強力です。いずれの作品も国内で大ヒットしたか、国際映画祭に数多く出品されている秀作ばかり。新人監督賞候補の顔ぶれを見ると、これから数年は韓国映画は安泰であると思えます。
新人男優賞は、例年に比べて(将来主演男優として大物になりそうな人物がいないという意味で)小粒なように感じます。新人女優賞のほうは、やはりペ・ドゥナとイ・ウンジュが頭ひとつ抜けているでしょうか。
20世紀最後の青龍賞が発表されました。
最優秀作品賞は9名の審査委員のうち7票を集めた『JSA』が受賞しました(残りの2票は『ペパーミント・キャンディー』)。『JSA』は、他にも監督賞・男優助演賞・撮影賞・韓国映画最高興行賞を受賞し、計五冠。今年の青龍賞は『JSA』のためにあったといっても過言ではない結果です。特に作品性を重視される作品賞と、その年の韓国映画で最高の興行成績をあげた作品に授与される韓国映画最高興行賞をダブル受賞しているというのは近年絶えてなかったことで(『シュリ』も『八月のクリスマス』も実現できなかった)、この映画のすごさを証明しています。『シュリ』がどちらかというとエンターテイメント性に偏っていたのに対し、『JSA』は派手さは押さえてドラマ性を強め、作品性を高めたのが、最優秀作品賞と韓国映画最高興行賞のダブル受賞につながったのでしょう。青龍賞と前後して第51回(2001)ベルリン国際映画祭コンペ部門への招待も決定。そして、2000年12月1日現在の観客動員数はソウル235万(全国約545万)で『シュリ』の持つ歴代最高興行記録(ソウル243万,全国579万)の更新も間近と、『JSA』の快進撃はとどまるところを知りません。日本公開も決まっているこの作品、日本でどのような旋風を巻き起こすのか、今から楽しみです。
『JSA』と最優秀作品賞を競った『ペパーミント・キャンディー』は、男優主演賞と脚本賞を受賞しました。この映画は1月1日に公開されており、既に1年近くが経っているという意味で、賞取りレースにおいては圧倒的に不利。それにもかかわらず重要な部門での二冠達成には、逆にこの作品の凄みを感じます。ちなみに、監督賞は『JSA』のパク・チャヌクが5票を、『ペパーミント・キャンディー』のイ・チャンドンが4票を集めるという大接戦だったことを付け加えておきます。
最優秀作品賞にノミネートされたその他の作品、『反則王』,『秘花 〜スジョンの愛〜』,『春香伝』はいずれも無冠に終わりました。しかし、『ペパーミント・キャンディー』は日本公開済み、『春香伝』と『JSA』は日本公開が予定されており、『秘花 〜スジョンの愛〜』は東京国際映画祭で(映画祭上映時のタイトルは『オー! スジョン』)、『反則王』はTOKYO FILMeX 2000で上映と、今回最優秀作品賞にノミネートされた5作品はすべて日本に紹介されているというのは、すごい話です。
男優主演賞は『ペパーミント・キャンディー』のソル・ギョング。今年上半期の映画賞では「新人男優賞」を総なめにしたソル・ギョングですが、下半期の春史映画芸術賞と青龍賞では「主演男優賞」を受賞。時間が経つにつれて彼の評価が確固たるものに高まって行った様子が伝わってきます。1997年、釜山国際映画祭では『グリーンフィッシュ』,『ナンバー・スリー』,『接続』の三作品が上映され、ハン・ソッキュがその年のありとあらゆる映画賞を総なめにしました。そして1999年、釜山国際映画祭では、『ユリョン』,『虹鱒』,『ペパーミント・キャンディー』,『鳥は閉曲線を描く』とソル・ギョング出演作が四作品上映され、翌2000年には彼が映画賞を総なめに。さて、来年の釜山国際映画祭のスターは誰なんでしょうか? 今から楽しみです。
女優主演賞は、『魚座』のイ・ミヨンと『JSA』のイ・ヨンエが4票を集め、同点決勝の結果イ・ミヨンが栄冠を手にしました。ここのところ、『女校怪談』や『我が心のオルガン』で「助演女優賞」を受賞していたイ・ミヨンですが、念願の「主演女優賞」を手にした時は目に涙を浮かべたそうです。今年は夫キム・スンウとの離婚発表など辛い出来事もありましたが、元々ノーブルな美しさと確かな演技力には定評のある女優。良いことも悪いことも肥やしにして更に映画界で活躍してもらいたいものです。
まだ日本ではなじみの薄い若手俳優について言及しておきましょう。ユ・ジテは男優主演賞は逃したものの見事人気スター賞を受賞。今年は『リメンバー・ミー』,『友引忌 −ともびき−』,『リベラ・メ』と三作品に出演する活躍振りで、ハン・ソッキュ不在の韓国映画界を多いに盛り上げました。今や韓国の若い女性の間では人気ナンバー1です。ちなみに、彼の出世作『ガソリンスタンド襲撃事件(→アタック・ザ・ガス・ステーション!)』が上映された東京国際ファンタスティック映画祭2000では、「あの白い頭の子、可愛いわね」と早速女性観客がチェックを入れていたそうです。
同じく人気スター賞を受賞した若手美人女優キム・ヒソンは、新人・助演・主演などを含めて、これが青龍賞で初めての受賞となります。今年後半はヌード写真集騒動に巻き込まれた彼女ですが、めげずにこれからも頑張ってもらいたいですね。
また、第13回(2000)東京国際映画祭で観客を笑いの渦に巻き込んだ『ほえる犬は噛まない』で主人公の女の子を演じていたペ・ドゥナが新人女優賞を受賞。彼女も若い世代で絶大な人気を誇るタレントです。これまで日本公開作の主演俳優には、30代や20代後半が目立ちましたが、ユ・ジテは24歳、キム・ヒソンは23歳、ペ・ドゥナは21歳。彼・彼女らの主演作がこれからどんどん公開されるようになれば、『八月のクリスマス』や『シュリ』をきっかけとして低年齢化した日本の韓国映画ファン層も更に低年齢化していくかも知れません。
今年も優秀な人材が集まった新人監督賞部門は、『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』のリュ・スンワンが受賞しました。この作品は12月のTOKYO FILMeX 2000で上映されますが、リュ・スンワンは注目株です。お時間のある方は是非ご覧になってください。
初版:2000/12/3
最新版:2000/12/5
Copyright © 1998-
Cinema Korea, All rights reserved.