異性への恋、同性への憧れ、女子高校生の揺れる乙女心を、切なく、哀しく、みずみずしいタッチで描いた小品。英題の「メメント・モリ(Memento Mori)」はラテン語で「死を想え/記憶しろ」という意味。
女子高校に通うソ・ミナ(キム・ミンソン)はある日、学校のグラウンドの片隅で一冊の日記帳を見つける。この日記は、陸上部のリュ・シウン(イ・ヨンジン)と合唱団のミン・ヒョシン(パク・エジン)の交換日記だった。ヘンな娘、シウンといちゃいちゃしてる、国語教師コ・ヒョンソク(ペク・チョンハク)と関係しているとの噂・・・などなどで皆からのけ者にされるヒョシン。彼女は、同性であるにもかかわらず中性的な雰囲気を持つシウンを愛するようになっていた。日記帳を読んで、二人の関係を知ってしまったミナは、恐ろしいながらも彼女らを理解するようになる。しかし、身体検査の時間にヒョシンが屋上から投身自殺し、学校は恐怖のどん底に叩き落とされる。
韓国映画アカデミー13期同期のミン・ギュドンとキム・テヨンが共同演出した。シナリオもニ人が担当。ニ人にとっての長編監督デビュー作だが、彼らは既に短編映画『17才』や『蒼白な青い点』を共同演出している。なお、韓国映画の共同演出作品は『ソウルのイエス』以来ニ作品目だが、まともに公開された作品としてはこの『少女たちの遺言』が初となる。
邦題からはうかがい知ることができないが、1998年上半期最高のヒット作『女校怪談』の第ニ弾。ただし、前作『女校怪談』の続編ではなく全く独立した話。両監督がオ・ギミン プロデューサーからオファーを受けた時は、作品に対するガイドラインは全くなく、『女高怪談』という題名に促した内容なら何でもよいと言われたという。そこで、両監督は「怪談」ではなく「女子高校」にウェイトを置き、女子高校生の悩みや葛藤・不安の原因を映画化することを決意。ニ人は、ニヶ月間の資料調査の後、ニ週間、女子高校演劇部担当講師になり、現役女子高校生からインタビューをとってシナリオを書きあげた。学校や思春期の学生の不安定さを表現するために80%を手持ちカメラで撮影。撮影監督は短編の名作『日差しを切り裂く子』の撮影を担当したキム・ユンス。音楽はチョ・ソンウ。
主役の女子高校生、ミナ、ヒョシン、シウンの三人はすべて新人を起用しているが、彼女達三人のみずみずしい演技がとにかく素晴らしい。主役の新人三人娘はこの映画の後、芸能界で引っ張りだこになった。余談だが、シウン役のイ・ヨンジンは、ファンの90%以上が女性と言われており、2001年には年上の女性ファンの一人がイ・ヨンジンに結婚を迫るというストーカー事件が発生した。また、彼女は2000年の日韓合作『純愛譜−じゅんあいふ−』でも登場人物のレズの相手役として特別出演している。
ソ・ミナを演じるキム・ミンソン(1979年8月16日生まれ)は澄んだ大きな瞳が魅力の新人女優。SBSの『順風産婦人科』,『LAアリラン』、MBCの『今日は良い日』,『愛してると言ってみたの』、KBSの『新世代報告』,『学校』、『士官と紳士』などのドラマのほか、CM、ミュージックビデオにも出演し、同徳女子大学放送演芸科ニ年に在学中(撮影当時)。高校三年生(撮影当時)のパク・エジン(1981年4月1日(陰暦)生まれ)は、パソコン通信ハイテルのフォーラムで行われた「サイバー・キャスティング」で、500:1の高倍率を潜り抜けて本作にキャスティングされた。この映画ではミン・ヒョシンを演じ、成熟したイメージと新人とは思えない演技力を披露している。リュ・シウン役のイ・ヨンジン(1981年2月24日生まれ)は、『LIES/嘘』のキム・テヨンも通っていたモデル養成スクール「モデル・ライン」の47期卒。1998年にハ・サンペクのファッション・ショーでデビュー以来、ファッションショーや、ファッション雑誌・MV・CMなどで活躍している。映画は本作が初出演となるが、シウン役そのものの中世的でエキゾチックなイメージが魅力のクール・ビューティ。
映画の冒頭、ハンディカムで教室を撮影しているジウォン役のコン・ヒョジンは、1980年4月4日生まれで、富川チュンフン高等学校三年在学中(撮影当時)。『8.15コーラ』と『ファンタ』のCMなどに出演している。『少女たちの遺言』の後は、2001年に『ガン&トークス』、『火山高』に出演。またヨナンを演じたキム・ミニは1983年生まれの高校二年生(撮影当時)。映画は『我が心のオルガン』にも出演している。
1999年のクリスマス・イブに公開されたが、女子高校生の生態が的確に描かれているのが高校生の共感を受け、ヒットした。ちなみに劇中では、交換日記が重要な役割を果たしているが、韓国公開当時、韓国の女子高校生の間では、フランスのロジェマルテン・ド・ガルの小説『灰色のノート』の影響で、交換日記が流行っていたとか。
2001年スラムダンス国際映画祭コダック・アワード撮影賞、第36回(2000)百想芸術大賞新人監督賞(キム・テヨン,ミン・ギュドン)・女子新人演技賞(イ・ヨンジン,パク・エジン,キム・ミンソン)、第20回(2000)映画評論家協会賞新人女優賞(イ・ヨンジン,パク・エジン,キム・ミンソン)受賞作品。
第1回(2000)全州国際映画祭「韓国映画長編」部門、第19回(2000)バンクーバー国際映画祭、2001年スラムダンス国際映画祭コンペ部門、第30回(2001)ロッテルダム国際映画祭、第3回(2001)ブエノスアイレス国際独立映画祭、第21回(2001)Fantasporto国際映画祭公式コンペ部門、第11回(2001)香港レズビアン&ゲイ映画祭、第24回(2001)シアトル国際映画祭、第10回(2001)東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、2000年ハンブルク映画祭コンペティション部門、2000年ストックホルム映画祭招待作品。
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭では、『メメント・モリ』という題名で上映。
初版:1999/12
最新版:2002/2/17
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