『シュリ』のカン・ジェギュ監督デビュー作であり、1996年の大ヒット作である『銀杏のベッド』の第二弾。カン・ジェギュは今回プロデュースを担当。前作の4人の主人公たちの前世にさかのぼり、古代を舞台にして運命に翻弄される男女の愛を描くファンタジー・アクション・スペクタクル。
太古の昔、天地を治める精霊「神山」のふもとに鷹(メ)族と火山(ファサン)族が住んでいた。征服欲に駆られた鷹族は火山族と戦争を始めるが、神山の逆鱗に触れ、荒涼の地へ追放されてしまう。鷹族の女族長「ス(イ・ミスク)」は復讐を誓い、神山と火山族を滅ぼすために、一族の血と骨でつくられた「天剣」を作ろうとする。しかし、天剣の完成には二つの部族の血をひく者を生贄にする必要があった。そこでスは火山族の族長「ハン(チョ・ウォニ)」を誘惑し、娘の「ピ(チェ・ジンシル)」を身ごもる。しかし、生まれたばかりのピが生贄にささげられようとしたその瞬間、ハンが現れ彼女を連れ去る。
10数年後、火山族の村で美しく成長したピは、同じ年頃の「タン(キム・ソックン)」、「ジョク(ソル・ギョング)」、そして王族の娘「ヨン(キム・ユンジン)」と親しくなる。そして、いつしか互いに愛し合うようになるタンとピ。20歳になった日、部族の後継者を選ぶための戦いに勝ったジョクはヨンと結婚し次の王となることになる。しかし、ジョクもまたピのことを心ひそかに思っていた。そんな中、天剣を作ることができる20年に一度の皆既月食が近づき、復讐に燃えるスがピを奪還せんと動き出す。四人の男女の恋の行方は? そして、神山と二つの部族に未来はあるのか?
原題の『タン・ジョク・ピ・ヨン・ス』は5人の登場人物の名前。『北京飯店』で映画デビューしたキム・ソックンが「タン」を、『虹鱒』,『ペパーミント・キャンディー』の演技で注目されたソル・ギョングが「ジョク」を、1990年代を代表するトップ・タレントのチェ・ジンシルが「ピ」を、『シュリ』でデビューしたキム・ユンジンが「ヨン」を、そしてベテラン女優イ・ミスクが鷹(メ)族の女族長「ス」を演じるという超豪華キャスト。なお、チェ・ジンシルは1億8,000万ウォンのギャラで出演したが、ヒットした場合は更に収入が増える「観客動員数によるランニング・ギャランティー」も契約した。一方『シュリ』では4,000万ウォンの固定ギャラだったキム・ユンジンは、今回8,000万ウォン+ランニング・ギャランティーで契約。
なお、当初の題名は『タン・ジョク・ピ・ヨン』だったが、イ・ミスクが「ス」にキャスティングされるにあたり、題名を『タン・ジョク・ピ・ヨン・ス』に変更。シナリオ上の「ス」の比重も大きくなったという。
冒頭で少しだけ出てくる若き日の四人の主人公が新鮮(以下、カッコ内の年齢はいずれも撮影当時)。若き日のタンを演じるユ・シヨン(21)は、『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』でデビューし、インディペンデント映画『公認自殺株式会社』,『お母さんと息子』に主演した男優。若き日のジョクを演じるチョン・ソンフン(22)はCMモデルだが、以前子役で『われらの歪んだ英雄』に出演したことがある。若き日のピを演じるチョン・ダビン(20)はこの作品にオーディションでキャスティングされ、KBSのTVドラマ『太陽がいっぱい』にも出演中。若き日のヨンを演じるト・ジヨン(18)はTVドラマ『龍の涙』や『学校』に出演している芸歴3年の俳優。
製作・企画はカン・ジェギュ。プロデューサーは『銀杏のベッド』,『シュリ』と同じくピョン・ムリム。監督は、カン・ジェギュと苦楽を共にした新人パク・チェヒョン。脚本は、第20回(1999)青龍賞でシナリオ公募大賞を受賞したキム・ソンミと監督のパク・チェヒョン。戦闘シーンでハンドヘルドを多用した撮影は『カンウォンドの恋』,『情事』のキム・ヨンチョルが担当。照明は『ハウドゥン(夏雨燈)』,『ディナーの後に』のキム・ゲジュン。美術はMBC美術センター。
カン・ジェギュは製作発表で「1997年12月から企画に着手していた。韓国的モチーフと想像力を結合させて、世界市場を狙った作品に仕上げる」と発言したが、その言葉通り、完成前の段階から日本の配給会社に購入され、2000年11月11日の韓国国内公開に先立って、東京国際映画祭で11月4日にワールド・プレミア上映された。ただし、ポスト・プロダクションが間に合わず、韓国内での試写会と東京国際映画祭での上映は「未完成版」での上映となった。
その後、同じく韓国映画の大作『リベラ・メ』と2000年11月11日に同日公開されたが、両作品の興行成績予想は公開前から韓国映画界の大きな話題となった。そして『燃ゆる月』は、それまで『JSA』が持っていた最多ロードショー館記録を抜く全国112館・ソウル56スクリーンで公開され、公開初日の土曜日一日だけでソウルで89,500人の観客を、また最初の週末2日間ではソウルで163,153人(全国351,365人)を動員する。これらの数字は『JSA』の成績に匹敵する数字で、かつ11月が映画非需要期であることを考えると、大変な成績。ただし、その後は数字が伸びず最終的にはソウルで60万人程度の動員に止まった。
純製作費は40億ウォンで、1年間のプリ・プロダクション、撮影期間9ヶ月、撮影回数105回、10億ウォンを投入して製作したセット、などの数字が示す通り韓国映画としては破格の大作(いずれも撮影当時の話)。悪天候のためのロケ延期や、主役のキム・ソックンが同時期にTVドラマ『警察特攻隊』に出演していたため、撮影が延び延びになり、当初予定されていた2000年7月の公開予定日は11月に延期された。マーケティング費は7億ウォンで、メディア・ミックス戦略も採用。韓国では公開に先立ち映画を原作とするノベライズ小説(チョ・ジェヨン著)が出版された。また、撮影に使われた慶尚南道山清郡のオープンセットは韓国初の映画テーマパークとなる予定で、2001年にはアニメ化、ゲーム化の予定もあった(が、結局テーマパーク、アニメ化、ゲーム化などは実現しなかったようだ)。
第13回(2000)東京国際映画祭で特別招待作品としてワールド・プレミア上映。第23回(2001)モスクワ国際映画祭特別部門「スクリーンという鏡に照らしてみた朝鮮半島」、第5回(2001)富川国際ファンタスティック映画祭メイド・イン・コリア部門、第34回(2001)シッチェス国際映画祭「オリエント・エクスプレス」部門、第20回(2002)ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、第18回(2002)アムステルダム・ファンタスティック国際映画祭招待作品。
第38回(2001)大鐘賞音楽賞(ファン・サンジュン)受賞作品。
初版:2000/10/20
最新版:2002/3/17
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