1993年に発表されたチェ・イノ(崔仁浩)のベストセラー小説『カカシ』(1999年に『穴』という題名で再版)を映画化した作品。30代中盤の外科医師の倒錯的な愛を描く。映画は1999年12月15日の朝に始まり翌朝までの1日を描く。題名の「穴」は「意識,記憶の穴」という意味。1980年代に一世を風靡した原作=チェ・イノ、主演男優=アン・ソンギ、監督=ペ・チャンホのトリオが擬似的に復活(キム・グッキョンはペ・チャンホの弟子)。
ある朝、30代の外科専門医「私」(アン・ソンギ)はふと目を覚ます。昨晩は酒を飲んでいたのだが、全く記憶がない。患者の状態が深刻だという連絡が入り、非番だが出勤して手術をする「私」。15:00には離婚訴訟の公判がある。面倒ではあるが、娘の養育権のためには避けて通ることができない手続きだ。車の中で、小包で届いたテープを聞くと、そこからは昔の女ソニョン(キム・ミン)の声が流れてくる。ソニョンは盲腸の手術をした患者だが、可愛いくも挑発的な不思議な女だった。そして、2人は関係を持つようになったが、彼女は1ヶ月前に突然「私」のもとを去った。テープでソニョンは「私は先生を愛したけれど、先生は私をセックス・パートナーとしか見なかった」と別れた理由を明かす。「私」はソニョンを探そうとするが、なぜか彼女に関する記憶がない。
映画の90%以上が主人公アン・ソンギの単独シーン。ナレーションが多く、特殊効果などが少ないオーソドックスなタイプの映画。商業性を廃した映画のため製作が難航したが、1998年の映画振興公社版権担保融資による3億ウォンやビデオ版権を前売りすることなどにより約6億ウォンの製作費を調達した。
主役二人のベッドシーンが話題。『情事』でデビューしたキム・ミンがこの作品で初めて主役を演じる。これがデビュー作となる1964年生まれのキム・グッキョン監督は1987年にソウル芸術専門大学映画科を卒業し、キム・ユンジン監督の『シロの島』(1988)演出部で映画界に入門。その後、ペ・チャンホの『天国の階段』などの助監督をした人物。脚本も監督のキム・グッキョンが担当。撮影を担当したソク・ヒョンジンは長い間、ユ・ヨンギル撮影監督の助手をやっていた。
第4回(1999)釜山国際映画祭「新しい波」部門、2000年インド映画祭、第4回(2000)富川国際ファンタスティック映画祭メイド・イン・コリア部門出品作品。
初版:2000/3/5
最新版:2001/1/7
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