同年大ヒットした『シュリ』と同じく南北分断を題材にしたヒューマン・ブラック・コメディ。『あきれた男たち』で監督デビューしたチャン・ジンの第2作。純粋で冷徹、強靭な精神力を持つ北朝鮮のスパイ リ・チョルジンがソウルで一週間の間に体験するハプニングを描く。
食糧難に苦しむ北朝鮮住民のために、韓国で開発されたスーパー豚遺伝子を入手しろとの特命を受けてリ・チョルジン(ユ・オソン)は韓国に派遣される。東海岸から侵入しタクシーに乗ってソウルへ行くチョルジン。彼はそこでタクシー強盗にあい、工作金や拳銃など所持品の一切合切を盗られてしまう。ソウルに到着したチョルジンは長年南に潜伏して妻子まで持っているベテラン・スパイのオ先生(パク・イヌァン)宅に身を寄せるが、彼は子供たちの学費と生活費に汲々としており、スパイとしての使命感は忘れてしまったようだ。チョルジンに好意的なのはオ先生の娘ファイ(パク・チニ)だけ。彼は無事任務を遂行することができるのだろうか?
一昔前の韓国では「不審な人物を見たら申告する」のが当たり前だったが、その「スパイは怖くて危険」という固定観念を覆す内容。ドタバタ喜劇というより、ちょっとホロリとする良質のコメディ。
初めて主役を預かるユ・オソンは、この作品に出演している俳優ミョン・ギョンスと映画封切り後に結婚。なおミョン・ギョンスは1998年に同じくチャン・ジン監督が演出した演劇『マジック・タイム』にも出演している。韓国在住のスパイの娘で、リ・チョルジンに好意をよせる優しい女子大生ファイを演じるのは、『女校怪談』で注目を浴びたパク・チニ。彼女は『恋風恋歌』にも出演しているが主役はこの作品が初めて。ファイの弟ウヨルを演じるのは、後に『JSA』でブレイクするシン・ハギュン。リ・チョルジンをスパイと知らずに強盗をはたらく向こう見ずな四人組みの強盗を演じた演劇俳優イ・ムンシク、チョン・ギュス、チョン・ジヒョン、イム・ウォニの爆笑演技にも注目。
この映画でデビューする演劇出身俳優の多くはチャン・ジン監督によって発掘された。後に『リメンバー・ミー』で監督デビューするキム・ジョングォンが助監督を担当している。
第23回(2000)黄金撮影賞銅賞(イ・ソッキョン)、第36回(2000)百想芸術大賞作品賞・シナリオ賞(チャン・ジン)受賞、第3回(1999)富川国際ファンタスティック映画祭「ファンタスティック韓国映画特別展」部門、第5回みちのく国際ミステリー映画祭2001 in 盛岡出品作品。
初版:1999/5
最新版:2001/9/8
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