プライベートレッスン 青い体験
題名 英題 原題 ハングル |
プライベートレッスン 青い体験 Plum Blossom Spring Time 青春 청춘 |
製作年 |
2000 |
時間 |
111(韓国公開版) 105(日本公開版) |
製作 提供 共同提供 配給 |
ウォン・フィルム アイ・ピクチャーズ 無限技術投資 コウェル創業投資 Intz.com シネマ・サービス |
監督 |
クァク・チギュン |
出演 |
チン・ヒギョン キム・ジョンヒョン ペ・ドゥナ キム・レウォン ユン・ジヘ キム・ジュリョン コ・ドゥシム(特別出演) |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video DVD |
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男性の多くが初体験を済ませる、高校生から大学生にかけての二年間を背景とした、二人の男性の成長物語。若者の性や恋、悩みを描いた、哀しき純文学的メロドラマが、韓国の田舎町を背景に叙情的で美しい映像で綴られる。
都会から田舎の河東に転校してきた高校三年生のチャヒョ(キム・レウォン)は、同級生のハラ(ユン・ジヘ)に誘われるままにセックスをし、初体験を済ませる。しかし、自分に付きまとうハラを負担に感じたチャヒョは、彼女を避けるようになり、彼に見捨てられたと思ったハラは自殺してしまう。一方、チャヒョの親友スイン(キム・ジョンヒョン)は新任の国語の先生チョンヘ(チン・ヒギョン)に恋をする。しかし、チョンヘは教え子である彼を受け入れてくれず、スインは失恋してしまう。恋が無残な形で散ってしまったチャヒョとスイン。二人は慶州の大学に進学することになるが、慶州へ向う車中でこんな会話をする。「俺達の問題は、セックスの問題なのかなぁ(スイン)」 「解答を得るためには、とにかくこまめにセックスする以外ないな(チャヒョ)」。そして、その言葉どおり、手当たり次第に女性と寝たチャヒョは、性病にかかってしまう。しかし、そのおかげで出会った看護婦のナモク(ペ・ドゥナ)は、虚無的なセックスを繰り返すチャヒョを一途な愛で癒してくれるのだった。一方、スインはチョンヘを忘れるために大学の先輩ユニョン(キム・ジュリョン)と愛のないセックスをするのだが、やはりどうしてもチョンヘのことを忘れることが出来なかった。
四人の若手俳優の演技が好評。その中でも、ペ・ドゥナ、ユン・ジヘなど、名前の通った若手女優がベッド・シーンに果敢に挑戦したことが大きな話題となった。ただし、ペ・ドゥナのベッド・シーンのいくつかは代役だったとか。
女教師チョンヘは、『モーテルカクタス』、『ディナーの後に』のチン・ヒギョンが、チャヒョを癒してくれる看護婦ナモクは『ほえる犬は噛まない』のペ・ドゥナが演じる。
『女校怪談』でガリ勉の女の子を演じていたユン・ジヘ(1978年4月1日ソウル生まれ、ソウル芸術大学演劇科卒)が、キム・レウォンの初体験の相手の女子高生ハラを演じているが、彼女は大胆にもこの映画でオール・ヌードを披露。ビニールハウスでのセックス・シーンは、韓国でのレイティング審査で露出度の高さが指摘され、製作社サイドが一部自主削除する一幕もあった。ちなみにユン・ジヘは、『プライベートレッスン 青い体験』と同時期に韓国公開された『魚座』にも出演している。
セックスに耽溺し心の扉を開く事が出来ないチャヒョを演じるのは、『学校2』、『順風産婦人科』など数多くのテレビ・ドラマで10代の女の子達の人気を博したキム・レウォン(1981年3月19日生まれ、中央大学演劇科在学中)。彼は、中学生のときに偶然、学生服のCMとカタログの撮影をしたのがきっかけで芸能界入りした若手男優。映画は、『男の香り』でのキム・スンウの子供時代役でデビューし、『プライベートレッスン 青い体験』と同年に韓国公開された『ハーピー』にも出演している。
国語の先生を片思いするスインを演じるキム・ジョンヒョンは、1976年6月28日生まれでソウル芸術大学放送演芸科に在学中。1995年にメガ・ヒットした国民的テレビ・ドラマ『砂時計』に出演して注目を浴びたほか、『ハリウッド・キッドの生涯』(1994)、『俺の所へ来い』(1996)、『彼は私にチータを知っているかときいた』(1997)、『Interview』(2000)など、数多くの映画に出演している。
日本でもビデオが発売されている『冬の旅人』(1986)でデビューしたクァク・チギュン監督が、『深い悲しみ』(1997)以来三年ぶりにメガホンを取り、脚本も担当。撮影監督は、キム・ユンテ監督の短編『ダウジング』(1996)、イ・ジサン監督のインディペンデント映画『彼女の話』(2000)の撮影を担当したハム・スノ。彼は、ロシア国立映画大学で学び、ソウル芸術専門大学映画科で教授をつとめていた人物。照明はヨム・ヒョサン。編集はキム・ヒョン。音楽はキム・ソンジュンとソン・シヒョン。
劇中の冒頭でチン・ヒギョン演じる先生が「好きな詩」として生徒たちに紹介したのは、ソ・ジョンジュ(2000年12月24日に他界)の詩『降りしきる雪の中では』。この詩のフレーズ、中でも「大丈夫、大丈夫(ケンチャンタ、ケンチャンタ)」は本作で何度となく引用されており、極めて重要な役割を果たしている。ちなみに『降りしきる雪の中では』は、『エンジェル・スノー』でも使用されている。
ウォン・フィルム創立作品。製作はイ・ウォンギ。製作支援はチャ・スンジェとチェ・ジェウォン。
第5回(2001)スケルミ・ダモレ映画祭コンペ部門、2001年シンガポール国際映画祭出品、第21回(2000)青龍賞新人男優賞(キム・レウォン)受賞作品。
初版:2000
最新版:2002/3/31
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投稿者:SUMさん 投稿日:2001/3/19 00:11:10
若者の性を描いた作品としては、『イエローヘア』や『LIES/嘘』より私はこっちを買う。
「性」って、経験や受け止め方に個人差がもともと多いためか、まともに扱えば、たいてい好き嫌いが別れるものだが、韓国メロドラマの中でもナル度の高いこの監督の手によるこの作品、日本人で素直に感情移入する人はそう多くはないだろう。
この監督は『冬の旅人』にしろ『深い悲しみ』にしろ、今の韓国の興行を引っ張っている作品と比べれば、もちろん古い感じは否めない。この『プライベートレッスン 青い体験』は、彼の今までに見た作品の中では、一番今っぽいセンスで撮っていた。しかし、『情事』、『寵愛』のような「映像美」を目指さず、あくまで、性のテーマを描く気だったのだろう。その結果は、偶然か、汚すぎず綺麗すぎずで、若者が経験した「性」等身大になっていた。
登場人物の描き方から、やはり男の作品だと思うところもある。登場人物の心の動きに、ついていけないところもある。それでも、いや案外、性って高校男子生徒の心情ってこんなものではないのか?
村上龍のように問題意識をぶつけてくるわけではないし、エロスにするためにカッコつけすぎているわけでもないが、このくらいの作品にも相応の価値はある。
【評価:★★★】
【鑑賞ノオト】 Text by 月原万貴子(月子) 2002/6/4
『プライベートレッスン』と聞いてシルビア・クリステルを、『青い体験』と聞いてラウラ・アントネリを思い出す世代の皆様、こんにちは(笑)。
この二作品の邦題をいただいてしまった本作は、実は原題である『青春』が一番しっくりと来る正統派の青春映画なのでありました。
大学進学の内申点獲得のために、都会から地方へと転校してきたチャヒョと、金持ち旧家の息子スインの友情を核に、思春期の男の子の生態を描き出した青春グラフィティー・・・と言ってしまえば簡単なのだが、それだけではすまないのが本作なのだ。
早熟な同級生に誘われるまま初体験を済ませるものの、恋愛関係を望む彼女をうざったく思い、冷たくした挙句、当てつけ自殺をされてしまうチャヒョ。新任の女教師にひとめぼれし告白するものの、立場の違いを理由に受け入れてもらえないスイン。若くして恋愛に絶望したふたりの少年が、一方は遊びまくることで、一方は操を守り抜くことで、各々の恋愛観を示すが、それは共に破綻しているのであった・・・
それにしても、スインは本当に先生を愛していたのだろうか? 私にはそうは思えなかった。確かに先生に「恋」はしていただろう。だけど「愛」していたのはチャヒョだったのではないだろうか?
地方の名家(多分昔で言えば両班)の息子であるスインにとって、同性愛は許しがたい感情だったのだろう。だから、彼は「世間的には許しがたいけど自分としては納得できる」教師との恋愛という道を選んだのではないだろうか? そして彼女に拒否されることでバランスを保っていたのだろう。
だからスインはチョンヘ先生が自分を受け入れてくれたことで、感情の行き場を失ってしまう。そしてチャヒョとの思い出の場所で死ぬことを選ぶのだ。
こんな映画を「いわゆるコリアンエロス」だとして売り出す宣伝方法には疑問を感じた。お願いだから、ちゃんと見ようよ。
【評価:★★★】
投稿者:はんのき さん 投稿日:2003/6/24
この映画は一見、思春期の男女の恋愛・性愛を描いた作品に見えるが、実はスインのチャヒョへの愛の物語、つまり同性愛が隠れ主題として描かれていると思います。
韓国映画では同性愛を扱った映画をあまり見ることはなく、それが儒教の影響だとしても、同じ儒教圏である中国よりも少ない気がします。この映画においては、異性愛の大胆な性描写というセンセーショナルを隠れ蓑にして、さりげなく、しかししっかりと同性愛を折り込んでいるのではないでしょうか? そう考えなければ描写の辻褄が合わない場面が多々見られます。
残念ながらストーリーはさほど目新しいものではありませんが、その意味でこの作品は韓国映画の新しさを証明する作品といえるかもしれません。見所は、若く健康的なキム・レウォンの裸体。監督は女優陣よりも彼を丹念に映してくれます。
【評価:★★★★】
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