様々な衝動を抑えながら生きていく人々の中に秘められた「もう一人の自分」を描く作品。撮影時間200分で上映時間84分、韓国映画史上最短撮影時間35mm長編映画、35mmカメラ8台と6mmデジタル・カメラ10台を使用、8つの撮影チームと2つのステディカム・チームによる撮影、11人のシークエンス監督を採用、など実験的な撮影方式が話題となった。
「僕」(チュ・ジンモ)は、大学路のマロニエ公園で肖像画を描く街頭画家。彼は日々、彼の絵に文句を付ける客、ショバ代を要求するやくざ等と接しているが、怒りの感情は押え込んで生きている。そんなある日、「僕」はデジタル・カメラを持った神秘的な少女(キム・ジナ)が自分を撮影しているのに気付く。そして、彼女の誘惑にのって彼女の後を追った「僕」は、もう一人の自分(ソン・ミンソク)との出会いを通じて、心の奥底に隠れていた暴力性を呼び覚まし、自分を馬鹿にした人々に残酷な復讐を始める。しかし、マロニエ公園に戻ってきた「僕」は何事もなかったように絵の準備を始めるのだった。
製作はイ・ジョンスとシン・スンス。脚本は監督のキム・ギドクだが、彼は海兵隊員時代の先輩が100分間に渡るバス脱走劇を繰り広げたことにヒントを得てシナリオを執筆した。15のシークエンスで構成されているため、短編映画をリレー形式で見ているような感覚がある。またキム・ギドクがこれまで自分の映画の重要なコードとして使用してきた「水」に関連する要素がこの作品には全くないのも特徴。当初は、ノーカット・ノー編集で休むことなく、つまり監督が一言も「カット!」と叫ぶことなく一気に撮影し、100分間で撮影したフィルムをそのまま100分の作品として映画化する予定だったが、2000年4月25日に実際に行われた撮影では200分かかったため編集作業を行った。
少女役のキム・ジナはダンスグループ「チャチャ」のミュージックビデオに出演したことがあるだけの新人だが、この映画の撮影後、パク・チョルス監督の『ポンジャ』に出演している。乞食のボスを演じるイ・ジェラクは『灼熱の屋上』、『愛と悲しみのマリア』などに出演していた男優。「もう一人の僕」を演じるソン・ミンソクは『豚が井戸に落ちた日』、『ナンバー・スリー』、『悪い女 青い門』、『魚と寝る女』などに出演している個性派男優。『イエローヘア』のキム・ギヨンが過去の恋人で、『バリケード』、『スプリング・イン・ホームタウン』のミョン・スンミが現在の恋人役で出演。また、演劇『私に嘘をついてみて』のクォン・ナミも出演してる。
映画ポスター用に主演男優のチュ・ジンモがヌード写真を撮影。
第23回(2001)モスクワ国際映画祭コンペ部門招待、第4回(2000)富川国際ファンタスティック映画祭メイド・イン・コリア部門、第5回(2000)釜山国際映画祭韓国映画パノラマ部門、第34回(2001)シッチェス国際映画祭「オリエント・エクスプレス」部門、第20回(2002)ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭招待作品。
初版:2000/6/26
最新版:2001/9/19
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