四人の若者がガソリンスタンドを襲撃した一晩を描いた痛快娯楽ブラック・コメディ。主役・脇役あわせて総勢32名のキャラクター、そして主役4人の独特なヘア・スタイルが面白い。韓国では封切り直前に実際に暴走族がガソリンスタンドを襲撃する事件が発生。また封切り後にも同様な事件が起き、犯人は「映画を見て、格好よかったからまねてみた」と発言するなど社会的にも話題を振りまいた。
高校時代、監督の指導法に反抗して野球をやめた元選手の「ノーマーク」(イ・ソンジェ)、それなしでは生きられない程音楽を愛しているのにまるで売れないロッカーの「タンタラ」(カン・ソンジン)、勉強を押し付ける厳格な父親に反抗して画家を志望する「ペイント」(ユ・ジテ)、学生時代に頭が悪いと皆から馬鹿にされ教師からは体罰の対象だった「無鉄砲」(ユ・オソン)の4人は、ある日「ただなんとなく」ガソリンスタンドを襲撃する。実は二度目の襲撃だったが、暴れるだけ暴れてお金もせしめた前回とは違い、今回はレジにつり銭しかない! 腹を立てた4人は、守銭奴のガソリンスタンド社長(パク・ヨンギュ)、アルバイトの高校生「乾パン」(チョン・ジュン)、「頑固者」(イ・ジョンホ)、カルチ(イ・ヨウォン)の4人を監禁する。ところが、そんなこととは露知らぬ客が次から次へと来店。一晩の喧騒が始まる。
「何だかつまらない。何か面白いことはないか?」と時代に閉塞感を感じている現代の若者達の気持ちを代弁するかのような内容、そして上下関係が厳しい韓国において、次から次へと起こる下克上的立場の逆転が大受け。韓国では1999年秋に公開され、コメディ映画の歴代興行記録を持っていた『トゥー・カップス』の観客動員数を抜く大ヒットとなった。
主役は四人の若者。『美術館の隣の動物園』,『愛のゴースト』のイ・ソンジェが演技変身。「ノーマーク」という寡黙な男を演じる。『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』のユ・オソンはイカツイ顔を活かした配役で、キム・サンジン監督の『極道修行 決着(おとしまえ)』に出演していたカン・ソンジンが粗雑なロッカー「タンタラ」を、『バイ・ジュン 〜さらば愛しき人〜』で映画デビューし、「チャムベンイ」などのCMにも出演しているユ・ジテが寡黙な芸術家志望青年「ペイント」を演じている。特に、ユ・ジテはこの作品がきっかけとなって大ブレイク。2000年には、ハン・ソッキュ主演作がない中、三作品に出演し人気ナンバー1男優となった。
脇役人も個性豊か。惜しくも受賞は逃したが、この作品の演技により第20回(1999)青龍賞と第37回(2000)大鐘賞で助演男優賞にノミネートされたパク・ヨンギュ(1953年生まれ)は、旧世代を代表するキャラクターとも言えるガソリンスタンドの社長を怪演。歌手でもある彼は、この作品がきっかけでガソリンスタンドのCMでこの映画のイメージそのままの店長役を演じることになった。日本公開作では『ソウルの虹』にも出演している。なぶられ役の「乾パン」を演じるチョン・ジュンは、『チェンジ』,『北京飯店』などに出演している若手男優。この作品の後も2000年に『友引忌 −ともびき−』,『なせば成る』,『リベラ・メ』に出演するなど活躍している。ガソリンスタンドのアルバイト女性「カルチ」を演じるイ・ヨウォンは1997年にCMと雑誌のモデルとしてデビューし、ドラマ『勝負師』,『憎くても、愛しくても』,『行進』などに出演している。映画は既に『男の香り』でミョン・セビンの子供時代を演じているが、本格的なスクリーン・デビュー作はこの『アタック・ザ・ガス・ステーション!』。ダンスグループ「ノイズ」のメンバーだったキム・ハッキュもこの映画でスクリーン・デビュー。また、チャ・スンウォンが暴走族のちょい役で出演している(彼の出演シーンは、映画本編ではカットされてしまったが、韓国版ビデオでは収録されているとか)。
製作社の「良い映画」はキム・サンジン監督とシネマサービス理事だったキム・ミヒ(この映画の製作者)が共同設立した会社で、この作品が創立作品となる。『チェンジ』の助監督で『ファースト・キス』の脚本を書いたパク・チョンウがシナリオを担当。国内初のストップモーション・アニメを導入した予告編が話題に。キム・ワンソン、チャン・ヘジン等のレコード・プロデューサーで、『サランヘヨ あなたに逢いたくて』,『極道修行 決着(おとしまえ)』の音楽も担当したソン・ムヒョンがご機嫌なロック風映画音楽を作曲。キャラクター別にテーマ曲を作ったのも話題になった。サントラは日本では Red Pepper から発売されている。
第37回(2000)大鐘賞企画賞(イ・グァンス)、第20回(1999)青龍賞新人男優賞(イ・ソンジェ)、第23回(2000)黄金撮影賞銀賞(チェ・ジョンウ)、第36回(2000)百想芸術大賞人気賞(イ・ソンジェ)、第1回(2000)釜山映画評論家協会賞助演男優賞(ユ・オソン)受賞。
東京国際ファンタスティック映画祭2000、イタリアの第14回(2000)Far East映画祭、2000年香港国際映画祭、第5回(2000)モントリオール・ファンタジア国際映画祭コメディ・セクション、第9回(2000)豪州ブリスベン映画祭、第19回(2000)バンクーバー国際映画祭、第44回(2000)ロンドン国際映画祭、ベルリンベータ3.0ヴァージョンフェスティバル、第3回(2001)ブエノスアイレス国際独立映画祭招待作品。第5回(2000)モントリオール・ファンタジア国際映画祭コメディ・セクションで最優秀観客賞を受賞。
初版:1999/10
最新版:2001/10/6
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