「夢見るおとなのための都市寓話」を標榜した作品で、刑事と泥棒が主役のブラック・コメディ。今までの映画とは違った笑いが観客・専門家ともに好評。1998年版『馬鹿たちの行進』とも評される。いわゆるスター映画ではなく、多彩なキャラクターとよく構成されたシナリオが売り。
国会議員連続殺人事件が発生している都市を背景に、失敗ばかりしているこそ泥のドッペ(チェ・ジョンウォン)とタルス(ヤン・テッチョ)、自殺中毒者チュラク(シン・ハギュン)、行くところ行くところで殺人事件が発生し容疑者として捕まる不幸なチェス(ソン・ヒョンジュ)の四名が警察に捕まる。事件とは無関係な彼らと、なんとか国会議員殺人事件犯を捕まえようとするエリート刑事(イ・ギョンヨン)らの「あきれた話」。
『灼熱の屋上』を製作した淳フィルムがヒョンジン映画社と社名を変えて製作。これが初監督作品となるチャン・ジンは、『灼熱の屋上』,『君はジャズを信じるか?』のシナリオを担当、TV番組や演劇も手がけるなど多彩な才能を持つ。なお、監督のマネジメントをしているチョン・ミョングン氏は世界的な音楽家チョン・ミョンフンの実兄。その縁でチョン・ミョンフンがこの映画のミュージカル場面をはじめ音楽監修を担当。照明監督はイ・ガンサン。後に『リメンバー・ミー』で監督デビューするキム・ジョングォンが助監督を担当している。
主役のヤン・テッチョとチェ・ジョンウォンは脇役専門の中堅俳優だが、これが初主演映画となる。また、後に『JSA』でブレイクするシン・ハギュンがこの映画でデビューしている。
一般公開時の興行成績は振るわなかったが、「面白い」との噂がパソコン通信などで広がり、封切り終了後に上映された釜山国際映画祭ではものすごいチケットの売り上げ。またビデオの注文も異例の多さ。多くの大学の演劇映画学科がこの映画を教材としてレポート提出させるなど作品性が認められたことも幸いした。
第3回(1998)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門出品作品。
日本語字幕付きのDVD&Videoは発売されていないが、ムックの『韓国ドラマスターLIVE』(竹書房、2005年)に日本語字幕付きで本作を完全収録したDVDが付いている。
初版:1998/10/20
最新版:2001/3/18
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