息づかい
題名 英題 ハングル |
息づかい My Own Breathing 숨결 |
製作年 |
1999 |
時間 |
77 |
製作 |
Docu-Factory VISTA (記録映画製作所ポイム) |
監督 |
ビョン・ヨンジュ |
出演 |
イ・ヨンス キム・ユンシム キム・ブンソン ソ・ボンイム シム・ダリョン カン・ミョラン ほか、ハルモニ達 |
日本版 Video DVD |
なし |
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元従軍慰安婦のハルモニ(おばあさん)達を描いたドキュメンタリー映画『ナヌムの家』、『ナヌムの家2』に続くシリーズ第3弾。今回の作品でこのシリーズは完結する。主役(?)をつとめるのは、国際弁護士になって日本政府を法廷に立たせるのが夢で慶北大学名誉学生となったイ・ヨンスさんと、チョン・テイル文学賞生活手記部門で受賞したキム・ユンシムさん。
『ナヌムの家2』のカン・ドッキョンさんの葬式で「アイゴー」と泣いていたイ・ヨンス ハルモニが今回はインタビュアーをつとめ、ハルモニがハルモニにインタビューするのをビョン・ヨンジュ監督がカメラにおさめるという新しい形式で前半を構成している。そして後半は、ハルモニ達の過去と若者達が生きている現在がどのように繋がっているのかを問う内容になっている。前2作では「ナヌムの家」という共同体を中心に描いたが、今回は「ナヌムの家」を出て、釜山や大邱など韓国各地で、隣人や家族と一緒に暮らす他のハルモニ達から、現在そして過去の証言を聞いているのが特徴。
映画に出演しているキム・ユンシムさんの手記『恥ずかしいのは、私達ではなくて、お前達だ』(第8回(1998)チョン・テイル文学賞受賞作)は、『海南の空へ 戦場からソウル、そして未来への日記』という題名で日本でも翻訳出版された。
効果・整音=松竹サウンドスタジオ、オプチカル・ブローアップ=ソニーPCL、製作協力=パンドラと日本側も製作に協力している。
第4回(1999)釜山国際映画祭ワイドアングル部門でワールド・プレミア上映され、最優秀韓国ドキュメンタリー賞であるウンパ賞を受賞した。また、同時期に開催されていた第6回(1999)山形国際ドキュメンタリー映画祭ではワールド・スペシャル部門のクロージング作品として上映された。他にもスイスの第14回(2000)フライブルグ映画祭,2000年香港国際映画祭,シンガポール映画祭などに公式招待されている。1999年韓国民族芸術人総連合選定「今年の民族芸術賞」受賞。
韓国ではソウルのアート・ソンジェ・センターとシネマテーク釜山で2000年3月18日に封切り。日本では、2000年4月1日よりBOX東中野ほかで公開。
初版:1999
最新版:2000/3/15
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【ソチョンの鑑賞ノート】
シリーズ第一作の『ナヌムの家』は、知られざる事実を世に知らせる、知らせなくては!という使命感が全面に出ていて、それはそれで良いのですが、見ていてただただ圧倒されるばかりでした。見ていて「疲れた」と言い換えてもいいかもしれません。
第二作の『ナヌムの家』は、いきなり画面にビョン監督が出てきたのに驚き(実は第一作でもちょこちょこ写っている)、撮影者が被写体に介入するタイプのドキュメンタリーが嫌いな私は一気に引いてしまいました。
そして、第三作目の『息づかい』ですが・・・
素晴らしい!
実のところ、前二作はあまり好きではないのですが、この『息づかい』を撮るために必要な準備だったと思えば、その存在価値は十二分にあります。
『息づかい』は、事実を伝えるだけのドキュメンタリーではなくて、人間のドラマが文字どおり「息づいて」います。映画が呼吸をしている。映画の中で人間が成長していく。映画の中のハルモニ(おばあさん)達は、優しく、気高く、人間としての尊厳を持ち、みな尊敬に値する人物ばかり。前二作では、ハルモニ達に同情するだけでしたが、『息づかい』では彼女たちに共感をすることが出来ました。
元従軍慰安婦のハルモニを撮ったドキュメンタリー。テーマ的に敬遠する人もいるかもしれないし、ドキュメンタリーは見ないという方針の人もいるかも知れませんが、食わず嫌いで見逃すにはあまりに惜しい作品です。
前二作では使命感に燃えてがむしゃらに突っ走っている感のあったビョン監督ですが、彼女は『息づかい』で、ドキュメンタリストとして自分なりの方法論を確立したのではないかと思います。
2000年6月4日執筆
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