心理ミステリー&エロチック・スリラー。双子の姉の自殺の謎を探るヒロインが、やがて自らの隠された秘密を知ることになる。原題の「バニシング・ツイン」は、双子のうちの一人が妊娠10週から15週目の間に子宮内で消えてしまう現象を表す医学用語。
有能な弁護士の夫と6歳の娘ミンジ(チェ・ジウン)を持つ主婦のユジン(チ・スウォン)は、自分自身もキュレーターとして活躍するキャリアウーマン。そんな彼女の双子の姉スンジンがアメリカから帰国するという知らせが届き、ユジンは嬉しくも漠然とした不安を感じる。二人の間にはある秘密があったのだ。しかし、アメリカから一人で帰国した義兄ジノ(キム・ミョンス)は、スンジンが自殺したと告げる。動揺するユジン。そんな彼女にジノが接近し、夫は二人の関係を疑うようになる。姉の死に疑惑を感じていたユジンは、パソコン通信を通じて偶然「アートラバー」というIDの男(ク・ピル)と出会うが、なぜか彼は姉の過去を色々知っている。そして、ユジンは彼とのセックスを通じてある記憶を蘇らせ、真実を知ることになる。
『トゥー・カップス』(1993)、『愛するのにいい日』(1995)、『ピアノのある冬』(1995)、『ヘア・ドレッサー』(1995)、『トゥー・カップス2』(1996)のチ・スウォン(1969年12月9日生まれ、キョンウォン大学衣装学科卒)が、四年ぶりにスクリーン・カムバック(1998年に出演した『クワイエット・ファミリー』のちょい役は除く)。偶然出会ったアートラバーという男と情熱的な情事に陥るユジンを演じ、オールヌードも披露。ちなみに、彼女はシナリオを受け取った当初は、セックスシーンの多さを負担に感じたが、「バニシング・ツイン」という医学的な要素に基ずくユジンの設定の面白さにひかれ、出演を決意したという。ストーリーの鍵を握る謎の人物アートラバーを演じたク・ピル(清州大学演劇映画科卒)は、モデル出身の男優。
西江大学経営学科を卒業したユン・テヨンの監督デビュー作。彼は、パク・チャヌクが西江大学で作った映画サークル「西江映画共同体」の会員として活躍した後、『びりから一等まで僕たちのクラスを訪ねます』(1990)、イム・グォンテクの『開闢』(1991)、『将軍の息子2』、パク・チャヌクの『月は... 太陽が見る夢』で助監督を担当している。
脚本はソン・ドスと監督のユン・テヨン。製作はヨ・ハング。Y2シネマは低予算のエロス系作品を製作している会社で、本作は『イエローヘア』、『サミャン洞精肉店』に続く第三弾。編集はパク・コッチ。音楽は、『情事』と『美術館の隣の動物園』のサントラ製作に参加したジャズ・ミュージシャン、チョン・ソンシク。
純製作費5億ウォン。試写会の時に上映されたプリントを再編集し、15分あまり短くしたバージョンで劇場公開。
《この段落、ネタバレ》
バニシング・ツイン現象の後、生まれた子供の中に、消えてしまったもう一人が無意識のうちに存在しているという設定、そして姉のスンジンは、自らのセックス体験を隠そうとするユジンの無意識が作り出した架空の人物というアイディアは極めて面白かったが、演出も俳優の演技もダメダメで、単なるコリアン・エロスになってしまった。
興行的にもソウルで一万名の観客を動員することすら出来ず大惨敗。その損失を取り戻すために、プロデューサーは劇場公開版(94分)から10分以上削除したうえ、エロティックなシーンを3分ほど追加してビデオ(85分)をリリースした。プロデューサーのヨ・ハング曰く「監督がシナリオどおりエロティックなシーンを撮らなかったため」とのことだが、監督の許諾を得ていなかったため、「著作人格権が犯された」と問題視された。
初版:2000
最新版:2002/2/24
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