ビデオショップを経営する女性の、美しいまでに悲しい恋の物語。恋人のいる男性を愛してしまったヒロインが、自分の恋心を抑えることができず、悲劇の泥沼にはまっていく。
"Sad Movie"というビデオショップを経営しているエリョン(イ・ミヨン)は、心の片隅に寂しさを感じている女性。彼女の唯一の友は、フランス映画と熱帯魚だ。そんな彼女の前に、客としてドンソク(チェ・ウジェ)が現れる。エリョンと同じくフランス映画が好きな彼は、作曲もしている無名の歌手。様々な話をするにつれ、彼に惹かれていったエリョンは、自分の誕生日にペア時計を買って、彼にプレゼントする。そしてドンソクは彼女のために歌を歌ってくれた・・・ 「彼も私を愛してくれている」と確信したエリョンは、ついに告白をする。しかし、彼には既に結婚を約束した女性ヒス(ユン・ジヘ)がおり、彼の返事は「友達以上にはなれない」というものだった。しかし、エリョンは既に後戻りできなくなっていた。彼を愛するあまり、ストーカーまがいの行為まで始めるエリョン。そんな彼女に対して、ドンソクの態度は徐々に冷たくなっていく。
ヒロインの名前はエリョンだが、「哀憐」、「哀恋」、「愛憐」、「愛恋」、以上四つの漢字語の韓国語読みは全て「エリョン」。故意か偶然かは不明だが、映画の内容を象徴するような名前が主人公につけられているわけだ。
イ・ミヨンは、この作品の演技で念願の青龍賞女優主演賞を受賞した。チェ・ウジェ(26)は、ソウル芸術大学映画科を休学中で身長187cmの新人。劇中では無名歌手という配役だが、チェ・ウジェ自身、歌のレベルはかなりのものとか。『女校怪談』、『プライベートレッスン 青い体験』のユン・ジヘがチェ・ウジェの恋人役を演じている。キム・ミンジョンほか、『反則王』のキム・ガヨン、『友引忌 −ともびき−』のチェ・ジョンユンがカメオ出演しているのも面白い。
メロ・ドラマとしては最高額となる2億ウォンものセット費を投入し、狎鴎亭洞の空き地に、舞台となるビデオショップ、アイスクリーム屋などが入った二階建てのビルを建てて撮影。美しいセットや、エリョンの性格描写の丹念さ、そして彼女の感情の変化にしたがって周辺の小道具の色彩が変わっていくといった繊細な演出が目をひく。
説明的な描写を廃し、叙情的なイメージを優先させた演出をした監督のキム・ヒョンテは、1966年生まれのソウル芸術専門大学演劇科卒。1988年に短編『我らの物語』を発表した後、脚本も担当した本作で監督デビューした。撮影は『魚と寝る女』のファン・ソシク。音楽はパク・ヨンジンとシン・ビョンチョル。編集はパク・コッチ。セット美術はオ・サンマン。
第16回(2001)マル・デル・プラタ国際映画祭コンペ部門、第22回(2002)Fantasporto国際映画祭新人監督週間部門招待作品。
第21回(2000)青龍賞女優主演賞(イ・ミヨン)受賞作品。
初版:2000
最新版:2002/2/25
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