その並々ならぬ演技力で、作品毎に、いや同じ作品内でも顔がころころと変化するカメレオンのような俳優。特に、彼の出世作『ペパーミント・キャンディー』を見た日本人女性からは「永瀬正敏に似ている、いや大杉漣だ、明石家さんまっぽいところも、いやいややっぱり田中星児でしょう(笑)」と様々な声があがっているが、最有力激似俳優は内野聖陽という説が有力。好きな俳優は、アン・ソンギ、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープら。
大学卒業後、1993年から演劇の舞台で活躍。1996年に『つぼみ』で映画デビューし、主役の少女を探す四人組の一人を演じる。1998年の『ディナーの後に』ではチン・ヒギョンの浮気相手の漫画家を、1999年の『ユリョン』ではミサイル発射管制室の軍人432を演じた。
1999年の『虹鱒』ではカン・スヨンの夫である銀行員を演じた。なお、『虹鱒』封切り直前に開催された第4回(1999)釜山国際映画祭では、『ユリョン』、『虹鱒』の他、映画祭オープニング作品である『ペパーミント・キャンディー』と、同映画祭でNETPAC賞を受賞し、第56回(1999)ヴェネチア映画祭新しい分野部門にも招待されたアート・ムーヴィー『鳥は閉曲線を描く』など彼の出演・主演作が四作も上映されて話題となった。
イ・チャンドンに見初められて主役を射止めた『ペパーミント・キャンディー』では、1979年から1999年に至る韓国現代史を体現する男性ヨンホを演じた。この作品は、ヨンホの記憶を現在から過去へ溯って描いており、撮影も同じく現在から過去の順番で行われたのだが、時代によって変わるヨンホの姿・性格を見事に演じ分けており、時代によってヨンホの顔が違って見える程の大熱演を見せた。そして、この作品の演技で第35回(2000)Karlovy Vary国際映画祭最優秀男優賞、第23回(2000)黄金撮影賞新人男優賞、第36回(2000)百想芸術大賞男子新人演技賞、第37回(2000)大鐘賞新人男優賞、第20回(2000)映画評論家協会賞新人男優賞、第8回(2000)春史映画芸術賞主演男優賞、第21回(2000)青龍賞男優主演賞を受賞。一躍スターダムにのし上がるとともに、「1999年、韓国映画界の最高の収穫」という最大級の賛辞を受けた。
カン・ジェギュ プロデュース作品として話題となった『燃ゆる月』では、愛のために自らの運命を否定し部族や友情までも捨て去ってしまう男「ジョク」を大熱演した。
2001年に公開された『私にも妻がいたらいいのに』では、「結婚願望を持ちながらなかなか結婚できない銀行員」というコミカルな役柄に初めて挑戦。「そんな事だから結婚できないんだよ!」と観客に納得させる説得力ある演技を披露した。なお、この映画では、見事な手品の腕前を披露しているが、彼は実生活でも酔っ払うと手品を見せてくれるとか。
2001年11月10日にNHK総合テレビで全国放送されたドラマ『聖徳太子』(全2回・各90分)では新羅武人「伊真」を演じ、本木雅弘や緒方拳らと共演。その演技力に加えて、見事な日本語を披露した。
2002年に主演した『公共の敵』では、第39回(2002)大鐘賞男優主演賞、第38回(2002)百想芸術大賞の大賞、そして第23回(2002)青龍賞主演男優賞を受賞。ちなみに、俳優が百想芸術大賞の「大賞」を受賞したのは1994年のアン・ソンギ以来八年ぶりのこと。同じく2002年には、1999年に完成していたものの公開が遅れていたアート・ムーヴィー『鳥は閉曲線を描く』が劇場公開されたほか、ヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞した『オアシス』、大ヒット・アクション・コメディ『ジェイル・ブレーカー』が公開され、一年に四作品もの主演作が公開された。ちなみに、『オアシス』の演技では第3回(2002)釜山映画評論家協会賞主演男優賞、第10回(2002)春史羅雲奎映画芸術祭男子演技賞、第22回(2002)映画評論家協会賞主演男優賞、第1回(2002)MBC映画賞男優主演賞を受賞しており、2002年の韓国内映画賞の主演男優賞は『公共の敵』と『オアシス』によりソル・ギョングにほぼ独占された。
次回作はカン・ウソク監督の『シルミド/SILMIDO』。
2003年に韓国公開されたドキュメンタリー『霊媒 生者と死者の和解』ではナレーションを担当している。
初版:2000
最新版:2003/5/3
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