『手紙』のイ・ジョングク監督第5作。レコードショップを舞台に、現代都市に住む人々の日常と愛を穏やかな感動で描き出したナチュラル・ラブ・ストーリー。脚本は監督のイ・ジョングクとパク・チョンウが担当。
小さなレコード店のオーナー イ・ヨンフン(キム・サンジュン)は、初恋の人ユン・セヒ(ユ・ホジョン)が忘れられず、大学時代に彼女に捧げたモーツァルトの曲ばかり聴いている。彼は、父(パク・クニョン)と2人暮らしをしているのだが、母の死が父親のせいだと思っており、父親に冷たい態度をとっている。ヨンフンには、10年間一緒にアマチュア・コンサートを開いてきた男友達がいる。家庭を持っている公務員のハン・セジン(ヤン・ジンソク)、離婚した後、1人で娘を育てている大学講師のソ・ジニョン(イ・ミョンホ)、いまだに未婚の科学教師キム・ホンチョル(チョン・ホグン)の3人だ。ヨンフンは、コンサートが近づいたためレコード店のアルバイトを募集したところ、ソ・ヨナァ(パク・チニ)という女性が現れる。自分とは違った雰囲気を持つヨナァにひかれるヨンフン。彼と仲間達には様々な事件が起こるが、お互いを励ましあいながら問題を解決していく。ところが、コンサート会場に予定していた小劇場が、急に工事を始めることになってしまう。
技巧的な映像を廃すと同時に、白馬の王子様が現れるといった通俗的なラブ・ストーリーではなく、素朴で平凡な日常の愛を描いているのが特徴。映画全編からナチュラルさが感じられる。自然で懐かしい感じのする音楽を担当したのは、『我が心のオルガン』の音楽を手掛けたチョ・ドンイクの兄で、韓国フォークソング界の大家チョ・ドンジン。
興行的には成功できなかったが、チョン・グァンソク プロジェクト・バンドが担当したOSTが話題となり、売り上げも好調だった。
主役のキム・サンジュンとパク・チニの他、脇役陣も充実。オクスティック・バンド「歌絵」のメンバーで、ラジオのDJ、TVリポーター等でもお馴染みのヤン・ジンソクは、この映画でスクリーンデビュー。イ・ミョンホは『白馬江 月夜に』,『ロミオとジュリエット』,『三文オペラ』,『千年の手印』などの演劇で脚光を浴びた俳優だが、彼もこれが映画初出演となる。チョン・ホグンはテレビ・ドラマでお馴染みの中堅タレント。父親役がはまり役のパク・クニョンは、『誰が龍の爪を見たのか』で大鐘賞助演男優賞を受賞し、『父』でも熱演を見せたベテラン俳優。高視聴率テレビ・ドラマ『青春の罠』でシム・ウナと共演したユ・ホジョンが『ファースト・キス』に続いて特別出演。『波羅羯諦/ハラギャティ』に出演していたチン・ヨンミがジニョンの妻役で久しぶりに映画出演している。CDの万引きを見つかったのがきっかけで、レコード店でアルバイトするようになり非行をやめる問題児を演じるチャ・シウン(17)は、現役女子高校生の新人。彼女はKBS『幸福にしてさしあげます』、SBSドラマ『私、どう』,『ミス・ヒップホップ、ミスター・ロック』にも出演している。また、ロッカーのユン・ドヒョンとイ・ジョンヨル、それに音楽評論家のイム・ジンモがちょい役で出演している。ユン・ドヒョンは『ジャングル・ストーリー』などにも出演してる。
第23回(2000)黄金撮影賞新人女優賞(パク・チニ)受賞作品。
初版:2000/3/9
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