三流人生を送る刑事とチンピラの双子の兄弟を題材にしたノワール映画。スローガンは「暴力のセンチメンタル」。韓国の映画評では同じ年に韓国で公開された北野武の『ソナチネ』とよく比較された。
東海に面し、太白山脈に囲まれた注文津(チュムンジン)という海辺を故郷に持つ双子の兄ヘシク(パク・シニャン)と弟ヘチョル(パク・シニャン)。彼ら2人は全く異なる人生を歩んでいた。ヘシクは大学をなんとか卒業してソウルで刑事になり、高卒のヘチョルは注文津で有名なチンピラになっていた。映画の冒頭、ヘチョルがヘシクの銃を奪って自殺し、ヘシクは解職されてしまう。そして、ヘシクは弟の遺灰を海にまくために、青い海と白い雪が印象的な故郷の注文津に戻ってくる。しかし、20年振りに戻った故郷では誰もヘシクのことを覚えておらず、暴力団の元実力者ポンゲ(アン・ソンギ)や現在の実力者チョンドゥ(キム・スンチョル)はヘシクをヘチョルと勘違いし、ヘシクは数々の事件に巻き込まれる。自分がだんだんヘチョルになっていくような錯覚を覚え、またヘチョルのことが理解できるようになり始めたヘシクだったが・・・
パク・シニャンが刑事の兄ヘシクとチンピラの弟ヘチョルの1人2役を、そしてアン・ソンギがヘチョルが以前身を置いていた暴力団のボス「ポンゲ」を演じる。主演の2人に加えて助演陣の演技も印象的。注文津の実力者チョンドゥ役を演じたキム・スンチョルは、1964年ソウル生まれの東国大学演劇映画科出身で、演劇『ペドゥラ』,『サイ』,『誕生日パーティー』,『君はジャズを信じるか?』などに出演している。退役中士(=軍曹)役を演じるチョン・ウンピョは、ソウル芸術専門大学演劇科を卒業し20余りの演劇に出演している男優で、映画では『ユリョン』や『幸福な葬儀屋』に出演している。伝導師役のチェ・ソンジュンは、現在ウノ・フィルム企画室長だが、元演劇俳優で映画では『ビート』,『八月のクリスマス』などに出演している。粗雑なチンピラ チャンヒ役で出演したキム・ギチョンは、劇団アリラン所属の演劇俳優。映画は『八月のクリスマス』でデビューし、今回が2回目の出演となる。ポンゲの妻ヨンナンを演じているのは、演劇『美しい死因』,『マジック・タイム』,『日が沈み、月が浮かび』等に出演しているチュ・グィジョン。映画出演は『ハリウッド・キッドの生涯』,『学生府君神位』,『産婦人科』に続いてこれが4回目となる。
『グリーンフィッシュ』、『八月のクリスマス』、『イ・ジェスの乱』のシナリオを担当したオ・スンウクの監督デビュー作。この作品ではオ・スンウクとペ・ヨンファン、そしてホ・ジノがシナリオを共同執筆している。
製作はチャ・スンジェ。元々の題名は『風の記憶』だったが観念的すぎるため、チャ・スンジェのアイディアで『キリマンジャロ』に変更。『キリマンジャロ』は、劇中アン・ソンギとパク・シニャンが歌うチョ・ヨンピル(趙容弼)のヒット曲『キリマンジャロの豹』からとった。音楽監督はチョ・ソンウ。エンディングのタイトル曲『君に』はパク・シニャンが歌う。撮影は『穴』で撮影監督としてデビューしたソク・ヒョンジン。
第21回(2001)Fantasporto国際映画祭「パノラマ&プレミア/世界の映画」部門招待作品。第38回(2001)大鐘賞助演男優賞(チョン・ウンピョ)受賞作品。
初版:2000/6/11
最新版:2001/4/30
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