我が心のオルガン
題名 英題 ハングル |
我が心のオルガン The Harmonium in My Memory 내 마음의 풍금 |
製作年 |
1999 |
時間 |
118 |
製作 製作投資 |
アートヒル イルシン創業投資 |
監督 |
イ・ヨンジェ |
出演 |
イ・ビョンホン イ・ミヨン チョン・ドヨン チョン・ムソン チェ・ジュボン イ・インチョル ソン・オクスク ソ・ヘリン イ・デヨン キム・イル キム・ソンファ シン・シネ キム・ミニ |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video DVD |
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1960年代、古き良き純粋な時代を背景に、誰もが一度は経験する「心ときめく初恋」を描いた作品。ハ・グンチャンの短編小説『女の教え子』を映画化。アートヒールが初めて製作する作品で、韓国映画アカデミー3期出身の新人監督イ・ヨンジェのデビュー作。
高度成長期以前の1960年代、江原道の山奥の小学校に師範学校を卒業したばかりの若者カン・スハ(イ・ビョンホン)が赴任して来る。彼は、小学校への行き方を少女ユン・ホンヨン(チョン・ドヨン)に尋ねる。生まれて初めて自分のことを「アガッシ(お嬢さん)」と呼んでくれたスハ。遅れて進級した17歳の小学生ホンヨンは彼に初恋をする。しかし、スハは同僚の女教師ヤン・ウニ(イ・ミヨン)に片思い。ホンヨンは、日記帳検査をするスハに自分の日記で思いを伝えようとする。
相手を見ているだけで胸が熱くなる。そんな初恋の純粋さ、美しさ、そして年を取ってから初恋を懐かしく思い出す人々の心境。少女が恋を通して成長していく様を美しい映像で描いた叙情的作品。チョン・ドヨン演じるユン・ホンヨンは、家の手伝いをしているせいか、17歳でありながら遅れて進級した小学校5年生の女の子。もともと童顔のチョン・ドヨンだが、17歳の雰囲気を出すために髪を短く切り、ノーメークで子供たちに混ざると、どこからどう見ても天真爛漫な小学生。
『永遠なる帝国』,『美しき青年 全泰壱』,『つぼみ』,『スプリング・イン・ホームタウン』などで知られるMBC美術センターが美術を担当。江原道の風光明媚な景色を絵葉書のように焼き付けた映像は、数々の撮影賞を受賞し、『永遠なる帝国』,『娼』,『約束』などを担当した撮影監督チョン・ジョミョンの手による。また、チョ・ドンイクが担当したオールド・ポップも映画とマッチし良い雰囲気を醸し出している。チョ・ドンイクはチョ・ドンジンの弟で、歌・作詞・作曲・編曲・演奏となんでもこなす実力派音楽家。キム・ホンジュン監督の『薔薇色の人生』で映画音楽を始め、『ナンバー・スリー』の音楽監督でもある。またユ・ヨンシクがプロデューサーを担当している。
映画の封切りにあわせて原作者のハ・グンチャンが原作の短編『女の教え子』を改作し、長編小説『我が心のオルガン』として再発表。韓国での公開時には上映時間の異なる2バージョンが同時に上映され話題となった。同時期に公開された『シュリ』大ヒットのあおりで他の映画が軒並み短期間で上映打ち切りになるのに対し、この映画は2ヶ月近いロング・ランと健闘した。
第35回(1999)シカゴ映画祭世界優秀映画招待試写部門、第3回(1999)富川国際ファンタスティック映画祭「ファンタスティック韓国映画特別展」部門、イタリアの第14回(2000)Far East映画祭、第14回(2000)福岡アジア映画祭出品、第37回(2000)大鐘賞女優主演賞(チョン・ドヨン)・脚色賞(イ・ヨンジェ)、第20回(1999)青龍賞女優主演賞(チョン・ドヨン)・女優助演賞(イ・ミヨン)・新人監督賞(イ・ヨンジェ)受賞作品。他にイタリアのヴェローナで開かれた第4回(2000)スケルミ・ダモレ映画祭で最優秀作品賞にあたるSilver Rose賞・若い審査委員団賞・観客賞を、第14回(2000)福岡アジア映画祭で特別賞を受賞している。
初版:1999
最新版:2000/7/10
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【ソチョンの鑑賞ノート】
1999年3月31日、4月1日の両日、ソウルのソウル劇場にて鑑賞
この映画は日本映画でいえば『男はつらいよ』寅さんシリーズのような映画です。過ぎ去りし古き良き時代を懐かしむ。悪人は全く出て来ず、皆善人ばかり。悪く言えば過去を美化しているとも言えるし、設定に無理がある部分もあります。何か訴えかけるものがあるかと問われればないし、猛烈な芸術性もありません。その意味で、評論家筋では高い評価を受けられないかもしれません。しかし、その一方でこの映画は寅さんシリーズがそうであるように大衆には受け入れられると思います。韓国映画で1960年代を描いた作品というと、朝鮮戦争を直接取り扱ったり、その後を描いたり、また貧困の問題やそれが原因で売り飛ばされた女性の悲話など辛い過去を描くことが主流でした。そんな中で、こんな微笑ましい映画が出てきたことを私は歓迎します。この映画に関して個々の欠点をあげることは容易ですが、そんな評をするのはバカバカしいと思えるほどの懐かしさと楽しさにあふれた作品です。
この映画は台詞が全く分からなくても楽しめます。江原道の美しい自然を切り取った映像。そして主役3人の穏やかな演技。彼らの表情と郷愁を誘うBGMだけで、映画の中で何が語られているか分かります。「こう来るだろう。ほら、あたった! はっはっは」これだけ見ていて予想通りに進行する映画も珍しいです。そして、それが心地よい。時代劇は分かりきったストーリーですが、でも楽しめる。それと同じような感じでしょうか。また、この映画は日韓の同質性を嫌というほど感じさせてくれる映画です。始業式の日の喧騒、運動会での出来事...違う国の映画なのに、こんなに感性が似ているなんて。
この映画はお子さんでも見られる映画です。韓国は映画の等級が厳しい国で、子供が見られる韓国映画といったら漫画映画くらいしかないのですが、この映画は大丈夫です。全ての人が見られる等級がついていて、子供からお年寄りまで幅広く楽しめます。実際、私が見た時、劇場は子供連れの母親、中学高校生、20代のカップル、中年夫婦、40代・50代と思しきアジュマの団体と様々な階層の客で埋め尽くされていました。20代、30代の若者が主要客層である韓国でこれはとても珍しいことで、終映後客席を見渡した時はちょっと感動しました。『シュリ』は話題性で様々な階層の客を呼び込みましたが、『我が心のオルガン』は映画そのものが持っているテーマと魅力で『シュリ』以上の幅広い年齢層をひきつけている。子供からお年寄りまで揃って楽め、世代を超えた共感が得られる。これがこの映画の最大の魅力でしょう。
最後に俳優について。最近「チョン・ドヨンは頭でなくハートで演技をする」という文章をよく見掛けるのですが、今迄はピンときませんでした。しかし、『我が心のオルガン』を見てその意味が分かったような気がしました。あの少女役を頭で演じようとしたらきっとわざとらしい演技になったでしょう。彼女は配役になりきっていました。凄みを感じる演技ではないですが、あの役を同年代の他の女優が演じることは不可能でしょう。イ・ビョンホンは心優しい小学校の先生をうまく演じていました。今まで「強い男」を演じ続けていましたが、肩の力を抜いた演技だったと思います。イ・ミヨンは相変わらずノーブルな美しさ。「私が主役よ!」と自己主張することのない名バイ・プレイヤーへの道を着実に歩んでいます。
1999年5月8日執筆
投稿者:SUM さん 投稿日:2000年9月17日(日)21時05分10秒
そう、日本にもこういう風景はあった。情景が心にしみます。
【評価:★★★★】
投稿者:劉さん 投稿日:2000/12/25 23:51:02
私は在日で、立場上祖国の子供といえば、北の方の子供しか会ったことがありません。
この映画を観た私は大粒の涙を流しました。美しい情景が心に染みわたりました。北であれ南であれ、日本であれ朝鮮であれ、美しいと思われることや子供の可愛さは同じなんだとつくづく感じました。
とても良い作品でした。
【評価:★★★★】
投稿者:大西康雄さん 投稿日:2002/3/1 01:08:00
香港製英文字幕付きDVDで鑑賞。
1963年の江原道の山村を舞台にしたレトロ感覚あふれる心温まるほのぼの映画。『JSA』や『女校怪談』で見慣れたイ・ビョンホンやイ・ミヨンが出てこなければ、1960年代の韓国映画と紹介されてもそのまま信じてしまうだろう(画質が今ひとつの香港製DVDで見たからなおさらだが、オリジナルフィルムで見ればイメージが変わるかも)。チョン・ドヨンに至っては完全に1960年代のレトロ感覚に溶け込みきっていて、あの『接続』のチョン・ドヨンと同一人物とはとうてい信じられない。おそるべし。
もっとも私が今までに見た数少ない1960年代韓国映画は、およそほのぼの感覚とはかけ離れたキム・ギヨンの『下女』やイ・マニのサスペンス物しかないので、この作品から感じるほのぼのとしたレトロ感覚が当時の韓国の同時代感覚を本当に再現しているかは判断不能。むしろ日本映画や、『あひるを飼う家』の李行(リー・シン)監督作品に代表される1960-70年代台湾・健康写実路線映画群との共通性を感じる。となるとやはり「旧『日帝』文化支配圏」に共通するレトロ感覚が存在するのだろう。
急速に社会変化を遂げた韓国にあって、1999年という時点でこれだけレトロ感覚あふれるこの作品を撮ることは、決して自然にできることではなく、相当綿密にシナリオや演出を計算し尽くしての結果ではないかと思う。本作を撮り上げたイ・ヨンジェ監督は実はかなり力のある相当の戦略家なのだろう。本作を見て、この監督に傾向の異なる次回作を期待したくなった。
DVDデータは以下の通り。
香港・現代音像(国際)有限公司(英文表記 Modern Audio Ltd.)より2001年リリース。中文題名:『記憶中的風琴』,カタログ番号:VED19004,収録フォーマット:片面1層 4:3,スタンダードサイズ,音声:韓国語,字幕:英語/中国語,収録時間:本編115分,リージョンコード:ALL
オリジナルフィルム画面はビスタサイズと思われるが、テレビ向きにトリミングされた画面で収録されている。また画質は一般的な韓国製のDVDと比較すると解像度面でかなり甘く、エンドクレジットの文字が潰れてよく読めない。とはいえ、一般的なVHSテープやVideo CDよりはもちろんましなので、一般家庭用テレビで見る限りでは気にすることはない。また英文字幕の文字が妙に縦長で、20インチ未満のTV画面では読み取り困難。大き目の画面で見る必要がある。
ちなみに、韓国では本作のDVDの形でのリリースはない(2002年2月現在)。
なお、香港では知る限りで少なくとも20枚程度の韓国映画DVDがリリースされているらしく(2002年1月現在,ポルノ映画を除く)、そのうち三分の一程度が韓国・日本でDVD未リリースのものである。
【評価:★★★★】
投稿者:たびこさん 投稿日:2004/2/8 13:08:35
17歳で小学生。そんな田舎の女の子の初恋 ──。
私のお粗末な韓国語力では全てを理解したとは到底思えませんが、それでもはっきり言えます。「この映画は素晴らしい!!」
好きな人の前では何も話せなくなる気持ち。でも1人になったらうれしくてジタバタしてしまう気持ち。どこの国で生まれて、どこの国で育っても、人間の基本的な感情って同じだと思います。普段は天真爛漫な小学生の女の子が、憧れの先生を守ろうとこわいおばさんに掴みかかっていく、そのひたむきな姿には涙が止まりませんでした。
主演のチョン・ドヨンさん、もちろん嫌いではありませんでしたが、すごい女優さんだと改めて思いました。ドラマでのイ・ビョンホン氏人気に乗っかって、この映画が日本で一般公開されれば、ソチョンさんの一億総ドヨニスト計画も夢じゃないかも(笑)。
【評価:★★★★★】
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