『ナンバー・スリー』のソン・ヌンハン監督第2作。前作と同様、社会批判型キャラクター映画。シナリオは監督自らが執筆し、完成までに2年を要した。「モラトリアム」、「無道徳」、「モラルハザード」、「Y2K」の4話からなり、世紀末を舞台にソウルに生きる人々の悩み、欲望などを描く。
モラトリアム編。脚本家のドゥソプ(キム・ガプス)は、生活のためにメロドラマのシナリオを書いているのだが、なかなか筆が進まない。映画社のソ室長(リュ・テホ)の催促で、やっとシナリオを書き上げるが、コンピュータの故障でファイルは消滅してしまう。ドゥソプは自分が本当に書きたかった社会批判的な内容の連続殺人劇のシナリオ『20世紀』に着手するが、ニュースでは以前に見たことのあるヨーヨー売りの男(アン・ソックァン)の殺人事件が伝えられていた。
無道徳編。成金のチョン(イ・ホジェ)は、大学生のソリョン(イ・ジェウン)と援助交際を楽しむが、彼の息子ヒョニルも友人の紹介でソリョンと関係を持つ。父が植物人間になってしまい家族を支えなければならないソリョンは金と麻薬の虜になっていく。
モラルハザード編。大学非常勤講師のサンウ(チャ・スンウォン)は専任のイスが気になる浮気者の知識人。ところが、妻(ホン・ギョンヨン)は彼の情婦のミラン(イ・ジウン)との関係を知り2人を告訴する。
Y2K編。シナリオ作家をやめて漫画屋の主人になったドゥソプ。相変わらず体を売っているソリョン。妻と離婚し、時々ミランの家に出入りするサンウ。それぞれの世紀末・・・
『イエローヘア』でヌード演技を披露したイ・ジェウンがこの映画では、援助交際をする女子大生ソリョン役で出演。彼女のキャスティングは、監督がテレビに出ていた彼女の目に惚れ、その後『イエローヘア』を見て決めたとか。チョン・ギョンスンはシナリオ作家ドゥソプの妻で出演。
助演俳優の多くは演劇出身者。イ・ジェウンと援助交際する役を演じるイ・ホジェ(58)は、1964年に演劇アカデミー(現、ソウル芸術専門大学)1期生として演技を始め、数多くの演劇に出演し演技賞の受賞経験も豊富な俳優。映画には『離婚しない女』,『華厳経』,『太白山脈』,『actress アクトレス〜官能のリハーサル』,『彼は私にチータを知っているかときいた』,『父』などに出演している。アン・ソックァンは『孤島を待って』,『男の衝動』などの演劇で東亜演劇賞演劇協会演技賞などを受賞した演劇俳優。この作品と同時期に公開された『カル』でも解剖検査医の役で出演している他、『KUMIHO/千年愛』,『太白山脈』,『私からあなたへ』,『ガンマン』,『ナンバー・スリー』,『失楽園』,『ドクターK』などでも印象的な演技を披露している。チャ・スンウォンと真昼の情事を交わす女記者役を演じたイム・ジソンは『ミジ王』の公開オーディションでスクリーン・デビューした女優。ホン・ギョンヨンも主に演劇で活躍する女優で、映画では『ミジ王』や『娼』などに出演している。リュ・テホも演劇での活躍が目立つ俳優だが、『ドクター・ポン』,『つぼみ』,『トゥー・カップス3』など日本でもお馴染みの映画に出演している。
歌手のシン・ヘチョルが音楽を担当している。
第23回(2000)黄金撮影賞新人撮影賞(イ・フゴン)・新人監督賞(ソン・ヌンハン)受賞、第24回(2000)モントリオール世界映画祭ワールドシネマ部門、2000年エジンバラ国際映画祭、第18回(2001)サンフランシスコ・アジアン・アメリカン映画祭、第5回(2000)釜山国際映画祭韓国映画パノラマ部門、2001年シンガポール国際映画祭、第23回(2001)モスクワ国際映画祭特別部門「スクリーンという鏡に照らしてみた朝鮮半島」出品作品。
初版:1999/12
最新版:2001/2/26
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