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八月のクリスマス


画像提供:ウノ・フィルム(以下、同じ)


題名
英題
原題
ハングル
八月のクリスマス
Christmas in August
8月のクリスマス
8월의 크리스마스
製作年 1998
時間 96
製作
提供
ウノ・フィルム
イルシン創業投資
監督 ホ・ジノ
出演 ハン・ソッキュ
シム・ウナ
シン・グ
オ・ジヘ
イ・ハヌィ
チョン・ミソン
クォン・ヘウォン
ソン・セグァン
チェ・ソンジュン
キム・エラ
ミン・ギョンジン
イ・ヨンニョ
キム・ギチョン
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 自分の死期が分かっていながら淡々と、あくまで淡々と残りの人生を過ごしている男ジョンウォン(ハン・ソッキュ)と、そういった事実を全く知らない活気あふれる無邪気な若い女性タリム(シム・ウナ)の心温まる恋愛物語。「死」という重いテーマの中に優しい「恋」の物語を注ぎ込んだ傑作。

 韓国のメロドラマというと、男女の口論が多いだの、虐げられた女性の話しが多いだのあまりよい印象を持っていない方が多いかもしれないが、『八月のクリスマス』はそんな陳腐な映画ではない。徹底的に抑制の効いた表現(それは台詞の少なさにも表れる)と美しい映像、そして一つとして無駄のないシーン一つ一つが積み重なっていき、見る者に大きな感動と余韻を与えてくれる。印象に残るシーンの多くは台詞が全くないシーンであり、それはつまり主役のハン・ソッキュとシム・ウナの演技が素晴らしいことを物語っている。この映画をソウルで見た韓国語を全く解さない友人も大絶賛していた。言葉が全く分からないのに感動できるというのは、この映画が傑作であることを証明していると言えよう。

 1997年の映画賞で主演男優賞を総なめにしたハン・ソッキュの1998年の作品。今まで彼の出演作はすべてヒットしてきたが、共演の女優シム・ウナは、TVでは人気があるもののなぜか映画に出ると鳴かず飛ばず。さて、『八月のクリスマス』では、ハン・ソッキュの「出る映画必ずヒット」ジンクスが勝つか、シム・ウナの「映画に出ると興行失敗」ジンクスが勝つか? と公開前は妙な話題で持ちきりだったが、ふたを開けてみれば大ヒット。1万4千枚という韓国映画史上最高の前売り券売り上げ記録に続き、封切り10日で全国で50万名の観客を動員するという超特急興行記録を樹立。最終的にはソウルで42万の観客を動員した。『接続』『手紙』を越えるメロドラマの傑作と評判。なお、エンディング・テーマソングは主役のハン・ソッキュが歌っている。香港では『八月照相館』という題名で公開された。

 多くの韓国映画人から慕われ尊敬されていた名撮影監督ユ・ヨンギルの遺作でもあり、映画の冒頭には「この映画をユ・ヨンギル撮影監督の霊前に捧げる」の文字が浮かぶ。音楽監督はチョ・ソンウ。製作はチャ・スンジェ。シナリオは、オ・スンウク、シン・ドンファン、そして監督のホ・ジノの3人が共同執筆。後に『私にも妻がいたらいいのに』で監督デビューするパク・フンシクが助監督を担当している。

 1998年カンヌ国際映画祭「国際批評家週間」部門、第3回(1998)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門、第17回(1998)バンクーバー国際映画祭、シカゴ映画祭、トロント国際映画祭、フランドル国際映画祭、第8回アジアフォーカス・福岡映画祭 '98、モントリオール世界映画祭、第1回(1998)台北国際映画祭、第10回ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭 '99「招待作品」部門、第23回(1999)香港国際映画祭、第36回(2001)Karlovy Vary国際映画祭回顧展「ニュー・コリアン・シネマ」出品作品。第21回(1998)黄金撮影賞新人監督賞(ホ・ジノ)、第34回(1998)百想芸術大賞映画部門作品賞・新人監督賞(ホ・ジノ)・女優主演賞(シム・ウナ)、第18回(1998)映画評論家協会賞最優秀作品賞・最優秀監督賞(ホ・ジノ)・女優演技賞(シム・ウナ)・撮影賞(ユ・ヨンギル)、第19回(1998)青龍賞最優秀作品賞・女優主演賞(シム・ウナ)・新人監督賞(ホ・ジノ)・撮影賞(ユ・ヨンギル)、第36回(1999)大鐘賞審査委員特別賞・新人監督賞(ホ・ジノ)・脚本賞(オ・スンウク)、第10回ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭 '99ゆうばりファンタランド女王賞受賞作品。

 日本では、ノベライズ小説『八月のクリスマス』の翻訳本(オ・スンウク&シン・ドンファン&ホ・ジノ脚本/井堀登編訳)が竹書房文庫より2002年12月17日に発売される。

初版:1998
最新版:2001/7/3


■ ホ・ジノ監督インタビュー

 アジアフォーカス・福岡映画祭 '98 でのホ・ジノ監督インタビューはこちら


投稿者:SUMさん 投稿日:1998年4月2日(木)21時4分22秒

 心情を表すのに日常を切り取って共感させるのは繊細な感性の持ち主のなせる技だろう。一度はこの映画について何かの体験と重ねて表現しようとも思ったが、諦めた。うまく映画と繋がる自分のエピソードや心情を選び出せなかったからだ。自分の文章力のなさを痛感した。

 ストーリーを追うのに精一杯な脚本は、見せることを熟知した監督が、そしてスタッフ・キャストが揃わなければ概してつまらない。言わなくていいことは言わないでいてくれる映画でその上に見せる力の強いメンバーが完成させたものとなると、もうこれは文句の付けられない傑作である。

 予期される死によって抱えてきたポリシーやルーツが矛盾し始めた男の心情をシーンの積み重ねで無駄なく明るくも繊細に語ってゆく。例えて言えば、死期が近づいた男は父にビデオの操作を教えようとするが、結局機械音痴の父にたったそれだけのことを教えられないというコメディックなシーンがあるが、これが自分の引き継いだ写真屋をしかも機械化によって勝手のずいぶん変わった写真館を父に帰さなければならない悲しさと重なってゆく。それぞれのシーンが絡み合ってストーリーだけでなく心情のほんの些細な部分までこれだけ破綻なく組み上げて見せて感じさせてくれる映画はそうあるものではない。明るいシーンと悲しいシーンのバランスも絶妙で決して食傷も退屈もさせない。

 この死とその人間関係の物語は、与えることばかり実行してきた男が、死期が近づいていることを知った後に出会った女性に与えようとして、恋に落ちて、いわば与えられる関係になって、与えることを全うできないのに恋に落ちてしまった自分の中の矛盾と、恋をよく知らないまだ若い女のもてあそばれたと紙一重の境遇に揺れ動く感情が絡み合って静かに物語の結末へ向かって行く。

 こんなに感心したのはこの文章を書いてからだ。映画を見ていたときは感心するまでもなく、ただただ感動していたのだから。この映画は文句なしに名作だ。


【評価:★★★★★】



投稿者:井上さん 投稿日:1998年9月20日(日)23時32分55秒

 私の住む福岡市では、毎年9月は「アジアマンス」と銘打ち、様々なイベントがひと月を通して繰り広げられます。そのひとつが「アジアフォーカス・福岡アジア映画祭」です。今日9月20日は最終日で、絶対見逃すまいと決めていた、『接続(ザ・コンタクトという名がついていた)』と『8月のクリスマス』を見てきました。簡単に感想を述べさせてもらえば、『8月のクリスマス』こりゃ名作です。ハン・ソッキュ最高です。『パイロット』のユンピョル(ですっけ?)役しかり、人のいい兄ちゃん役はまりますね。特大の花丸です。


【評価:★★★★★】


【ソチョンの鑑賞ノート】

 通常気に入った作品があると、これでもか!というくらいにネタバレ解説するのですが、この作品に関しては止めにしておきます。ネタバレしてもこの映画の素晴らしさは変わらないし、あらかじめ筋を知っていたとしてもやはり感動してしまうことに変わりはないのですが、残念ながらこの映画を語るほどの文章力を私は持ち合わせていないのです。

 とにかく「ご覧ください」としか言えません。「この映画を見ないなら、あなたの映画人生にとって損失である」と断言できる作品です。

 心地よい余韻を与えてくれ、そして何かを考えさせてくれる映画です。人によっては「恋」について考えるかも知れず、人によっては「死」について考えるかもしれず、また別の人は「家族」に思いを馳せるかもしれません。何を思うかは観客一人一人に委ねられています。それだけ度量のある包容力のある作品です。ある感情や思考を観客に強制するのではなく、見た者が自主的に自分の想像力と感性をフル回転させて考え、感じる映画。こういう映画はめったにあるものではありません。

 ホ・ジノ監督。彼は「ホ・ジノ ワールド」と呼ぶに値する映画観を既に確立しているのかも知れません。

1998/9/23 執筆



投稿者:ともともともーんさん 投稿日:1999年8月10日(火)22時14分08秒

 前売券まで買ったのになかなか見に行けず最終日近くに一人でこっそりと映画館へ。二度もビデオで見た筈なのに、台詞もシーンも覚えてるはずなのに、楽しい。

 季節の変わり行く風景、二人の会話、仕種、移り行く季節が心地よい。二度も見たくせに「私は一体なにを見てたんだろう」と情けなく思う。

 何度見ても楽しい。いや、「楽しい」という言葉が不釣り合いなことはわかっている。ハッピイエンドではないのだから。でももう一度、何度でも見たいと思う。

 監督の次回作のテーマは「幸せ」だそうだ。どんな「幸せ」を見せてくれるのだろう。楽しみだ!

【評価:★★★★★】



投稿者:とも さん 投稿日:1999年9月11日(土)00時35分21秒

 感動しました。

 縁側で兄と妹がスイカの種を飛ばしながら今まで共有してきた時間を噛みしめるシーンでもう泣けてきました。機械が苦手なお父さん、自分の気持ちをうまく伝えられなくてディスコで泣き出すタリム。とても身に覚えのある、一人一人の個人的な感覚や感情をこんなに丁寧にさらりと切り取って見せるすばらしい映画です。

 いろいろな場面でのガラスや鏡の使い方も日常身に覚えのある光景でとってもリアルでした。 泣いて泣いて泣かせてくれる映画ですが、不思議とさわやかな暖かいキモチで泣けます。うまく説明できないんですけど、まだの人はぜひ見てください。見終わった後、いろいろなシーンが胸に残ってあふれてくること請合いです。

 今まで姿形は似ていても、ある意味考え方はとっても遠い(もちろんそれうえの魅力があるのですが)と感じていた韓国の人をとっても身近に感じれて、この感動が味わえるアジア人でよかったと心底思いました。

【評価:★★★★★】



投稿者:ヨンイジャさん 投稿日:1999年9月26日(日)22時27分04秒

 さっき、『八月のクリスマス』を見てきました。久々に波長がピッタンコの韓国映画に出会えました。『鯨とり ナドヤカンダ』『神様こんにちは』は大好きで心に汚れが溜まってきたころに観て、そのつど心が生き返ってきたが、今度はそんな私の大好き韓国映画に『八月のクリスマス』が加わって嬉しい。

 『鯨とり ナドヤカンダ』のキム・スチョルは演技も歌も素晴らしかったが、ハン・ソッキュも最高に素敵で大ファンになってしまった。来月は韓国に行って来るので、ハン・ソッキュのCDを買ってきます。

【評価:★★★★★】



投稿者:かめさん 投稿日:1999年12月10日(金)05時37分29秒

 多摩シネマフォーラム映画祭でやっと見れました。

 たしかキリストは当時嫌われていた税金吏にも手を差し伸べたと思います。昼ごはんも食堂で食べられないほど嫌われているタリムのような駐車違反取締員の姿は、そんな税金吏のイメージにダブります。

 彼女の唯一の安心できる場所があの写真館だったとしたら、その主はキリストかも知れない。監督は宗教と題名は無関係と言われてますが、何で8月にクリスマスなのかなと考えてたら、こんなことを思いつきました。

 でも、夏のクリスマスに心のプレゼントを持ってきたのは、実はタリムだったりするわけで、彼女もまたサンタなのかもしれません。そして「賢者の贈り物」のように、本当のクリスマスでプレゼントを上げたのは...(と、ここまで考えて号泣モードに突入)

【評価:★★★★★】



投稿者:yuriiさん 投稿日:2000年2月18日(金)00時54分09秒

 巷では『シュリ』ブームが真っ只中、おくればせながら映画館でやっと『八月のクリスマス』をみることができました。なんせ田舎なもんで・・・

 傑作です。

 この映画は見ている間は突出していいとは思えませんが、見た後にシーンのひとつひとつがじわじわと思い出されてくる映画だと思います。そして気になってしょうがなくなって2度、3度と見て初めてそのよさを理解できる映画だと思います。

 最初、主人公が赤いスクーターに乗って風を切って楽しそうに走っている表情を正面から捉えたシーン。運動場での主人公のモノローグと、死後の誰もいない雪景色の運動場の対比。足のつめを切るシーン。友人の葬式後の不機嫌さ。自分の死を冗談めかして友人の耳元で囁くシーン。ビデオ操作の伝授。自分で自分の写真を撮る。寄り添う相合傘・・・etc

 数え挙げればキリがありませんが、これらのシーンがこの映画を初めて見てしばらくした後から効き始め、繰り返し見るうちに本物の感動に変わりました。

 60億近い人間がいて、そのうちのたった一人の人間が亡くなるというのは、自然界ではとりたてていうべきことではないのかも知れません。でもその一人のまわりには、彼を愛する家族がいて、昔の恋人がいて、現在進行形で思っている女の子がいて・・・

 ひとつの「世界」が亡くなってしまうという重みに思いをはせてしまいます。

 僕の町でも『シュリ』が2月26日から公開されます。その前に今週土曜日に世評に答えて先行ロードショーするそうですが、さっそく見に行きたいと思います。日本初公開より1ヶ月遅れ。なんせ田舎なもんで。

 ほかにも『接続』『風の丘を越えて〜西便制』etc・・・ 韓国映画は奥が深いですね。『シュリ』をきっかけに一時期の香港やインド映画ブームがおこることを期待してます。っていうか、そうなると信じてます。

 田舎でも韓国映画が当たり前のように劇場で見れることを願って。

【評価:★★★★★】



投稿者:徳永猛さん 投稿日:2000年10月10日(火)23時33分59秒

 なにをいまさらと言われそうですがNHKで観ました。

 生まれて初めて自分が、いま悲しいのか、せつないのか、感動しているのかなんだかわからない涙が流れました。わたしにも絶対に会えない大好きな人がいるのですが同じ気持ちを共有する、あるいは共有するかもしれない人が他にもいるんだなと思いました。

 アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されたそうですね。そのころは福岡に住んでいたのにとても残念です。時を無駄にすごしてしまったと思わせてくれるくらいほんとに出会いたかった名作でした。

【評価:★★★★★】



投稿者:まるこさん 投稿日:2000年11月24日(金)11時42分13秒

 最初は単なる興味本位で、衛星で放送された『八月のクリスマス』を見ていました。

 が、段々見ていくうちに、単なる興味本位で見た自分が恥ずかしくなるほど、これは素晴らしい映画でした。ジョンウォンとタリムの触れ合いを軸に、死を宣告されているジョンウォンが、平和な日常を穏やかな笑顔で、精一杯楽しんで生きている姿は、本当にキラキラと輝いていた。

 死が近づき、タリムの前から姿を消したジョンウォンが、喫茶店のウィンドウ越しから、勤務中のタリムを、手を重ね合わせながら見つめるシーンは、なんともいえずじーんときました。

 数え上げればきりがないほど、感銘するシーンは沢山ありましたが、特にラストの、「愛を胸に秘めたまま旅立たせてくれた君に、ありがとうの言葉を残します」、というジョンウォンの言葉は、ストーリーを一気に盛り上げてくれて、とても印象に残りました。

 私は今まで、こんな素晴らしい作品に出会ったことはありません。そしてジョンウォンを演じた、ハン・ソッキュさんの自然な演技を見て、一気にとりこになりました。

 私も、こんなに素晴らしい作品と感動に出会わせてくれた、ジョンウォンとハン・ソッキュさんに、ありがとう、と言いたいです。

【評価:★★★★★】



投稿者:さかなさん 投稿日:2003/3/16 05:30:06

 音。夏の木々のざわめき。現像機が時を刻むようにコトコトとプリントを吐き出す。スクーターの排気音。通り雨。雷。口に運ぶ匙が歯にカチカチと当たる。遠く響く鐘の音。洗い物。重ねられてゆく茶碗。救急車。粉々になるガラス。

 匂い。現像液の酸っぱい臭い。線香。夏の日の汗。アイスクリーム。家族で囲む夕餉。湯上りの蜜柑。そして病院。

 効果音でなく、生活音と生活臭。取り立てて美しくもないはずのもの。

 少女の気ままさ。あどけなさ。無邪気さとそれゆえの無意識な残酷さ。明日があるからこその日々の悩み。衝動的に投げつける暴力。

 けれど、命の時間が短い男の目を通すことで、それは例えようもなく美しく尊く描き出される。

 台詞でなく五感で男が命の限り感じる尊いもの。

 男は少女の若さと命の躍動を愛惜しむ。だから微笑み、時に声を漏らして笑う。

 タリムがジョンウォンを最後まで「おじさん」と呼び続け、この上なく近しくなりながら、ガラス一枚に隔てられ決して触れることの無かった二人の切なくピュアな距離感を示す。

 この映画ほど韓国語がわかったらな、と思わせるものはない。

 少ない台詞だからこそ一言一言が胸に響くのだ。

 主人公たちの言葉と、その言葉の持つ感覚を、直接理解できる韓国の人々の幸せを羨ましく思う。

【評価:★★★★★】



投稿者:ギルチョンさん 投稿日:2003/5/16 13:20:53

 このような映画に、まだのめり込める自分に感動しました。シナリオに加え、ハン・ソッキュ、シム・ウナの魅力は大変なものでした。

 映画の中で、登場人物の言動の意味する所や背景が私には読めない部分が幾つかあり、何度か全編を見返す内に想像を組み合わせてストーリーを作ってみたり(頭の中でだけですけど)、後半の展開で「もう一つの『八月のクリスマス』」が作られないかなど空想してみたりしました。登場人物と我が身の振舞を比べてみたり、一つの映画についてそんなに沢山のことを考えてみたことはありませんでした。それもこの映画の魅力の一部なのでしょう。

 が、一面の見方としては、それはひょっとしたら映画としての完成度が低いとも言えるのではと思ったりもしました。例えば、岩井俊二の『Love Letter』も私にとって感銘の残る映画でしたが、見る中で生じる疑問(?)も見ているうちに納得されるものでした。比較の例として日本映画を挙げてしまいましたので、私の両文化への理解度の違いから来ているのかもしれません。

 ところで、昨2002年のクリスマスに本作品の「小説」が発行されているのを知人が見つけ、購入してきてくれました(日本でのお話です)。ほんの1または2箇所、映画の描写と違う所があったように思いますが、私が想像してストーリーを組み立てていた部分が小説では書かれてありました。私が想像したうち、「こうであって欲しくない」と思っていたストーリーではなく、何だかほっとして嬉しくなってしまいました。そのほか、時間関係の記述、例えばラスト・シーンのクリスマスは何年の?、もあり製作者の意図したところが知りえたのも良かったと思います。私にとっては、この映画の魅力の一つ(考えさせられる又は自分で考えることの出来る)の楽しみ方がもう一つ増えました。

 映画をレンタル・ビデオで初めて見たのが2001年6月で、もう2年近くいろいろな面で楽しんでいることになります。

 評価が、「星5つ:名作・傑作−これを見ずに死ねるか!」であることを全面的に支持します。

【評価:★★★★★】



投稿者:オリゾンさん 投稿日:2003/6/24 21:08:01

 『八月のクリスマス』に出会って一年半。

 いまだにこの映画を観終わった時の心洗われるような感動は忘れられません。夏から冬への季節の移ろいの描写と、日常の一つ一つをいとおしむ主人公の眼差しはアジアンならではのもの。

 初回は、こんなに良い人が微笑みを残しこの世の中から消えてしまったという喪失感に呆然として、テレビの前からしばらく立てませんでした。ジョンウォンの温かく、もの悲しい笑顔が頭から離れなくて、何日も思い出しては涙で、映画ファン歴ウン十年の自分がこんなシンプルな映画にここまで心を捉われてしまうのかと、自分でも不思議だったのですけれど。

 ところが何度か観るうちに気づいたのは、これは非常に練り上げられた密度の高い作品だということ。二人の出会いのアイスクリームのシーンからラストシーンに至るまで、全てのシーンが名シーンで、尚且つ主人公の心情を繊細に反映しているという稀にみる玄人技の映画だったんですね。そして、息遣いまで聞こえてきそうな生き生きした登場人物。監督・俳優・撮影・音楽、全てが完璧に組み合わさった奇跡のような映画です。

 日本公開からかなり遅れてこの映画に出会った私ですが、出会えて本当に良かった。この映画には、忘れかけた懐かしい日本の姿があり、母や父に対する思いに近いものがあります。そして、アジアにハン・ソッキュのような名優がいたというのも驚きでした。私にとっては、大切な宝物のような映画です。

 デビュー作でこんな名画を創ってしまったホ・ジノ監督もこの後大変でしょうが、頑張って欲しいと思います。

【評価:★★★★★】



投稿者:温故知新さん 投稿日:2003/10/5 23:13:13

 言葉は要りません。あなたのその心で、この映画のすばらしさを感じてください。

 そして生きることのすばらしさを感じてください。

【評価:★★★★★】



投稿者:サークルKさん 投稿日:2004/5/11 12:52:09

  亡くなった鷺沢萌さんのプロフィールの「好きな映画」の欄に、『八月のクリスマス』があったのを見つけました。

 私はソウル駐在中だった1998年に現地で観ました。ハン・ソッキュの演技がとても良かった。シム・ウナもチャーミング。いまでもときどき、DVDで観ます。でも日本人の友人に薦めたら、反応はあまり芳しいものではありませんでした。やはり、感性が少し違うのかな。この映画を超える韓国映画は出ていないんじゃないでしょうか。

【評価:★★★★★】



投稿者:コヤンイさん 投稿日:2004/9/19 02:58:31

 最近深夜のテレビ放送で偶然観たばかりです。

 タイトルが少し甘ったるく感じて、「食わずぎらい」のまま、今まで素通りしていたのですが、この作品に出会えてよかった、と今は心から思っています。

 印象的なのは、ジョンウォンが物を水で洗うシーンがたくさん出てくることです。ネギ、店の硝子、食器、米、万年筆。これらは何を意味しているのでしょうか? あふれてしまいそうな動揺や、恐怖、悲しみ、憧憬を、冷たい水でさましているのでしょうか(そういえば、タリムがトイレで手を洗う場面もありました)。

 なんだか「死の準備」のために、自分を洗い清めているようにみえて、胸がつまってしまいました。残していく人たちのために、「笑顔の遺影」を撮ったのと同じ作業だったのかもしれませんね。

【評価:★★★★★】


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