第22回(2001)青龍賞
概要
韓国映画振興と大衆文化発展のために『スポーツ朝鮮』が毎年主催している青龍映画賞。2001年の第22回は朝鮮日報社、KBS、スターシックス貞洞が後援し、大象グループとAcrovistaの協賛により開催されます。授賞式は、12月12日(水)19:40からソウルの国立劇場で開かれ、KBS2テレビを通じて全国生中継されます。部門は、最優秀作品賞,監督賞,男女主演賞,男女助演賞,撮影賞,脚本賞,技術賞,新人監督賞,男女新人賞,人気スター賞,韓国映画最高興行賞,チョン・ヨンイル映画評論賞の15部門。
この賞の面白い所は、映画ファンのインターネット投票と専門家の意見を総合して候補作を決定し、すべての候補作を映画祭の形で上映、審査委員は映画祭で全候補作を見て審査し、その審査結果は新聞ですべて公表されるという点です。映画祭では直近の一年間のヒット作・話題作・問題作などが20作品前後上映されますので、ここ一年間の韓国映画を鑑賞するにはまたとない機会です。
また、青龍賞は韓国映画界の年末のお祭り。授賞式の日にはすべての映画撮影はお休みとなり、スターを含む映画関係者が勢ぞろいします。普段はなかなか生で見ることができない大スター達にも、青龍賞の授賞式に参加すれば簡単に出会うことができます。授賞式の日にソウルにいらっしゃる方は是非参加してみてください。
第22回青龍賞の対象作品は2000年12月から2001年11月24日までにロードショーされた韓国映画。インターネット投票は11月12日から28日まで。投票は青龍賞のサイト(韓国語)で行うことができます。
初版:2001/12/2
最新版:2001/12/25
|青龍映画賞候補対象作リスト|
各賞候補作品|
受賞作品/人物|
授賞式リポート|
第22回青龍映画賞候補作上映祭 スターシックス貞洞と一緒にする青龍映画フェスティバル
期間 |
2001年12月3日(月)〜9日(日) |
会場 |
スターシックス貞洞 |
上映作品 |
『MUSA−武士−』,『バンジージャンプする』,『春の日は過ぎゆく』
『パイラン』,『友へ/チング』,『ガン&トークス』
『新羅の月夜』,『ワニ&ジュナ 〜揺れる想い〜』,『インディアン・サマー』
『鳥肌』,『私にも妻がいたらいいのに』,『猟奇的な彼女』
『達磨よ、遊ぼう!』,『黒水仙』,『受取人不明』
『ワイキキ・ブラザース』,『花嫁はギャングスター』,『子猫をお願い』
『ベサメムーチョ』,『バタフライ』,『ティアーズ』
|
入場料 |
3,500ウォン |
前売り お問い合わせ |
TEL 02-2004-8000(スターシックス貞洞) |
インターネットによる合計134,097人の読者投票を総合した結果、各部門の候補作&候補者が決定されました。これらの候補作は、12月3日(月)〜9日(日)までスターシックス貞洞で開かれる「スターシックス貞洞と一緒にする青龍映画フェスティバル」で、9人の審査委員により審査されます。もちろん一般観客の鑑賞も可。
ここ一年間の話題作・ヒット作が一週間のうちに一挙に見られるお得な映画祭。期間中、ソウルにいらっしゃる方は是非足をのばしてみてください。
また上映祭期間中の12月5日(水)14:00からは昨年の青龍映画賞で男女主演賞と男女新人賞を受賞したイ・ミヨン、ソル・ギョング、ペ・ドゥナ、キム・レウォンがハンド・プリントをする特別行事も行われます。
● ちょっと解説
最多ノミネート作品は、最優秀作品賞・監督賞・主演男優賞・新人女優賞・新人男優賞と五部門でノミネートされた『友へ/チング』。『シュリ』の記録も『JSA』の記録もぶち破って韓国映画歴代最高動員記録を樹立したこの作品、今のところ賞取りレースでは目立った成果を挙げていませんが、青龍賞ではどうでしょうか? 来年三月の日本公開に向けて、12月には主演陣が来日しますが、いくつの賞を土産代わりに持ってきてくれるのか注目しましょう。
四部門でノミネートされたのは、東京国際映画祭でプレミア上映され来年の公開が予定されている『春の日は過ぎゆく』と、『ガン&トークス』の二作品。『春の日は過ぎゆく』は最優秀作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞に、『ガン&トークス』は監督賞・助演男優賞・助演女優賞・新人男優賞にノミネートされています。
『春の日は過ぎゆく』は、東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞したのに続き、釜山映画評論家協会賞と映画評論家協会賞でも最優秀作品賞を受賞と勢いに乗っています。今回も最優秀作品賞の最有力候補といって良いでしょう。今年の青龍賞は、さしずめ商業性の『友へ/チング』 VS 作品性の『春の日は過ぎゆく』といったところでしょうか。
『ガン&トークス』は、今年のみちのく国際ミステリー映画祭で『スパイ リ・チョルジン(→ SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男)』が上映され、その監督作品が初めて日本で紹介されたチャン・ジン監督の最新作。この作品で新人男優賞にノミネートされているウォンビンは、来年放送予定の日韓合作テレビ・ドラマ『フレンズ』でフカキョンと共演している若手タレント。この男優の名前は是非覚えておいてください。若い頃のキムタク似で格好いい&可愛いですよ。
三部門でノミネートされたのは、春にスマッシュヒットした『バンジージャンプする』、浅田次郎の短編小説『ラブ・レター』を映画化した『パイラン』、心理ミステリー『鳥肌』、中国ロケの歴史大作『MUSA−武士−』、現在ヒット中の恋愛映画『ワニ&ジュナ 〜揺れる想い〜』の五作品。
今年の夏場から秋口にかけて大ヒットしたヤクザを題材にしたコメディ作品群『新羅の月夜』、『花嫁はギャングスター』、『達磨よ、遊ぼう!』、そして主演のチョン・ジヒョン&チャ・テヒョンの溌剌とした演技が好印象だったラブ&コメ『猟奇的な彼女』は、各々1〜2部門でのノミネートに終わりました。やはり賞取りレースではコミカル系は不利なのでしょうか。
最優秀作品賞のうち、中国ロケを敢行し中国人スタッフも製作に携わった『MUSA−武士−』、韓日香共同出資作品『春の日は過ぎゆく』、浅田次郎の小説を映画化しセシリア・チャンが主演を演じた『パイラン』は、企画段階から世界、特にアジア市場を念頭において製作された作品です。『シュリ』以降、韓国映画の世界への輸出が顕著になっており、そのことが合作系の企画を誘発しているわけですが、今後もこういった韓国発の合作企画の数は増えていくことでしょう。そして、青龍賞の最優秀作品賞ノミネート作品のうち過半数がこういった作品によって占められているというのは、韓国映画の将来像を予想する上で極めて象徴的な出来事と言えます。
もう一つ、行定勲監督&窪塚洋介主演の『GO』が選定対象作リストの中に入っていることに注目してください。この映画は11月23日に韓国公開されたのですが、韓国のSTARMAXが出資しており、「韓国側が20%以上の資本出資をしている作品は日韓合作」という規定により、日韓合作とみなされリストの中に入りました。ただし、いずれの賞にもノミネートはされず。「日本では受賞ラッシュが予想される秀作『GO』なのに・・・」と思われる向きがあるかもしれませんが、これは、資本出資面では日韓共同製作であり、キム・ミン、ミョン・ゲナムが脇役出演しているといっても、実際のところこの作品を「日韓合作だ」と思って見ている韓国人はいないということの反映でしょう(ついでに言えば日本人観客も日韓合作であることをイメージして見ている人は極めて少数派だと思います)。とまれ、前述の『MUSA−武士−』、『春の日は過ぎゆく』、『パイラン』が韓国発の合作系の企画だとすると、『GO』は日本発の合作企画。将来、誰しもが認める日韓合作が日韓両国の映画賞でノミネートされる日もそう遠くはないのかもしれません。
監督賞候補は386世代が独占(チャン・ジンは更に若く1970年代生まれ)。主演男優賞候補は日本でもよく知られたビッグ・ネームがずらりと並んでいます。主演女優賞は、常連と若手が入り混じってノミネートされていますが、今年はやはり『春の日は過ぎゆく』のイ・ヨンエで決まりでしょう。
青龍賞授賞式が、12月12日にソウルの国立劇場で、イ・ビョンホンとキム・ヘスの司会のもと賑々しく執り行われました。今年は韓国映画の大ヒット作が記録的なまでに連発し、韓国映画の市場占有率も40%を超える絶好調ぶりでしたが、それを反映してか、この日の授賞式の全国視聴率は歴代最高の16.1%でした。
最優秀作品賞は、日本でも『八月のクリスマス』の監督として知られるホ・ジノの最新作『春の日は過ぎゆく』が受賞。前作『八月のクリスマス』と比べるとすんなり感情移入しにくい部分があるため、賛否両論ある本作ですが(しかし、見終わった後にじわじわ効いてくるのは前作と同じ)、これで、韓国内では釜山映画評論家協会賞と映画評論家協会賞に続いて三連続の最優秀作品賞受賞となりました。東京国際映画祭でも最優秀芸術貢献賞を受賞している本作品、2002年「春」には日本公開が予定されていますが、日本ではどのように受け入れられるでしょうか?
『春の日は過ぎゆく』と同様に釜山映画評論家協会賞と映画評論家協会賞に続いて三連続受賞となったのが、チェ・ミンシクの主演男優賞。今年の主演男優賞は『パイラン』のチェ・ミンシクと『友へ/チング』のユ・オソンの一騎打ちの様相でしたが(どちらも甲乙つけがたい名演でした)、まずはベテラン俳優の貫禄勝ちといったところでしょうか? 『パイラン』は他にもソン・ヘソンが監督賞を受賞しています。ちなみに、最優秀作品賞を受賞した『春の日は過ぎゆく』は韓日香共同出資作品、そして監督賞と主演男優賞を受賞した『パイラン』は日本の小説を香港女優の主演で映画化した作品。韓国映画の国際化の波は青龍賞の受賞結果にも如実に反映されてきています。
さて、今年最も大きな波乱だったのが主演女優賞。誰もが『春の日は過ぎゆく』のイ・ヨンエの受賞を予想/期待していましたが、授賞式でその名前がコールされたのは『鳥肌』のチャン・ジニョン。この受賞、一番驚いたのは他ならぬ本人だったようで、感動のあまり受賞発表直後はしばらく声にならず、司会のキム・ヘスに促されてやっと受賞の弁を語り始めましたが、その声を詰まらせながらしゃべる姿は周りの人々まで感動の嵐に巻き込みました。
助演賞はアン・ソンギとオ・ジヘというベテラン二人が手中にしました。『MUSA−武士−』と『ワイキキ・ブラザース』、両作品をご覧になればその受賞は誰もが納得でしょう。アン・ソンギは審査委員九名の満場一致での受賞。そして、受賞の弁では「新人賞も、人気賞も、主演男優賞もすべて受賞しているが、この助演男優賞だけはとっていなかったので本当にうれしい。次は功労賞をとらないとね」とウィットの効いたコメントを残し、会場の映画人から万雷の拍手を受けていました。一方のオ・ジヘは、『グリーンフィッシュ』と『八月のクリスマス』でハン・ソッキュの妹役を演じていた中堅女優です。
新人部門では、東京国際ファンタスティック映画祭2001で上映され好評を博した『バンジージャンプする』のキム・デスンが新人監督賞を、『猟奇的な彼女』でのコミック演技が冴えわたったチャ・テヒョンが新人男優賞を、そして日本公開作では『アタック・ザ・ガス・ステーション!』に出演していたイ・ヨウォンが新人女優賞を受賞しました。三人ともすでに次回作に取り掛かっており、更なる活躍が期待される逸材です。
今回の青龍賞で最多ノミネートされ『春の日は過ぎゆく』の対抗馬と目されていた『友へ/チング』は、結局、その年、最もヒットした韓国映画に贈られる韓国映画最高興行賞を受賞するにとどまりました。が、翌週に開催された第9回春史羅雲奎映画芸術祭では最優秀作品賞・監督賞・主演男優賞の主要三部門を制覇。青龍賞での鬱憤を晴らしています。
インターネットを通じた一般投票により決定される人気スター賞は、男優部門がイ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、チョン・ウソン、女優部門がキム・ヒソン、シン・ウンギョン、イ・ミヨンの合計六人が選ばれました。ちなみに、人気スター賞男優部門に選定されたイ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、チョン・ウソンの熱烈なファンたちは、会場の一角をブロックごとに占め、彼等の一挙手一投足に反応して、「イ・ビョンホン!イ・ビョンホン!」、「チャン・ドンゴン!チャン・ドンゴン!」、「チョウ・ウソン!チョウ・ウソン!」と対抗意識剥き出しの凄まじいまでのコール合戦を繰り広げ、華やかな授賞式に彩り(?)を添えてくれました。恐るべし韓国ミーハー軍団。
また、11月に雑誌誌上で本人の口から公式に「引退」が宣言されたシム・ウナですが、青龍賞会場のロビーでは彼女のファンたちが大型プラカードを持ち寄り「シム・ウナ、帰ってきて!」と彼女の映画界復帰を願ってアピールするという一幕もありました。
かくして21世紀最初の青龍賞は終了。スターをはじめとする映画人は各々の撮影現場に戻っていきました。
Text & Photo by 加藤祐子(ゆーこ)
2001/12/31受領
12月12日、奇しくもこの日ソウル入りした私は、青龍賞授賞式の会場、国立劇場に行くことができました。旅行計画の時点では、まさかこのような大イベントにかちあうとは思いもしなかったので、本当に運が良かったと思います。
以下は、イ・ビョンホンの一ファンの視点からのリポートです。
この日から急に冷え込んできたとのことでしたが、夕方からは雨まで降ってきて、ますます冷え込みが厳しくなっていました。18時頃に国立劇場に到着した時には、既に階段の赤絨毯に沿って入り待ちの人々が集まっていました。まずは席を確保できるかを確認しましたが、引換券を持っていないと入場券を入手できないとのこと。その引換券は無料で配られたものなのか、引換券を持っていても、時間ぎりぎりに来た人は満席だから、と入場を断られていました。
会場の国立劇場
とりあえず入り待ちの列に加わりましたが、高校生か大学生ばかりで、日本人でしかもどう見ても学生でない私は、周りの子達に質問されました。「ソウルに住んでいるんですか?」、「誰を待っているんですか?」などなど。
「イ・ビョンホンに会うために、日本からここまで来た」
と説明すると、驚き呆れていました。特によく話をしたグループは、国立劇場のすぐ近くの檀国大学生達で、私の聞き間違いでなければ、『バンジージャンプする』、『秘花 〜スジョンの愛〜』のイ・ウンジュと同級生とのことでした。
報道陣にもみくちゃにされるアン・ソンギ
開演時間が近づくにつれ、続々とスターが登場します。チョン・ウソン、イ・ヨンエ、キム・ヒソン、アン・ソンギ、チャ・スンウォン、シン・ハギュン、チャ・テヒョン・・・
しかしながら、あいにくの雨で、傘に邪魔されて写真を撮ることが困難でした。なんとか写真を撮ろうと赤絨毯に近づくたびに、「出てこないで下さい!」とスタッフに厳重に注意されてしまいました。
開演の19時40分が迫ってきたにもかかわらず、本命のイ・ビョンホンの姿は現れません。私をマークしていたスタッフに恐る恐る聞いてみたところ、司会を務めるので他の人よりも随分前に会場入りしたとのこと。彼の入り待ちには失敗しましたが、他の俳優さん、女優さんを間近で見ることができて感激でした。
左右をがっちりガードされ静々と入場するイ・ヨンエ
開演後、出待ちをすることに決めた私は、友人に愛想をつかされ、一人建物の中で終わりを待ちました。その間、場外に設置されているテレビで授賞式の一部始終が生放送されており、受賞者が発表されるたびに、場外にいた人達も歓声をあげ、臨場感あふれるひと時でした。
イ・ビョンホンは主演男優賞は逃しましたが、人気賞を受賞!! テレビの画面に写る顔も判別できないような小さな姿に向かって、「ビョンホン氏! おめでとうございます!!」と心の中で叫びました。
授賞式が終わった瞬間、扉の外で待っていた若い子達が一斉に中に入っていったので、私も便乗。なんとまだステージ上にビョンホンの姿がありました。人ごみを必死でかき分け、我を忘れて前進し、ビョンホンの前へ・・・
周りの人がサインをもらっていたので、私もお願いしました。
「イルボネソ ワッソヨ (日本から来ました)」
「クレヨ? (そうですか?) イルムン? (名前は?)」
「ユーコエヨ (ゆーこです)」
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が唯一の会話。でも、至近距離で、しかも初めて会う本物のビョンホンに気が遠くなりそうでした。
終演後、劇場のニ階で祝賀パーティが行われたようです。しかし、ビョンホンは途中で退出したらしく、間もなくニ階から降りてきました。この時、会えたら渡そうと思っていたプレゼントを持ってきていたことを思い出し、彼を追いかけて呼びとめ、無事に渡すことができました。この時点で、もう胸がいっぱいになり、他の俳優さんの出待ちをすることなど考えもせず、国立劇場を後にしたのでした。
ホテルに戻り、もう一度サインを見てみましたが、なんと私の名前が「ゆーこ」ではなく「りゅーこ」に・・・ でもいいです、ビョンホンさんが「りゅーこ」だと言うのなら、私は「りゅーこ」になります(笑)。
初級程度の韓国語しか分からない私ですが、ここぞとばかりに頑張って生のビョンホンさんに会うことができました。いや、青龍賞ってホントにいいもんですね!
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