HEAVEN ヘブン
題名 英題 原題 ハングル |
HEAVEN ヘブン Dream of a Warrior 天士夢 천사몽 |
製作年 |
2001 |
時間 |
108 |
製作 配給 投資
製作支援 |
ジュニパワー・ピクチャーズ 韓脈映画 ハンスグローバル・インベストメント トロス・ベンチャー・キャピタル 釜山映像委員会 |
監督 |
パク・ヒジュン |
出演 |
レオン・ライ パク・ウネ ユン・テヨン イ・ナヨン キム・ジム パク・ヨンノク チン・ボンジン ユン・ジュサン チャン・ドゥイ アン・ソックァン カン・ヒョンミ ノ・ジシム キム・ヤンウ |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video DVD |
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日本でも人気の香港明星レオン・ライ(黎明)が主役を演じるSFアクション&ロマンス。『銀杏のベッド』,『燃ゆる月』と同じく、時空を越えた男女の愛を描く。キム・マンジュン(1687〜1688)の手による韓国の古典小説『九雲夢』が元になっており、東洋的な「縁」の考え方が色濃く反映された作品。
毎晩見知らぬ女性の夢を見る特戦隊員のソンジン(レオン・ライ)。ある日、彼は世界的物理学者チャン・ベソン博士(チン・ボンジン)の娘で2年前の事件で失踪したナモン(パク・ウネ)を救出する作戦に投入され、ナモンが夢の女性であることに気づく。博士が発明した時空移動装置が実験途中でテロにあい、ナモンが前世の仮想空間ディルムン(Dilmoon)に連れ去られた事実を知ったソンジンは、彼女を救出するために、前世空間ディルムンに向かう。そしてソンジンは、そこで自分の前世がディルムンの戦士ディーンであり、ナモンの前世である王女ロジェ(パク・ウネ)と身分を越えた恋をしていたことを知る。一方、ディルムンの女戦士ショショ(イ・ナヨン)は同僚のマーティン(現世では特戦隊のジョンウ:キム・ジム)を愛していたが、マーティンはショショを受け入れることができないでいた。そして、そこへロジェと権力を得るためにファクスト族に魂を売ったシャニル(現世のイ・セシン:ユン・テヨン)が侵略してくる。
8年に及ぶ準備期間を経た製作費38億ウォンの大作で、韓国映画としては最高水準のCGや、世界的なスターであるレオン・ライと新世代若手スターを起用したチャンレンジ精神は一定の評価を受けたが、完成度の低さはどうしようもなく、韓国での興行は散々で、公開から一週間と持たずに上映打ち切りにする映画館が続出した。
韓国ではCMにも出演しているレオン・ライが初めて韓国映画に出演。韓国語と英語の主題歌も彼が歌う。撮影では韓国語が得意なレオンが生声で収録していたが、発音が変だったため、韓国では声優によるアフレコ版が公開された。
ユン・テヨン(27)は、現世ではイ・セシンを、前世空間ディルムンでは戦士シャニルを演じる。現世ではジョンウを、ディルムンでは戦士マーティンを演じるキム・ジムは、グラフィック・デザイナー出身の俳優で映画出演は『イルマーレ』に続いて二作品目。1979年2月22日生まれのイ・ナヨンは、日本映画『英二』に出演経験があり、ドラマや司会などでお馴染みのタレント。韓国ではCMクィーン的存在だが、韓国映画に出演するのはこれが初めて。ちなみに、彼女は『HEAVEN ヘブン』の撮影後、イギリスのグループ "RIALTO" のミュージック・ビデオに『カット・ランズ・ディープ』の David McInnis と共に出演している。なお、このMVの演出は『カット・ランズ・ディープ』の監督イ・ジェハンが担当。1978年2月21日生まれのパク・ウネは、映画『チャン』,『REC【レック】』の他、SBSドラマ『LAアリラン』、MBCドラマ『六人兄弟』などに出演している女優。
これがデビュー作となるパク・ヒジュン(Juny PARK)監督は、ソウル・フィルム・アカデミーで演出を専攻し、ミュージカルや演劇の演出をした後、シム・ヒョンネの『ドラゴン・トゥカ』や『怪獣大決戦ヤンガリー』の製作に参加した人物。ジュニパワー・ピクチャーズを設立して製作した本作では、監督と脚本をこなした。
映画製作費の個人投資家をネット上で募集したところ、3億3,000万ウォンもの資金調達に成功し話題となった。
初版:2001/3/21
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投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2002/2/28 16:36:23
韓国版VTRにて鑑賞。
まさに「カルト」の名にふさわしい奇っ怪作であり、製作者の熱意に満ち溢れた、魅力ある失敗作。「へんてこりん」という形容がまさにぴったりの映画で、演出、編集、音楽、主演と、全編「後ろから、ひざカックン」され続ける内容は、この手の「おかしな映画」好きにはたまらないだろう。
まず、主役のソンジン演じるレオン・ライの演技が、あまりにも変だ。言葉の違いや、業界内ステイタスの問題もあってか、極力、韓国語の台詞を排したのはよいとして、まかり間違えば「危ない人」寸前にしか見えない呆けた表情を見せ続けるレオン・ライの演技は、彼のファンに複雑な気持ちを抱かせるに違いない。
しかし、その演技が本作品のカルトな魅力に極めて大きく貢献しているのもまた事実である。もっとも、それは演出上の計算であるのか、成り行き上そうなってしまったのかは、全く不明。
ヒロインの一人、ショショを演じるイ・ナヨンは、鋭利な雰囲気を漂わせる美人女優で、日本の特撮物に出れば絶対人気が出るだろう。ロジェ役のパク・ウネは悲劇のヒロインをまじめに演じているが、どういう訳か妙に間が抜けて見えるため、作品のおかしなテイストを助長している。
レオン・ライの恋敵、マーティンを演じるキム・ジムは、あまりにもキャラクターが貧弱で、白く染めた髪形がゴワゴワに固まっていることしか印象に残らない。
本編の編集は、かなり無理やり尺合わせをしたらしく、リズム&タイミングとも非常に荒いが、これがまた独特の味わいを醸し出し、形容しがたいズレた笑いを生み出している。
物語自体は、なんでもありの闇鍋状態で、1980年代末期の『週刊少年ジャンプ』に慣れ親しんだ世代なら、逆に親しみやすい強引さに満ち溢れた内容だ。ラストに向けての展開は唐突だが、哀愁をおびたテーマ曲が感動を盛り上げるためか、観終わった後、珍妙ながらも、なかなか悪くない余韻を残すのが不思議。
美術デザインを含んだ意味での世界観は、これまた1980年代後半に流行った『マッドマックス』系の世紀末テイスト。韓国では珍しい、一貫してバタ臭いイメージの物になっているが、30代から40代にかけての日本の方々にとってはピープロのTV特撮物(『宇宙猿人ゴリ』や『快傑ライオン丸』など)か、初期東映特撮物(初代『仮面ライダー』や『ジャイアントロボ』)など古き良き時代の感覚に近い感じ、といった方が分かりやすいだろう。
また、韓国におけるSF物は、現時点ではファンタジーとの境界が、あやふやな作品が多いが、この『HEAVEN ヘブン』は「時空移動装置(見た目は遊園地のライド系そっくり)」というハードウェアを小道具に使うことで、多少はそういったジャンル間の分離に成功している。
今回鑑賞した102分版とは別に、40分以上長いインターナショナル版も存在するらしいが、この『HEAVEN ヘブン』に興味をもたれた方々は、まずは短いバージョンを観てほしい。この映画のカルトな魅力は、その強引な編集が生み出す妙なリズムに負うところが大きいからだ。
出来れば『怪獣大決戦ヤンガリー』と二本立てで上映して欲しかった怪作である。評価は、変則的な意味で星四つとしたい。
【評価:★★★★】
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