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ワイキキ・ブラザース


画像提供:ドラゴンキッカー

題名
英題
ハングル
ワイキキ・ブラザース
Waikiki Brothers
와이키키 브라더스
製作年 2001
時間 109(韓国公開版)
105(映画祭版)
製作
提供
 
ミョン・フィルム
CJエンターテインメント
KTBネットワーク
監督 イム・スルレ
出演 イ・オル
ファン・ジョンミン
パク・ウォンサン
オ・グァンノク
ムン・ヘウォン
オ・ジヘ
キム・ヨンス
リュ・スンボム
チョン・デヨン
ハン・ギジュン
キム・ジョンオン
シン・ヒョンジョン
イ・ミノ
イ・サンジク
パク・ヘイル
日本版
Video
DVD
なし

 観光地のナイト・クラブで演奏する三流バンドのメンバーが主人公で、地方の小都市を舞台に、30代中盤に差し掛かっていながら夢と青春を追いつづける男達の挫折と希望を描く。1980年代以降の珠玉のヒット曲が挿入されており、これらの曲を初めて聴く外国人でもノスタルジックな思いに浸れる。なお、題名の「ワイキキ・ブラザース」は主人公たちのバンド名で、彼らが仕事をするワイキキホテル(ハワイのワイキキ・ビーチとは何の関係もない)は、忠清北道の内陸部にある温泉地、水安堡(スアンボ)に実在する。

 ソンウ(イ・オル)は、高校生の頃からグループ・サウンズにはまりずっと音楽を続けているが、今は地方を転々とする三流バンドのリーダーだ。不況で仕事の口が減る中、彼はメンバー達と一緒に故郷の水安堡(スアンボ)にあるワイキキ・ホテルのナイト・クラブで仕事をすることになる。しかし、サックス奏者ヒョング(オ・グァンノク)は、不安定な生活に見切りをつけて脱退してしまう。また、ソンウは、故郷で高校時代に一緒にバンド「ワイキキ・ブラザース」を組んでいた旧友や音楽の先生、それに初恋の人イニ(オ・ジヘ)と再会するが、彼等は既に音楽をやめており、夢もなく生活臭ただよう生き方をしていた。一方、バンドのメンバーであるガンス(ファン・ジョンミン)とジョンソク(パク・ウォンサン)の二人は、女性問題がこじれて争った挙句ガンスがバンドを辞めてしまう。そして、ソンウはこのままバンド生活を続けていくかどうか悩むようになる。

 『三人友達』のイム・スルレ監督第二作。脚本も彼女が担当。監督は本作で「現実が磨耗してしまった純粋な夢を描いてみたかった」という。夢を捨てきれない人々の挫折を描いているが、ラスト・シーンには希望が感じられる。

 製作はイ・ウン。撮影監督は、イム・スルレの短編『雨の中の散歩』の撮影部ファーストや『ダンスダンス』の撮影を担当したチェ・ジヨル。照明はイム・ジェヨン。美術はオ・サンマン。音楽はチェ・スンシクとキム・ミヌ。

 純製作費13億ウォンの低予算映画で、いわゆるスターは出演していない。

 主人公ソンウを演じた演劇出身の無名俳優イ・オル(1964年生まれ、キョンウォン専門大学卒)の演技が、『ペパーミント・キャンディー』ソル・ギョングを髣髴とさせると評判。彼は『魔術の店』、『カフェ共和国』、『リア王』など10本あまりの演劇に出演しているほか、映画では『49日の男』(1994)と『祝祭』(1996)に端役出演した経験がある。ファン・ジョンミン(1970年生まれ、ソウル芸術専門大学演劇科卒)とハン・ギジュン(39)は、8つの映画社が共同で行った「チャレンジ2000−史上最大のオーディション」でキャスティングされた。1970年生まれのパク・ウォンサンも演劇俳優。彼は『三人友達』『キリマンジャロ』にも出演している。ワイキキ・ホテルにあるナイト・クラブのウェイターで、本作中唯一明るいキャラクターのギテを演じたリュ・スンボムの個性的な演技が好評。彼は、『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』リュ・スンワン監督の弟で、同監督の『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』とインターネット・ムーヴィー『たちまわLee』にも出演している。日本では『八月のクリスマス』『グリーンフィッシュ』でのハン・ソッキュの妹役、『スプリング・イン・ホームタウン』などでお馴染みのオ・ジヘ(1968年生まれ、中央大学演劇映画科卒)が、高校生時代にバンドのボーカルをやっていて主人公ソンウの憧れの君だったが、今では夢破れて野菜売りをしているイニを演じる。俳優オ・ヒョンギョンを父に、同じく俳優のユン・ソジョンを母にもっていたため、小さい頃から女優が夢だったという彼女は、1991年に演劇『タラジの饗宴』でデビューした後、『地下鉄一号線』、『蜚言所(ピオンソ)』(1997)、『女の朝』などの演劇で腕を磨いた中堅女優。演劇『蜚言所(ピオンソ)』では百想芸術大賞新人賞を受賞している。本作には、「チャレンジ2000−史上最大のオーディション」でキャスティングされたが、撮影中は妊娠三ヶ月だったという。ソンウの高校時代の音楽の先生で今ではアル中になってしまったキャラクターを演じたキム・ヨンスは、民衆写真作家協会会長で、『美しき青年 全泰壱』『カンウォンドの恋』『秘花 〜スジョンの愛〜』のスチール写真やポスター写真を撮影している人物。監督の前作『三人友達』にも出演している。

 異色の映画予告編が話題に。予告編には、この映画を見て感激したソン・ガンホシン・ハギュン、キム・ジャンフン、パク・チャヌク監督に対するインタビューが収録されており、彼等がこの映画の見所を語っている。また、公開に前後して、歌手のキム・ジャンフンやイ・ムンセ(李文世)らが鑑賞記をメディアに発表。

 サントラ・アルバムの発売時には、主演俳優等が劇中で歌った歌を披露する記念コンサートが開かれ、高校生時代の主人公たちを演じたバンドも参加。サントラには、映画に登場する合計33曲のほか、劇中の名台詞やメイキング・フィルムなどを収録したミュージック・ビデオもボーナスで付いている。

 2001年4月の全州国際映画祭でプレミア上映されたが、それ以降10月26日の韓国公開まで、6ヶ月の長きに渡ってソウルと地方で「史上最大のリレイ試写会」を敢行。2万5千人もの観客を試写に招待し、口コミによるヒットを狙う戦略に出たが、公開後の興行成績は芳しくなかった。ちなみに、韓国では封切り日の一週間から数日前に一般試写が行われるのが一般的で、このような長期的かつ大規模な試写は前例がない。

 公開後は、当時韓国で大ヒットしていた極道コミックものに押されて、苦戦の連続だったが、大部分の映画館で上映が終了した後も、ファンの声援に助けられてシネコア劇場で追加上映(製作のミョン・フィルムが映画館をレンタルした)、その後も中央シネマ、スカラ座と劇場を転々としながら長期上映された。こういう形式での長期上映は韓国では異例のこと。

 第2回(2001)全州国際映画祭オープニング作品。第20回(2001)バンクーバー国際映画祭、第25回(2001)サンパウロ国際映画祭、第2回TOKYO FILMeX 2001コンペティション部門、第21回(2001)ハワイ国際映画祭、第45回(2001)ロンドン国際映画祭、カルカッタ映画祭、第6回(2001)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門、第16回(2002)フリブール国際映画祭コンペ部門、第15回(2002)シンガポール国際映画祭、あいち国際女性映画祭2002招待作品。

 第2回(2001)釜山映画評論家協会賞助演女優賞(オ・ジヘ)、第6回(2001)釜山国際映画祭アジア映画振興機構(NETPAC)賞Special Mention、第21回(2001)映画評論家協会賞監督賞(イム・スルレ)、第22回(2001)青龍賞助演女優賞(オ・ジヘ)・技術賞(照明:イム・ジェヨン)、第9回(2001)春史羅雲奎映画芸術祭脚本賞(イム・スルレ)、第38回(2002)百想芸術大賞作品賞、第1回(2002)MBC映画賞男優助演賞(ファン・ジョンミン)・女優助演賞(オ・ジヘ)受賞作品。

 TOKYO FILMeXでは上映時間105分の映画祭バージョンで上映。あいち国際女性映画祭2002では『ワイキキ・ブラザーズ』という題名で上映。

初版:2001
最新版:2002/9/10



投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2001/10/28 12:42:00

 一見、コメディ&音楽映画風のポスターとチラシだが、内容は極端に正反対の映画。

 夢を捨てきれず、その断片を追い続ける男達の挫折と哀しみを、あまりにも暗く、あまりにも重く、現実感溢れる描写で静かに描いてゆく。1カット、1カット、演出の丁寧さが滲み出ており、地方で生きることの日常感覚が抜群である。

 その感覚的リアリズムは、主人公たちと同世代の韓国人であれば、皆、絶望感を胸に突きつけられるのではないか、と思えるほどだ。だが、それをやりすぎたのか、監督の狙いで外したのか、あまりにも淡々とし過ぎ、切実過ぎで、笑うべきところで全く笑えない、という皮肉な結果も生んでしまっている。

 『ペパーミント・キャンディー』の結末が、絶望を感動に昇華させたとするならば、本作品は絶望の縁で観客を見捨ててしまったような終わりかたをする。私個人は、あまりにもやり切れなくて、なんだか厭になると共に、非常に退屈な作品ではあった。

 しかし、この映画で描かれたテーマは、キム・ヨンサム政権以降の希望と自由化の波に乗り損なった世代の本音が良く出ているようで、30代後半の人々が自分の人生を振り返るという意味で、観てみるのも悪くない映画である。

【評価:★★★】


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