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テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる


画像提供:インディー・ストーリー
(以下、同じ)


題名
 
 
英題
 
 
原題
 
 
ハングル
 
 
テハンノで売春していて
 バラバラ殺人にあった
 女子高生、まだテハンノにいる
Being
Teenage Hooker Became
 Killing Machine in DaeHakRoh
大学路で売春していて
 バラバラ殺人にあった
 女子高校生、まだ大学路にいる
대학로에서 매춘하다가
 토막살해 당한
 여고생 아직 대학로에 있다
製作年 2000
時間 60
製作
共同配給


配給支援
火鉢の周りの子供達
インディー・ストーリー
Intz.com
東崇アートセンター
映画振興委員会
監督 ナム・ギウン
出演 イ・ソユン
キム・デトン
ファン・ピルス
ペ・スベク
キム・ホギョム
ヤン・ジュニョク
ユ・ジュンジャ
日本版
Video
DVD
字幕版Video
DVD

 『鉄男 TETSUO』ライクな超低予算インディペンデント・デジタル・パロディ・カルト・ムービー。製作費はたったの800万ウォン。『鉄男 TETSUO』の他にも『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』、『AKIRA』、『ニキータ』などのパロディが見られる。売春をする女子高校生を通じて知識階級や社会の偽善を風刺した作品。長い長い題名は恐らく韓国映画史上最長だろう。

 男どもの性欲を見極めることが出来る特殊なサングラスを使って、夜な夜なテハンノ(大学路:ソウルの地名)で売春をする女子高校生(イ・ソユン)。ある日、彼女は売春をしているところを、担任の先生(キム・デトン)に見つかってしまうが、サングラスで先生の性欲を知って、逆に5万ウォンで先生と関係を持つ。そして、担任教師の子供を妊娠した女子高校生は彼との幸福な将来を夢見る。しかし、教え子の妊娠を知った担任教師は殺し屋として、ほくろ3兄弟(ペ・スベク,キム・ホギョム,ヤン・ジュニョク)を差し向け、彼等は彼女を殴り倒してノコギリでバラバラに切り刻んでしまう。そんな一部始終を見ていた正体不明の男が一人。彼は女子高校生の死体を袋に入れていずこかへと去って行く。そして、謎の老婆(ユ・ジュンジャ)が彼女の体をミシン(!)で縫い、女子高校生は殺人マシンとして蘇る。

 コケティッシュでありながら妖艶さも併せ持つ不思議な女子高校生を演じたイ・ソユンは、1980年大邱生まれでテギョン大学演劇映画科在学中の学生。独特な声色が怪しい先生役を演じたキム・デトンは1966年生まれで演劇俳優として10年以上活躍している人物。

 監督のナム・ギウン(南紀雄)は、1968年に慶尚北道醴泉に生まれ、高校時代は演劇俳優として活躍。大学進学に失敗した後は、オペラ公演の助演出、商業映画『雨降る日の水彩画2 −ケヤキの丘−』(1993,クァク・ジェヨン監督)の助監督、ウェイターなどをしていた人物。1994年に『バルプルギスの祝祭』(8mm Video,60min)を製作し、1999年にはSFファンタジー『鋼鉄』(8mm Video,30min)を発表。『鋼鉄』は2000年の釜山アジア短編映画祭でビデオ・コンペ部門の最優秀賞にあたるウノ賞を受賞している。なお、『テハンノで売春していて〜』は元々『鋼鉄』の連作として企画された作品。

 企画・製作の「火鉢の周りの子供達」は、1999年に既存の商業映画製作システムとは異なる道を模索するために作られた実験プロジェクト・チーム。監督のナム・ギウンが演出・脚本・撮影・音楽・編集を兼ねる。撮影は、ソニーの6mmデジタル・ビデオカメラVX1000で行われているが、軽量のデジタル・カメラならではのカメラ・ワークが見られる。

 先生と女子高校生が商談成立した後にダンスを踊るシーンで、BGMとしてかかっているイカシた曲は、ハックルベリーフィンの『Teacher Says』。なお、この曲を歌っているボーカルのナム・サンアは映画『疾走』に主演している。

 監督いわく、ラストのキャノン砲はキム・ギヨン監督の『異魚島』での「衝撃のあのシーン」にインスパイアされたものだとか。

 インディ・フォーラム2000に出品され、深夜上映全回売りきれという好評を博した後、第4回(2000)富川国際ファンタスティック映画祭「制限区域」部門、ソウル・デジタル映画祭 RESFEST 2000 SEOUL などにも出品され、ここでも話題沸騰。第26回(2000)韓国独立短編映画祭「新しい挑戦」部門では優秀賞を受賞する。その後、インディーズ映画を専門に配給する会社インディー・ストーリーとインディーズのインキュベーションをするネット・ベンチャー企業Intz.com(この会社は、『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』『唐辛子を干す』のインキュベーションもしている)、それに映画振興委員会のデジタル長編映画配給支援事業(キネコやマーケティング費用の支援)の支援を受けて、35mmプリントにキネコされ、2000年12月30日にアート映画を専門に上映するハイパーテック・ナダで単館公開された。ちなみに、公開前のレイティング審査では一部のエログロ描写が問題視され、当初は等級保留(上映できない)扱いになったが、再審で「18歳以上鑑賞可」のレイティングが付き、無事公開された。

 第15回(2001)シンガポール国際映画祭アジア・パノラマ部門、第8回(2001)シネマコリア上映会、第20回(2001)バンクーバー国際映画祭「龍虎(Dragon and Tigers)」部門、第45回(2001)ロンドン国際映画祭、第31回(2002)ロッテルダム国際映画祭"Critic's Choice"部門、2002年フィラデルフィア映画祭「ニュー・コリアン・シネマ」部門、第28回(2002)シアトル国際映画祭Midnight部門、第11回(2002)ブリスベーン映画祭、第51回(2002)メルボルン映画祭招待作品。

 第20回(2001)バンクーバー国際映画祭「龍虎」部門 Special Mention 受賞作品。

 日本での公開時のレイティングはR-15。

初版:2001/1/2
最新版:2003/2/27


【ソチョンの鑑賞ノート】

2001年1月28日執筆
2001年1月31日加筆訂正
2001年8月13日再度加筆訂正

 2001年1月14日にハイパーテック・ナダで鑑賞。面白かったので、翌日もう一度鑑賞。

 なんともぶっ飛んだストーリーですが、抜群に面白い作品でした。

 『ニキータ』、『鉄男 TETSUO』、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』など色々な映画のパロディがふんだんに盛り込まれていて笑わせてくれる上に、長廻しの独白シーンとキレのいい編集のハーモニーが観客を飽きさせずにグイグイ引っ張って行ってくれます。また、音楽が秀逸で、ややもすると重たくなりがちなセックス・シーンも、最初の客とのカラミはコミカルな音楽で軽妙に、また先生とのシーンは(妊娠するわけですから)オペラを使って荘厳に(監督はオペラ演出の経験者)、と全くいやらしさを感じさせない演出ぶり。他にも先生と女子高校生が5万ウォンで売春の商談成立した後に2人してダンスを踊るのですが、その時BGMでかかっている歌がめちゃくちゃイケテますし、オープニングとエンディングでかかるけだるい音楽もまたよい。ちなみに、オープニングではエンド・クレジットが逆さまに降りてきて「えっ!? 始まったと思ったらもう終わり?」と観客をびっくりさせるという趣向(=遊び心)もあります。

 上映している映画館では、チラシのほかに厚紙で作った女子高校生着せ替えセット(!)も置いてあり、配給サイドの遊び心も、また十分。

 加えて、主演の女子高校生も先生も、カルト・ムービーに必須のイッチャッテル演技、というより独特の雰囲気が映画にマッチしていてベリーグッド!

 日本のカルト・ムービーには、「カルト」を通り越して「シュール」な内容になっていて「ついて行けないなぁ」と思える作品が結構あるのですが(私『発狂する唇』とかよく分かりません)、その点『テハンノで売春していて〜』は、滅茶苦茶なストーリーではあるものの、落とし所が「なるほど」と思える分、見やすい作品に仕上がっています。例えば、ラストの先生と女子高校生が対決するシーンでは、当初「担任」の先生には逆らえなかった女子高校生が、先生が「校長先生」に昇格したことを告げられると、復活して股間の銃(!)をぶっ放なすのですが、これなど韓国における担任の教師の絶対的な地位が反映されているようで、そこはかとなく社会性があるのですね。

 バイヤーの目につく機会が少ないせいか、韓国のインディーズものは、なかなか日本に入ってきませんが、中途半端な長編劇映画より、インディーズのほうが断然面白いです。2000年の TOKYO FILMeX でビデオ上映された『見すぎた男』もヒッチコックの名作『裏窓』をパロディにした作品で、大好評だったと聞いていますし。


【コリアン・インディーズが面白い!】

 さて、いわゆる商業映画とは別にコリアン・インディーズも面白いことになってきている訳ですが、その理由は何でしょうか? そういう映画を撮る監督が出現してきたという至極当然な理由とは別に3つの制度的理由が挙げられます。

  1. 1990年代に入ってから激増した映画祭
  2. インディーズを支援する制度の拡充
  3. アート系ミニシアターの登場
 映画祭には様々な機能がありますが、その中の一つに「知られざる作品を発掘する」というのがあります。韓国には現在3つの大きな国際映画祭がありますが、1996年から始まった釜山国際映画祭には「ワイド・アングル」というインディーズ系の短編とドキュメンタリーを上映する部門がありますし、1997年から始まった富川国際ファンタスティック映画祭は、それまで韓国では一般的でなかったホラー系・カルト系の映画を紹介するという明確な目的を持っています(韓国では1998年と2000年の夏にホラー系の映画が量産されちょっとしたブームになりましたが、それは富川ファンタと無関係ではない)。そして2000年から始まった全州国際映画祭はアジアのインディーズ、オルタナティブ映画、デジタル映画などの紹介に力を入れる映画祭と、いずれもインディーズをサポートする機能を持っています。

 韓国のインディーズが国内の国際映画祭で紹介されたのがきっかけで、一般公開されたのは、1998年の釜山国際映画祭に出品されて話題となり翌1999年に公開された『ハウドゥン(夏雨燈)』が第一号ですが、その後も同じく1998年の釜山国際映画祭で上映されてから1999年末に公開された『蜂の飛行』(2000年のTOKYO FILMeX で上映)、2000年の全州国際映画祭で大きな話題となり同年公開された『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』(2000年のTOKYO FILMeX で上映)、そして、2000年の富川ファンタでも上映され一般公開に繋がった『テハンノで売春していて〜』などが、映画祭で上映され、大勢の観客の目に触れることによって一般公開されるに至っています。

 1990年代に入り、韓国では大小様々な映画祭がスタートしていますが、それまでは一般に見る機会が少なかったインディーズ作品が、これらの映画祭を通して多くの人の目に触れるようになったこと、とりわけ国際映画祭を通して海外の映画祭のディレクター達の目に触れる機会が飛躍的に増えたことは、韓国インディーズにとって大きなプラスとなっている事は間違いありません。

 さて、映画祭を通じて面白い作品が発掘されました。では、即公開!となるかというと話はそう簡単ではありません。劇場公開のためには、16mmを35mmにブロー・アップしたり、ビデオをフィルムにキネコしたりする必要がありますが、それにはかなりの費用がかかります。また、作品を上映してくれる映画館の確保や配給・宣伝業務も必要になってきます。ちなみに、我が日本にも数多くの優秀なインディーズ作品はあるのですが、劇場公開のための費用や作業を負担してくれる会社があまりないために多くの作品は埋もれたままになっているのが現状です。その点、韓国はどうでしょうか? 状況は日本とそれ程大きくは異なりませんが、『テハンノで売春していて〜』の例に見られるように、ここ数年、インディーズ作品の配給を目的とした会社(ex.インディー・ストーリー)や、秀作インディーズの劇場公開を支援する企業(ex. Intz.com)が出現したり、映画振興委員会がデジタル映画の配給支援事業を開始したりと、官民揃っての支援が充実してきているのは見逃せない動きです。インディー・ストーリーにしても Intz.com にしても最近出来た若い会社ですから、先々どうなるかは分かりませんが、このままインディーズの配給支援を続けて行くのだとしたら、それは、コリアン・インディーズの育成に多大な貢献をすることになるでしょう。プロの映画界に身を置いていなくても、良い作品さえ作れば、誰でも自分の作品が公開される可能性が出てくるわけですから。

 インディーズ公開の最後の関門は、それを上映してくれる映画館を探すことです。韓国では映画の公開は全国一斉が原則で、日本のミニシアターに該当するような映画館は数が限られており、単館公開は極めて稀です。アート系映画の上映を標榜している映画館(ex.コア・アートホール,東崇シネマテーク)はありますが、これらの映画館も年中アート映画を上映している訳ではなく、普通の興行作品を上映していることもしばしばです。また古典映画専門館をうたってオープンした映画館(ex.オズ)が1年ももたずに普通のロードショー館になってしまったという例もあり、こと程さように韓国でのアート映画、インディーズ映画の公開は商業的に厳しい状況です。しかし、そんな中で、2000年にはアート系の映画を専門に上映するハイパーテック・ナダやアートキューブ光化門がオープンするなど新しい動きが出てきました。ハイパーテック・ナダは『テハンノで売春していて〜』を上映(共同配給もしている)した他、北野武特集・台湾ニューウェーブ特集・塚本晋也特集などを企画。『スプリング・イン・ホームタウン』イ・グァンモ監督が運営しているアートキューブ光化門は2000年12月に開館したばかりですが、こちらも芸術映画やインディーズの上映に力を入れる方針で、2月には Intz.com がインキュベートした女性監督によるセミ・ドキュメンタリー『唐辛子を干す』(山形国際ドキュメンタリー映画祭 '99で『天日干し赤唐辛子を作る』という題名で上映)を公開予定。他にもアート・ソンジェ・センターというホールで盛んに小規模な映画祭や企画上映会が開催されるようになってきました(2001年1月には小津安二郎回顧上映が開かれた)。

 インディーズを支援する会社の出現や公的制度の充実はつい最近始まったばかりですし、インディーズを上映する映画館ハイパーテック・ナダやアートキューブ光化門ができたのは2000年のことですので、これからどうなっていくか、その展開には予断を許しませんが(商業的に成り立たず撤退ということも十分ありうる)、映画祭を通じて発掘されたインディーズの秀作が、どんどん公開されるようになっていけば、それは(芸術度においてもカルト度においても)韓国映画に今までにないバラエティさを付け加える事になり、また収益最優先の商業映画にも良い刺激になるに違いありません。

 コリアン・ムービーは、今後インディーズにも注目です。



『テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』感想集
第8回シネマコリア上映会のアンケートより
  • 『鉄男 TETSUO』の世界観はドライ。この映画はウエット。復讐劇なんでしょうが、単純で変に意味を持たせないのがいい。夜の街、密室、大量の血が揃えば、誰でもこんな映画を撮れると錯覚させてくれるところもいい(撮れるわけないよね)。(40代,男性)

    【評価:★★★★★】

  • 笑えたし、やられっぱなしじゃないところが良かった。(30代,女性)

    【評価:★★★★★】

  • オモシロイ! 日本じゃなかなか今までなかった感じ。もっと、こういうの出来て欲しい!!(10代,女性)

    【評価:★★★★★】

  • 感想なし。(30代,男性)

    【評価:★★★★★】

  • 面白い! 普通の映画の発想を覆していて痛快!(20代,男性)

    【評価:★★★★】

  • インディーズといえどあなどれないなと感じました。(30代,男性)

    【評価:★★★★】

  • 荒削りだがなかなか面白かった。(30代,男性)

    【評価:★★★★】

  • 色々ごった煮的なところが笑えた。(30代,男性)

    【評価:★★★★】

  • 辛辣で残酷なところに妙な共感を覚えました。スッキリです。(20代,女性)

    【評価:★★★★】

  • 感想なし。(20代,男性)

    【評価:★★★★】

  • 感想なし。(30代,男性)

    【評価:★★★★】

  • 『ニキータ』のパクリを初めて見た。(40代,男性)

    【評価:★★★】

  • いかにもインディーズという感じ。でも、ありきたりな感じがした。(30代,男性)

    【評価:★★★】

  • オペラやPOPSなど、音楽の使い方はうまい。『ニキータ』のような途中のストーリー、笑えました。(30代,女性)

    【評価:★★★】

  • もろインディーズって感じ。(30代,女性)

    【評価:★★★】

  • 感想なし。(50代,男性)

    【評価:★★★】

  • 感想なし。(20代,男性)

    【評価:★★★】

  • 感想なし。(40代,女性)

    【評価:★★★】

  • 感想なし。(50代,女性)

    【評価:★★★】

  • 当初、メッセージ性のあるものと思っていたが、韓国版C級スプラッター・ホラーだったのですね。まぁ、それなりに楽しめました。(50代,男性)

    【評価:★★】

  • 感想なし。(30代,女性)

    【評価:★★】

  • 感想なし。(50代,男性)

    【評価:★★】

  • スゴイですねー。先生役の変な役者さんは誰ですか? メジャーな作品にも出ていますか?(30代,男性)

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