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花嫁はギャングスター


題名
英題
原題
ハングル
花嫁はギャングスター
My Wife is a Gangster
組暴の女房
조폭마누라
製作年 2001
時間 110
製作
提供
配給
ヒョンジン・シネマ
ソ・セウォン プロダクション
コリア・ピクチャーズ
監督 チョ・ジンギュ
出演 シン・ウンギョン
パク・サンミョン
アン・ジェモ
キム・イングォン
チャン・セジン
シム・ウォンチョル
ヨン・ジョンフン
チェ・ウンジュ
ミョン・ゲナム
イ・ジス
キム・グベク
チョン・ジュファン
カン・ソンピル
チェ・ワンスン
ファン・テグァン
イ・ウンギョン
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 暴力団を統率する女ボスの波瀾万丈な結婚生活を描いたB級アクション・コメディ。セックス&バイオレンス、ドタバタ・コメディ、メロ・ドラマとなんでもありの福袋のような映画。韓国映画史上初めて、やくざアクション映画で女優が主演をする。

 自分の腕一本で組織のナンバー2にまでのし上がったチャ・ウンジン(シン・ウンギョン)は、子分から「兄貴(ヒョンニム)」と呼ばれる女ヤクザ。彼女は、幼くして離れ離れになった姉(イ・ウンギョン)と劇的な再会を果たすが、姉は既に胃癌の末期状態だった。死を目前にした姉の願いはウンジンが幸せな家庭を作って平凡な生活を送ること・・・ それを知ったウンジンは、58回ものお見合いにことごとく失敗した町役場の職員カン・スイル(パク・サンミョン)と大急ぎで結婚する。善良な小市民スイルは、自分の妻になる女性が背中に刺青を持つ極道者とも知らずに、幸せな新婚生活を夢見る。しかし、待ち構えていたのは妻の暴力と罵詈雑言だった。そして妊娠大作戦に突入するウンジン。そんな折、ウンジンが新築しているビルの利権を我が物にしようと対抗勢力の白鮫派が動き始める。

 2001年には大ヒットした『友へ/チング』『新羅の月夜』など暴力団を扱った作品が数多く生み出されたが、『花嫁はギャングスター』は女性が極道者で、男女の立場が逆転しているのが斬新。なお、「強い妻(女性)と軟弱な夫(男性)」という関係は同時期韓国公開されていた『猟奇的な彼女』『春の日は過ぎゆく』にも見られる傾向。また、『NOWHERE 情け容赦無し』や『友へ/チング』のパロディっぽいシーンも見受けられる。

 アクション・ヒロインを演じるシン・ウンギョンは、この映画の撮影にあたり、最高3億ウォンまで支給される傷害保険に加入した。また、撮影に備えて香港の武術監督からアクション演技の特訓を受け、本番では背中に刺青をいれての大熱演。撮影中には全治三週間の怪我も負ったという。劇中では女ボスらしいカリスマを発散させている。また、個性派俳優パク・サンミョンも、暴力団の女ボスを妻に持つ夫という異色のキャラクターを見事に演じ切っている。

 主演のほかにも、ウンジンの部下でイカツイ外見とは違って実は情に厚い「マジンガー」を演じたシム・ウォンチョル、カッコつけマンの「パダ」役のアン・ジェモ、「パンツ」役を好演したキム・イングォンなど、助演陣も味のある演技を見せている。シム・ウォンチョルはコメディアンだが、チョ監督に抜擢されこの映画に俳優として出演。アン・ジェモはこれまでに『悪い女 青い門』『ドクターK』『NOWHERE 情け容赦無し』『ヒューマニスト』などに出演している若手男優。パンツを演じるキム・イングォンは、映画では『虹鱒』『ペパーミント・キャンディー』『アナーキスト』に出演し、テレビ・ドラマ『メディカルセンター』にも出演している。また、飲み屋の女セリを演じるのは、テレビ・ドラマ『ホ・ジュン』や『かたつむり』に出演していたタレント、チェ・ウンジュ。

 その他にも、チェ・ミンス、アン・ソックァン、クォン・ヨンウン、ミョン・ゲナム、キム・インムン、シン・シネ等がカメオ出演。

 この映画で監督デビューするチョ・ジンギュは1960年生まれで、大邱嶺南大学美術学部西洋学科を卒業した後、日本に留学し、早稲田大学大学院文学部映画理論科を卒業した人物。帰国後は、SBSテレビの外注独立プロダクションで10年ほど働き、『うれしき我らが土曜日』、『悪魔のささやき』、『気分の良い夜』、『結婚しようか』などのプログラムを企画・製作する。撮影総監督は『永遠なる帝国』『約束』『我が心のオルガン』のチョン・ジョミョン、照明監督は『約束』、『マヨネーズ』『友へ/チング』のシン・ギョンマン、編集はパク・コッチ。

 この映画を製作したヒョンジン・シネマの代表イ・スニョルは、世京映画で『歩いて空まで』(1992)、『君の中のブルー』(1992)を、その後、1994年に淳フィルムを設立し、『灼熱の屋上』(1995)、『ボーン・トゥ・キル』(1996)を、そしてヒョンジン映画社で『あきれた男達』を製作した人物。前作『あきれた男達』の興行的な失敗によって20億ウォンを越える借金を背負ったイ・スニョルは、『花嫁はギャングスター』の製作にあたって、商業的なコードを最大限に利用し、作品性より徹底的に興行上の成功=単純に面白い映画を目指すことを監督と申し合わせ、その代わりに監督へは収益の10%を歩合給として支払うことを約束したという。

 総製作費34億ウォン(=純製作費約18億+マーケティング費15億)。コメディアンとして有名なソ・セウォンが設立したソ・セウォン プロダクションの初製作投資作品。ちなみに、ソ・セウォンは1986年に『ナプジャルテ』という映画の監督をしたことがある。配給は、『友へ/チング』で提供・配給を担当したコリア・ピクチャーズ。マーケティング(=宣伝)費だけで15億ウォンを投入し、「軽い笑い」を好む10代後半をターゲットにしたマーケティングを敢行したこと、また、ソ・セウォンがテレビ関係者の人脈を駆使して芸能情報番組でこの作品を集中的に取り上げてもらったことなどが功を奏し、大ヒットした。

 2001年の秋夕(旧盆)映画として公開されたが、正式封切り日の9月28日より一日早い9月27日に一部の映画館で前夜祭の形で上映され、シネコンのメガボックスでは三回上映のすべてが売り切れと好調な滑り出しをする。そして、全国約150スクリーンで封切られ(ソウルでは約40スクリーン)、直後に秋夕の連休に突入。五連休という追い風にも乗って大ヒット。これまで『友へ/チング』『猟奇的な彼女』が持っていた全国観客100万人動員最短記録(6日目)も封切り5日目にあっさり更新してしまった。その後、封切りから9日目で全国観客200万人を、16日目で全国観客300万人を、24日目で全国観客400万人を突破し、最終的には全国観客500万人を越える動員数をマーク。全国の観客動員数では『猟奇的な彼女』を抜いて韓国映画歴代四位にランクインした。

 気楽に見て笑い飛ばすタイプの娯楽コメディ映画だったため、当初は作品性的にも興行的にもさほど期待されていなかったが、ふたを開けてみると誰もがビックリ!の大ヒット。予想外のヒットに、主演のシン・ウンギョンも目に嬉し涙を浮かべたという。ただし、興行成績に反して映画の評価は低く、評論家からは「商業性に偏重しており、韓国映画の衰退の前兆ではないか」と憂慮する声があがったり、一般観客からも「げらげら笑えればそれでいい」という肯定的な評価がある一方で、「(この映画の投資者であるコメディアンの)ソ・セウォン式ギャグ映画」、「広告宣伝でヒットしただけ」、「いくらなんでも作品性がなさすぎる」、「こんな映画を見た自分が恥ずかしい」といった酷評が数多くインターネットの掲示板に書き込まれた。

 アメリカのミラマックスが110万ドルでこの映画を購入して話題となった。ちなみに、110万ドルの内訳はリメイク権が95万ドル、韓国版の上映権が15万ドルで、リメイク権は歴代韓国映画の中でも最高金額。

 2002年には香港でも公開され、ボックス・オフィス一位をマークした。

初版:2001/10/1
最新版:2002/4/26



投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2001/10/12 18:20:23

 この作品の物語は、当初もっと陰惨な内容であったという。それをチョ・ジンギュ監督は大幅に書き変えた上で、「家族」というコンセプトをヒロインとその部下の関係に当てはめてゆくことで、登場人物たちの個別化と関係性を明確にすることに成功している。

 B級ではあるが、『新羅の月夜』のような伝統的な韓国のコメディーとは少し毛色の変わった作品に仕上がった。

 ヤクザと小市民の常識のズレから起こる笑いに徹した制御された演出は、最近の韓国映画の中でも新鮮に映り、日本人の感覚にも非常に判りやすいものとなっている。そういう意味では、実はチョ監督の作家性が見え隠れする作品なのだが、くだらない事は思いっきりくだらなく、アクション・シーンは思いっきり派手にと、職人的な割り切りで作られており、よい意味での「プログラム・ピクチャー」感覚がヒットの大きな要因になっているのではないかと思う。

 ヒロインを演じる、シン・ウンギョンは演技的にはまだまだであるが、絶対に笑わない、社会常識に著しく欠如した武闘派暴力娘を熱演しており、「ズレ」の笑いに大きく貢献している。また、彼女を補佐する若頭役のシム・ウォンチョルも好演だ。

 ラスト・シーンはある仕掛けが施してあり、韓国の観客には大受けであった。

 単なるキワモノB級映画とは片付けないで、チョ・ジンギュ監督の作家としての工夫を読み取ってほしい好編である。

【評価:★★★★】


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