唐辛子を干す
題名 英題 ハングル |
唐辛子を干す Making Sun-dried Red Peppers 고추 말리기 |
製作年 |
1999 |
時間 |
54 |
製作 配給 |
映画製作所青年 Intz.com |
監督 |
チャン・ヒソン |
出演 |
ソル・ジョンウォン チェ・チョンス パク・チュンミョン チャン・スナン チャン・ギョンス チャン・ワンスン |
日本版 Video DVD |
なし |
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女性三代を主人公とした、女性監督による、インディペンデント女性映画。韓国では女性の仕事とされている「唐辛子を干す」作業を通じて、母娘三代の思いを描く。庶民的な韓国女性の普段着の生活を描いており、観客に映画の中の家族と自らの家族との共通項を認識させ、家族関係の様々な断面を垣間見せてくれる。
映画監督で、食っちゃ寝とテレビが大好きな肥満のぐうたら孫娘ヒソン(パク・チュンミョン)。家事より仕事が忙しいママ(ソル・ジョンウォン)。そして19歳で嫁入りして以来化粧することも知らずに黙々と家事をこなしてきたおばあちゃん(チェ・チョンス)。ほどよい日差しの秋のある日、アパートの屋上で唐辛子を干す作業が始まり、20代の娘、50代の母親、そして70代のおばあさんからなる女三代が顔をあわせる機会が多くなる。お互いに不平不満を持っている3人。さて、彼女達の本音は? そして明らかになる家族の意外な事実・・・
16mmで撮影された劇映画部分と、登場人物にデジタル・ビデオ・カメラでインタビューしたドキュメンタリー部分、そしてこの映画自体のメイキング・フィルムが混在している不思議な構成の「家族映画」。チャン・ヒソン監督自身の家族の話で、劇中のヒソン(監督本人の役)はミュージカル俳優のパク・チュンミョンが演じているが、ママ役とおばあさん役は、チャン監督の実の母親と祖母が演じている。監督の実家でロケが行われていることもあり、ドキュメンタリー的要素が強い作品と言えるが、きちんとしたシナリオが存在しているという意味では劇映画と見なし得る。
女流監督のチャン・ヒソンは1973年2月9日生まれで、梨花女子大学社会生活学科と龍仁大学芸術大学院映画映像学科を修了。大学生の時に独立映画集団「映画製作所青年」に参加し、ホン・サンス監督の『豚が井戸に落ちた日』や、『ハッピーエンド』でデビューしたチョン・ジウ監督の短編『苦み(原題:生姜,英題:A Bit Bitter)』などの演出部で映画製作の勉強をした。1996年に映画製作所青年で『Welcome』を演出し、この作品で第1回ソウル女性映画祭最優秀映画賞を受賞。1999年に『唐辛子を干す』を発表した後は、2000年に『ジェイの物語』を製作し、第3回女性映画際映像共同体部門で受賞している。
脚本は監督のチャン・ヒソンとソ・シネ。撮影はコ・ヒョヌク。
第2回(1999)ソウル女性映画祭で初上映されて優秀賞と観客賞を受賞した後、第25回韓国独立短編映画祭でも「新しい視線」部門の優秀賞を受賞。第4回(1999)釜山国際映画祭「ワイドアングル」部門、山形国際ドキュメンタリー映画祭 '99「アジア千波万波」部門、第50回(2000)ベルリン国際映画祭ヤング・フォーラム部門などにも出品され、ベルリンでは NETPAC Special Mention を受賞する。山形では『天日干し赤唐辛子を作る』という題名で59分の作品として上映された。第2回(2001)全州国際映画祭セクション2001「韓国独立ドキュメンタリー15年」部門、第8回(2001)シネマコリア上映会上映作品。
第6回(2001)女性観客映画賞特別賞受賞作品。
優秀なインディーズ映画の劇場公開を支援しているIntz.comが、『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』,『テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』に続いてインキュベートした作品で、2001年2月10日にアートキューブ光化門で単館公開された。公開時には、女性三代が主人公という映画の趣旨を反映して、母娘で来場した観客は半額、母娘三代で来場した観客は無料で鑑賞できる特別割引制度が作られた。
初版:2001/2/12
最新版:2002/1/4
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【ソチョンの鑑賞ノート】
2001年2月14日執筆
劇映画というのは、いかなる名作であっても必ず映画的な「嘘」が入っているもので、例えば、『八月のクリスマス』や『シュリ』を見て韓国に関心を持たれるようになった方は多いと思うのですけれど、こういった作品をご覧になって、「韓国の生活ってこういう風なんだ〜」と思われると、それはちょっと困ってしまいます。あれはあくまで「映画の中のお話」に過ぎませんから。そして、それはナチュラル・ラブ・ストーリー『美術館の隣の動物園』でも同じこと。
さて、そこで『唐辛子を干す』。
この映画に出てくる家族は、まさしく典型的な韓国の中流家庭で、「あ〜、これこれ、こういうことよくあるっ!」と思わせてくれます。おばあちゃん、母親、孫娘と三代の女性のごくごくありふれた日常を描いていて、派手なアクションもなければ、ぐっとくる見せ場もない。でも、そういう普通さがこの映画を価値あるものにしています。
ごくごく普通の韓国人の女の子や、おばちゃん、おばあちゃん、ソウルの街を歩けばそこここで見かける普通人の姿。そして、彼女達のお喋りの中には、国は違えど女性としての悩み、価値観の変容による世代間ギャップ、そして個人的な悩みは同じなんだなぁと感じさせてくれるものがあります。
観客にそういう普通さを感じさせることに成功した、素人俳優による劇映画部分とドキュメンタリー形式のインタビュー部分というシネマ・イン・シネマの特異な構成。ドキュメンタリーっぽいんだけれどシナリオがあって、でもそのシナリオは監督の家族の実話が元になっているという・・・
「素の韓国」、特に女性のそれを見たい方にお薦めです。
● 字幕つきを見て
2001年8月15日執筆
これはなかなか味のある映画です。おばあちゃんとママと娘の母娘三代が、普段言いたくても言えなかった互いの不平不満を、娘の映画作りをきっかけに吐露するというなんとも地味な作品で、字幕なしで見たときは、<女性が見たら>共感できる部分が多いんだろうなぁと勝手に想像しながら見ていたのですが、二回目を字幕つきで見てその台詞を完全に理解してみると、これは<誰が見ても>共感できる部分が多い作品でした。
パラサイト・シングルしている娘といい、外で仕事をしているママといい、おじいさんのある行動が女性たちに多大な影響を与えているところといい、多少の設定の違いはあるものの、なんか我が家を見ているようで・・・ 見終わった後に、冷や汗かいてしまいました。
この映画は、「家族」であれば世界中の誰もが抱えている普遍的な問題を抱合していて、観客に映画の中の家族と自らの家族との共通項を認識させてくれます。そして、普段ついつい忘れがちになっている自らの「家族関係」に思いを馳せさせてくれる・・・ そんな力を持った作品です。
『ペパーミント・キャンディー』を見て、三十年、四十年のわが人生を顧みてしまった方は多いと思いますが、『ペパーミント・キャンディー』が個人史なら、『唐辛子を干す』は家族史。これまた、自らの、または家族の生き様を振り返らせてくれる骨太な映画です。
『唐辛子を干す』のもう一つの特長は、劇映画とドキュメンタリーが混在しているということ。監督のチャン・ヒソンは、自らの家族を描こうとシナリオを執筆。おばあちゃんとママ役には実の祖母と母親を配し、娘ヒソン役には自分と体系の似たミュージカル俳優のパク・チュンミョンをキャスティング。そして自らの実家をロケ地に選びます。と、ここまで聞くとほとんど実話の世界のように思えますが、根幹はあくまでシナリオのある劇映画。しかし、16mmで撮影された劇映画部分に、ビデオで撮られたドキュメンタリー部分が挿入され、インタビュアーのチャン・ヒソン監督に向かって、実の祖母と母親が自らの思いを切々と語ります。そして、ヒソン役のパク・チュンミョンとチャン・ヒソン監督がお互いの家族の共通項を吐露する場面も。
こういう形式はなんというんでしょう? 長編劇映画の『Interview』も似たような形式をとっていますね。シネマ・イン・シネマとは、ちょっと違います。劇映画の撮影がきっかけとなり、インタビューで家族の意外な事実が明らかにされるという意味では、ドキュメンタリー・イン・シネマとでも言うのでしょうか?
非常に面白い構成。ただし、前もってそういう作品であると分かっていないで見るとかなり戸惑うでしょう。私も最初見たときは、劇映画部分の祖母・母親とドキュメンタリー部分の祖母・母親が同一人物であるのか、最後まで判断がつかず、それゆえに人間関係も理解できず面白さが半減してしまったように思います。
それにしても、この映画は当初どのように企画されたのでしょうか? 16mm劇映画を撮ろうとして、撮影の合間合間にビデオでインタビューをしていたら意外な話の発展があって、それでこのような作品に「事後的に」なったのか、それとも、計画的にこのような形式を念頭において製作したのか? 監督に会う機会があったら、是非一度聞いてみたいところです。
『唐辛子を干す』感想集
第8回シネマコリア上映会のアンケートより
※ 上映会では、チャン・ヒソン監督のトークを開催
- 瑞々しい映像で、登場人物が生き生きと描けていて好感を持った。フィルムのフィクション部分とビデオのドキュメンタリー部分の違いに、もっとメリハリがあると、より良いのではないかと思う。(30代,男性)
【評価:★★★★】
- 描かれている人が自然で、自分の家族と重ねあわせて見ることができた。題材も面白いし、また女性の視点で語られている家族は素朴でたくましく、リアリティがあった。トークも質問に対する答えが明確で分かりやすく、映画を理解するのに役立ちました。(30代,女性)
【評価:★★★★】
- 韓国の飾らない日常の中から世代の違う親子の葛藤を通して現代の韓国の様子を知ることができて良かった。日本とあまり変わらないんですね。(40代,女性)
【評価:★★★★】
- 自然体で良かった。特に監督の役の役者がよかった。この映画をおおらかなものにしたと思う。(50代,男性)
【評価:★★★★】
- チャン・ヒソン監督のトークで、娘・母・祖母の代の女性の生き方、考え方に興味を持ちました。(40代,女性)
【評価:★★★★】
- 家族について考えさせられた。(30代,男性)
【評価:★★★★】
- 感想なし。(20代,女性)
【評価:★★★★】
- 感想なし。(20代,男性)
【評価:★★★★】
- 感想なし。(50代,男性)
【評価:★★★★】
- 感想なし。(30代,女性)
【評価:★★★★】
- 単に私がこういうジャンルに関心が薄いというだけで、映画自体はなかなかいいと思う。映画を見ただけだと構成が入り組んでいる面があるので、監督の話が色々聞けて良かった。(30代,男性)
【評価:★★★】
- 韓国の一般家庭をそのまま見たという感じがして面白かった。特にしぐさや、物を食べる音など、あぁ韓国人らしいと思いました。(20代,女性)
【評価:★★★】
- 難解過ぎてよく分からなかった。ゲストトークは面白かった。(20代,女性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(40代,男性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(30代,男性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(30代,女性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(30代,男性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(50代,女性)
【評価:★★★】
- 感想なし。(30代,男性)
【評価:★★★】
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