サイコ・セックス・スリラー。過激なベッド・シーンとホモ・セクシャルの描写のため、レイティング審査で二度の保留を受け、話題となった。製作陣の言によれば「韓国映画史上最もいやらしくて衝撃的な映像を披露する」とのこと。題名の「ヘラ・パープル」の「ヘラ」は、ゼウスの妻で、嫉妬深く執念深い女神ヘラからきている。
イ・ヘリム(キム・チョン)は普通の家庭の主婦だが、13歳のとき6人の男から暴行を受けた経験をもつ。そんなヘリムは、ある時体に異常を感じて、キム・ジョンウク博士(イ・ホソン)を訪ねて相談するが既存の方法では原因が特定できず、彼女には催眠療法が試みられる。一方、ちまたでは謎の連続殺人事件が発生しており、その解決のためにイ・ウンジュ(イ・セチャン)を長とする特別捜査チームが組織される。
オム・チュンベが神父を、ホン・ソッチョンが捜査係長を演じる。
芸能人としては韓国で初めて同性愛者であることをカミング・アウトしたホン・ソッチョン(31)が、この映画でスクリーン・デビューし、ホモ・セクシャルの全裸情事シーンを演じる。彼とからむ相手役はチョン・ギルチェ監督の息子チョン・ヘリョン(20)。当初、ホン・ソッチョン演じる役の比重は小さかったが、彼がカミング・アウトしてから同性愛セックスのシーンが挿入され、比重が大きくなったという。また、2000年9月のカミング・アウト以降、テレビなどでの芸能活動を中断していたホン・ソッチョンは、この映画の封切りと前後して芸能活動を本格的に再開した。
レイティング審査を行う映像物等級委員会は、2001年5月21日に過激なセックス&バイオレンスを理由に、この映画の上映等級判定を保留した(=公開できない)。また同年6月20日にも、同性愛、女性主人公と神父の性行為、性器切断シーンなどを問題視して、再度上映等級判定を保留。製作サイドは指摘されたシーンをカットして再々申請し、7月13日に三度目の審査でついに「18歳以上観覧可」の判定を受けた。
チョン・ギルチェ監督は元歌手で、アメリカで事業を展開した後、帰国し映画界に身を投じたという変り種。本名はチョン・ギルチェ、歌手として活動していた時の芸名はチョン・ギル、LAへ移民していた頃の名前はリチャード・チョン。1972年に歌手としてデビューした後、1970年代中盤にLAへ移民。そこで美容室と「LAフィルハーモニック」というカラオケ屋を開店する。そして事業で成功した彼は再びアルバムを出すが失敗。1989年に帰国しソウルに「LAフィルハーモニック」の支店を出したところ、そこが映画人の交流場となったのがきっかけとなり、1995年にデビュー作『飛雪』を発表。続いて1998年に第二作『A+生』を発表するも、『飛雪』、『A+生』の二作は興行性・作品性共になく大失敗。第三作目の本作では、製作・監督・脚本を一手に引き受けている。
製作費は13億ウォン。低予算映画にもかかわらず、韓国内公開に先立って126万ドルという破格の値段でアメリカの配給会社に権利が売れ話題となった(海外では無削除版でビデオ発売予定という)。ただし韓国内での評価は散々で興行的にも全くの大失敗に終わった。
初版:2001
最新版:2002/2/25
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