猟奇的な彼女
画像提供:シンシネ
題名 英題 ハングル |
猟奇的な彼女 My Sassy Girl 엽기적인 그녀 |
製作年 |
2001 |
時間 |
120(韓国公開版) 122(日本公開版) 124(日本Video&DVD) |
製作 提供 製作支援
配給 製作協賛 |
シンシネ アイエム・ピクチャーズ mvp創業投資 シネマ・サービス アイエム・ピクチャーズ シネマ・サービス STARMAX SREコーポレーション |
監督 |
クァク・ジェヨン |
出演 |
チョン・ジヒョン チャ・テヒョン キム・インムン ソン・オクスク ハン・ジニ ヤン・グムソク キム・イル ヒョン・スッキ イム・ホ |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video 通常版DVD ディレクターズ・カット特別版DVD Blu-ray |
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可愛い顔して実は強烈キャラの「猟奇的」な女の子と、ちょっと頼りない純な男の子の「笑いと涙」の青春ラブ・コメディー。1999年にパソコン通信「ナウヌリ」の掲示板で連載され、ついにはファン・クラブが出来る程の人気を博したキム・ホシクの同名連作小説を映画化。現実にはありえないような男女の恋の物語を漫画チックに描いて大ヒットした。
キョヌ(チャ・テヒョン)は公益勤務要員の形で兵役を終えたちょっと頼りない大学生。ある日、彼は地下鉄の中でぐでんぐでんに酔っ払った可愛い女の子(チョン・ジヒョン)を見かけるが、アッ!と思った次の瞬間、「彼女」は前に座っていたおじいさんの頭にものの見事にリバース。そしてキョヌは、なりゆきで「彼女」をおぶって旅館に運び込むことになるが、それがきっかけで二人は付き合うことに。しかし、和田アキ子もびっくり!の強烈キャラの「彼女」にキョヌは振り回されっぱなし。二人のでこぼこな恋は「前半戦」、「後半戦」、「延長戦」と続くのだが・・・
この映画の題名に使われている「猟奇的」という単語は韓国語の語感では「ちょっとおかしな」、「変な」、「かわいいわりに突拍子もないことをする」といった意味。日本の漫画・アニメで言えば『クレヨンしんちゃん』や『パタリロ』も韓国では「猟奇的」と表現される。なお、この映画が大ヒットしていた頃、韓国では「猟奇ウサギ/マシマロ」というウサギのキャラクター商品が大流行。若者がぬいぐるみや携帯ストラップを争って購入したが、この「猟奇ウサギ/マシマロ」の「猟奇」も同様の意味。ちなみにマシマロはタカラが日本での商品化権を獲得しており、そのグッズも発売されている。マシマロの公式サイト(韓国語)はこちら。日本語版公式サイトはこちら。「猟奇」は2001年のコリアン・サブカルチャーを語る上でのキーワードなのだ。
劇中のチョン・ジヒョンはシナリオ作家志望で彼女が書いた三本のシナリオが劇中劇として映像化されている。三本ともパロディ映画だが、その内の一本『デモリション・ターミネーター』は、『デモリションマン』と『ターミネーター』をパロディした内容。わずか30秒足らずのこのSFXシーンのために約一億ウォンが投入され話題となった。残りの二つは、ファン・スヌォン(黄順元)の原作小説を映画化した『夕立ち(ソナギ)』の変形バージョンと、ウォン・カーウァイ作品をパクッたような武侠映画『卑賎武林哀歌』。『卑賎武林哀歌』では髭面のチャ・テヒョンを拝める。
チャ・テヒョン演じる男の子の配役名キョヌは漢字で書くと「牽牛」。七夕伝説「織姫と彦星」で有名な織女星と牽牛星の「牽牛」な訳だ。
原作小説は、作者のキム・ホシクが「キョヌ74」というIDでパソコン通信「ナウヌリ」に書き込んだもの。ちなみにこのIDの由来だが、「キョヌ」は「牽牛」を、「74」は作者の生年を意味している。なお、原作の半分くらいは作者の体験談だとか。
主演の二人の演技が大好評。チョン・ジヒョンはこれ一本で「2001年、最も印象に残る女優」と呼ばれ、ブラウン管の人気者チャ・テヒョンはこの作品で映画界での地位も確立した。二人は1999年に放映されたSBSテレビ・ドラマ『Happy together』で既に共演しているため、息もぴったり。CMでしなやかなテクノ・ダンスを披露しているチョン・ジヒョンは、この映画でもダンスを披露。チャ・テヒョンは、『ハレルヤ』でちょい役出演したことがあるが、本格的な主演映画はこれが初めてとなる。
『雨降る日の水彩画』(1989),『秋の旅行』(1991)などを演出したクァク・ジェヨン監督が八年ぶりにメガホンを取り、シナリオも担当。製作はパク・コンソプとシン・チョル。撮影はキム・ソンボク。セットはオ・サンマン。釜山映像委員会(フィルム・コミッション)撮影支援作品。
音楽はキム・ヒョンソク。8万枚以上の売上を記録したサントラ『AC+E NO.2』はキム・ヒョンソクの "2nd Project Album" の形式をとっている。シン・スンフン歌う主題曲『I Believe』は絶品。彼のほかにも、上田正樹、DEEN、キム・ジョハン、イ・ヒョンド、オム・ジョンファ、ユン・ドヒョン、チンジュ、イム・チャンジョン、キム・ミンジョンら人気歌手がサントラの製作に参加している。また、サントラの売上好評を受けて、本編にはあるのにサントラでは未収録だった曲を加えた音楽CDと、ミュージック・ビデオや映画のNGシーン集を収録したCD-ROMの二枚セットも発売された。
総製作費は22億ウォン。インターパーク「コスダック」で一般投資家から資金を公募し、たった6時間40分で1億ウォンを集め話題になった。また、若者に大人気の二人が主演するせいか、公開前には前売り券売上数予想ゲームなども行われた。
2001年に入ってから、韓国ではハリウッドの話題の大作は慣例の土曜日より一日早く金曜日に公開されるようになっているが、この作品は韓国映画としては初めて金曜日(2001/7/27)に封切された。公開規模は、同時期に大ヒットしていた『新羅の月夜』を上回る全国140個、ソウル45個スクリーンで、封切りから6日目で全国観客動員数100万人を突破、そして13日目で同200万人を、33日目で同400万人を突破し、大ヒット。ちなみに、前売り券の売上は8万1千枚で、これまで『友へ/チング』が持っていた記録7万7千枚を凌駕している。最終的にはソウルで170万人強、全国では500万人弱もの観客を動員した。
第14回(2001)東京国際映画祭協賛企画コリアン・シネマ・ウィーク、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門、2002年フィラデルフィア映画祭「ニュー・コリアン・シネマ」部門、2002年ニューヨーク・アジア映画祭、第4回(2002)Udine Far East Film Festival、2002年サンディエゴ・アジア映画祭招待作品。
第22回(2003)香港金像奨最優秀アジア映画賞、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002ヤング・ファンタスティック・グランプリ&(観客の人気投票による)ファンタランド大賞、第22回(2001)青龍賞新人男優賞(チャ・テヒョン)、第25回(2002)黄金撮影賞新人男優賞(チャ・テヒョン)、第6回(2001)女性観客映画賞私たちの女子天使賞(最高の女優:チョン・ジヒョン)・私たちの男子天使賞(最高の男優:チャ・テヒョン)、第39回(2002)大鐘賞女優主演賞(チョン・ジヒョン)・脚色賞(クァク・ジェヨン)受賞作品。
スピルバーグのドリームワークスSKGが、この映画の英語版リメイク権を購入して話題となった。
香港では、2002年2月21日に『我的野蠻女友(私の野蛮な女友達)』という題名で公開され、Boxoffice一位をマークしたほか、それまで『反則王』が持っていた(香港における)韓国映画の最高興行収入記録(530万香港ドル)を公開から10日あまりで更新するヒットとなった。
日本公開版と韓国公開版とでは、エンディング・ソングが異なるなど、音楽を中心に微妙に異っている。日本では、サントラがビクタ・エンタテインメントより、F.O.Hが歌う日本語テーマ曲『I Believe』がリワインドレコーズよりシングルリリースされ、原作小説『猟奇的な彼女』(キム・ホシク著/根本理恵訳)も日本テレビ出版部より出版されている。また、2004年には宝島社よりCOMIC『猟奇的な彼女』(キム・ホシク作、ミン・デホン絵、宮本尚寛訳)が発行された。
2004年には『猟奇的な彼女―完全対訳シナリオブック』(クァク・ジェヨン著、山坂れみな訳)がアーティストハウスパブリッシャーズより発売された。
初版:2001/8
最新版:2002/3/6
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■ クァク・ジェヨン監督 in ゆうばりファンタ
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002で来日したクァク・ジェヨン監督のティーチインの模様は、こちら。同映画祭での受賞会見の模様は、こちら。
投稿者:Nobukaさん 投稿日:2001/9/20 19:26:18
最近、映画でこんなに笑ったことがなかったような気がします。ただでさえ韓国の人は感情表現が日本より素直。『猟奇的な彼女』上映中の館内はあちこちで笑いがおき、時には全員で拍手しながら映画を見ました。韓国語が完璧でない私でさえ、手を叩いて大笑いしていて、そういう自分にもびっくりしました。
主人公のキョヌ(チャ・テヒョン)が秀逸。こんなに若いのに、表現の幅がとても広い。彼が、チョン・ジヒョン演じる「猟奇的な彼女」に振り回されるさまが可愛く、見ている誰もがキョヌの兄や姉のような気分になっていたはず。彼の出演作はまだ数が少ないけれど、近い将来必ずや韓国映画には欠かせない存在になると信じています。
画像提供:シンシネ
こんなに楽しい作品を、日本で公開しないなんて犯罪!
ぜひ日本でも公開して欲しいです。酔っ払って地下鉄で派手にリバースしてしまう彼女。ついつい彼女の面倒を見てしまって警察に通報されてしまうキョヌ。彼はいつも彼女にしてやられるけれど、でこぼこのようで、でも確実に近づいていく。
二人が映画の世界にいるというよりも、普通に暮らしている「日常」にとても近く、共感を覚えました。近い将来、彼らにまたスクリーンで会えますように・・・
【評価:★★★★★】
投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2001/10/12 18:33:16
地下鉄でゲロを吐くシーンばかりが取り沙汰される作品だが、実のところそのくらいしか見所のない映画。
純粋にコメディーというには、なんだか中途半端な作品だ。この映画が大好きな方々には申し訳ないが、苦痛のニ時間であった。なんでこんなに長いのか、よくわからないが、原作小説があるところから推測して、活字の呪縛から逃れられなかったのかもしれない。
「韓国のおっさん」丸出しのヒロインを、実は清楚な魅力を持つチョン・ジヒョンが演じることは確かに可笑しいし、最初から最後まで彼女に振り回されるチャ・テヒョン演じる大学生の優柔不断ぶりとの対比は一見、面白く見える。だが、彼らと周囲の人々の関係の描き方が希薄であるため、求心力がないまま、終わってしまっている。
とにかくセリフ(語り)が多いので、出来れば字幕付で見ることを薦めたい。
また、この作品において、主人公の二人は「韓国の旧世代」VS「韓国の新世代」のメタファーであり、ジェネレーション・ギャップが実は大きなテーマであるように見えたのだが、いかがだろうか?
【評価:★★】
投稿者:Angie さん 投稿日:2001/10/14 01:33:44
非常に爽やかな作品というのが、観終わった後の感想。
字幕なしだったが、韓国語初級者の私にもきちんと筋の分かる、すっきりと記号化された映像という印象を受けた。脚本的にも作品全体としても無駄なものがなくて、シンプルで良い。終始、映画館じゅう大笑いで私も大笑い(しかし、韓国語が分かったら、もっと大笑いだったと思う。かなりセリフで笑わせる作品のよう)。
日常の中の「こういうことひょっとして起きるかも知れない」というような出来事と非常にフィクション的なイベントとが、バランス良く配分されて物語は展開し、ニ時間に渡って全く飽きさせないテンポは、小気味良かった。
チョン・ジヒョンは、女子大生役の強さと脆さの二面性を上手く演じ分けていたと思う。特に後半、徐々にチャ・テヒョン演じるキョヌに惹かれていく辺りでは、少女っぽさに加えて、ちゃんと大人の味も出していて、素晴らしかった。チャ・テヒョンも、ただ笑わせるだけというような「味」の演技だけでなく、弱くて情けなくて、けれども優しくて、彼には彼の強さがあるところを、うまく出していたように思う。二人とも若いのに、それぞれに芯があって今後が楽しみ。
個人的に、韓国のキャンパス・ライフの端々がうかがえるような設定で、とても興味深かった。また若い二人の距離が徐々に縮まっていくペースが、韓国独特のスピードのような感じがして、そこがとても面白かった。
観て絶対損はなし。しかし、字幕あり or 韓国語が分かった方が better かも。
【評価:★★★★】
投稿者:ケニーさん 投稿日:2001/11/4 00:30:17
コリアン・シネマ・ウィーク初日に見ました。
楽しみにしていた『新羅の月夜』と連続で見たのですが、この映画は、ぼくにとってしばらく忘れられない映画になりそうです。主人公の女の子の強烈キャラに最初とまどっていたものの、前半の椅子からおちそうになるほどの可笑しさから後半の運命に導かれるプロセスが、前半の丁寧な人物キャラのおかげで見事に僕のツボにはまりました。ラストシーンの見事さに計算つくされた脚本のよさとはいえノックアウト!
『八月のクリスマス』から韓国映画にはまってるのですが、恋愛ものでは『バンジージャンプする』を抜いてこれが僕のマイ・フェイヴァリット。岩井俊二の『Love Letter』と同じぐらい好きになりました。
日本公開望みマース。赤坂で開催される「2001韓国映画プロジェクトII」で12月9日に再上映されるので、これのチケットも買います。
【評価:★★★★★】
投稿者:大西康雄さん 投稿日:2001/12/11 11:47:48
2001韓国映画プロジェクトIIで観覧。
本作のテンポ・雰囲気を見てまず思い浮かんだのが、『ひみつの花園』(1997)、『アドレナリンドライブ』(1999)、『ウォーターボーイズ』(2001)など矢口史靖監督の諸作品である(*)。一作しか見ていないので、 クァク・ジェヨン監督を「韓国の矢口史靖」とまで呼んでいいのかどうかは分からない。しかし、少なくとも本作に関していえば、受けそうな日本の観客層は矢口作品のターゲット層とぴったり重なると思う。また笑いの連続の中にちょっとほろりとさせる要素も混ぜ込むサービス精神のあり方も矢口作品を髣髴とさせる。
(*)『ひみつの花園』は1999年に『山銭水銭』という題名で韓国でリメイクされ、オリジナルも2001年4月に韓国公開されている。ちなみに、リメイク版の主演は『リベラ・メ』のキム・ギュリ。『アドレナリンドライブ』も韓国公開予定作品。
矢口作品の場合、シノプシスが未整理な点と、バラエティ・ショーを思わせる過剰気味であざとい演出が個人的には鼻につくのだが(そのマイナス面をアイディアの面白さでカバーしているという側面は多分にあるし、逆にそのあざとさが好きという人もいるかもしれない)、クァク監督の本作品では主人公の彼女の突飛な行動はあまり「あざとい」感じがなくドラマの進行もスムーズで、こんな子も(そしてこんな彼氏も)いかにもいそうな(現実にはそういないではあろうが)リアルなおかしさがある。その意味では矢口監督より演出力は一枚上手、というのが個人的な感想。
もっともそれは日本的な文脈での解釈かも知れず、現地では、年下のくせに年上の彼氏に普段からパンマル(ぞんざい語)で話し掛ける彼女なんておよそ考えられないからこそ受けているのかもしれない。およそ儒教的価値観とかけ離れた日本製アニメ『クレヨンしんちゃん』が韓国で妙に受けているのと同じように。
また彼氏の前ではやりたい放題の彼女も親の前では手も足も出なかったり、公の場で妙に正義感を振りかざしたりというギャップも面白い。このあたりは韓国哲学者の小倉紀蔵氏流(**)に言えば、理の世界と気の世界が云々という話になるのかもしれないが・・・
(**) 小倉紀蔵著『韓国は一個の哲学である』(講談社現代新書1430)、同『韓国人のしくみ』(講談社現代新書1536)を参照。
本作品も日本での一般商業館への配給は未定のようだが、ともあれ韓国的文脈を全く考慮せず、何も考えずに日本的文脈で見てもそのまま違和感なく笑い、楽しめるという意味では日本市場での娯楽性・商品性の極めて高い一作である。逆にそういった側面が韓国ドラマらしい香気や描写の深みに欠ける単なるドタバタ映画という評価もあろう。
しかしこの作品、元々香気や深みを求める映画ではないだろう。むしろアジア市場における現代的「プログラムピクチャー」の枠の中で評価されるべきだ。映画の中でウォン・カーウァイの『楽園の瑕(原題:東邪西毒)』の引用・パロディがあるのも、監督がその方向性を狙っているからではないか?
【評価:★★★★】
投稿者:SUMさん 投稿日:2002/1/4 19:57:03
前半は、ぶっとんだ女の子のキャラで笑わせる。「やや女っぽい男の子」と「男っぽい女の子」の対比という、ありふれたテーマをモチーフにしてもいるが、どっちも、というか特に女の子の方が「こんなの男にもいない」というようなキャラで、この辺が類型からはみ出して新鮮で受けたのか?
女の子が「このヒールはいてると足が痛いから、靴替えろ」と命令し、男の子が渋っていると「おまえは女のことがわかってない」と口撃するあたりは、なかなか心得た台詞だ。
結局は、女の子の方の男っぽさ(?)は後半少しずつ理由が明らかにされていって、お涙ちょうだいラブストーリーに変わっていくが、結構泣ける。是非一般にロードショーされて欲しい作品だ。
主題歌はベテラン歌手シン・スンフン。泣きのバラードここにあり。音楽担当キム・ヒョンソクとスンフンの共同編曲ってずいぶん久しぶりのような気がするが、いい。最近の彼のオリジナルアルバムで見せる自作中心の作家性の追求もすばらしいが、たまに、いい意味で、大衆向けにあか抜けた作家と共作すると、またツボをつかれた心地よさが心地よい。
【評価:★★★★】
【ソチョンの鑑賞ノート】
2002年1月6日執筆
男勝りで、「おしとやか」とはかけ離れた言葉使いをする「猟奇的」な彼女。やりたい放題めちゃくちゃする女性と、それを優しく見守る男性という設定が、新しく面白い・・・
と思ったら、ラストはお決まりの大団円で少々拍子抜け。「新しいけど、オーソドックスな映画」といったイメージはぬぐえない。ちなみに、原作小説ではキョヌがタイムカプセルから手紙を出したところで終わるという。ということは、「延長戦」のジワッと泣かせるストーリーは映画の創作な訳だ。
製作のシンシネは、これまでもレイプ事件にまつわる裁判劇を描いた『あなたが女というだけで』(1990)、新世代夫婦を描いた『結婚物語』(1992)、子育てパパを描いた『ミスター・マンマ』(1992)、妻に尽くす夫を描いた『手紙』(1997)、中年男と女子高生の変態ラブストーリー『LIES/嘘』(1999)などを企画・製作し、新しい男女の形を提示してきた会社。そして、まもなく日本で公開される、主婦の不倫を描いた『情事』も、プロデューサーはシンシネから独立したオ・ジョンワン。
シンシネの映画を見ることは、それすなわち韓国の男女関係の変化を観察することになる、といっても過言ではない。
【鑑賞ノオト】 Text by 月原万貴子(月子) 2002/3/1
見た目はとびっきりかわいらしいのに、突拍子もない行動ばかりする女子大生と、彼女に恋した心優しき青年のラブ・コメディー。最初タイトルを聞いたときはサイコ・ホラーものかと思っちゃったけれど、「猟奇的」ってこういう意味だったのね(笑)。
チョン・ジヒョン演じる「猟奇的な」女の子は、日本風にいうと「おやじギャル」を極めた感じ。泥酔するまで酒を飲んで地下鉄の中で意識を失ったり、知らないおじさんに喧嘩を売ったり、男の子をグーで殴ったりと、かなりの無頼漢だ。
キュートなルックスとのギャップの激しさが笑いを呼ぶわけだが、コメディーとして成立させるには、ちょっとそれに頼り過ぎている気もする。だから後半、なぜ彼女がこのような行動をとるようになったかが明らかにされると、とたんに全体がウェットになってしまい、前半の爽快さが薄れてしまうのだ。冒頭から大笑いさせて貰っただけに、残念な気がする。
主役を演じる二人は、とても魅力的だ。チョン・ジヒョンの酔眼演技などは「これが、あの『イルマーレ』と同じ子かしらん?」と思ってしまうほどのヤバヤバぶり。一方のチャ・テヒョンも、女の子に振り回されっぱなしの頼りなさや、大学生にもなって、まだ母親から叩かれて叱られる情けなさが、しっくりと馴染んでいて笑わせてくれる。それでいて、ここまで振り回され続けてあげられるのは、男としての度量が広いというか、むしろ強い男なのではと思わせてくれるあたり、大したものだと思う。
まだ演技経験の浅い若い俳優たちから、これだけの演技を引き出して見せたクァク・ジェヨン監督の手腕に感服した。
【評価:★★★★】
読者の声
『猟奇的な彼女』監督サイン入りグッズ・プレゼントより
(2002年3月実施)
※ アンケートには「あなたが邦題をつけるとしたら?」という質問項目がありました
- 邦題タイトル、思いつきません。あまりにも長く『猟奇的な彼女』を待ちわびていたから、もうそれ以外のタイトルが考えられなくなってしまったのかも。チャ・テヒョン主演ということを抜きにしても、思いの他に味わい深い作品に仕上がっていて感動しました。ラストシーン、椅子の後ろで二人がしっかり手をつないでいたのが、ほんとうにかわいかったです。全国展開されて、たくさんの人に見てもらいたいと思います。(兵庫県在住,47歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 日本での劇場公開を最も期待している作品です。DVDでは何度となく観ましたが何度観ても飽きません。私の中で最も好きな韓国映画です。(千葉県在住,31歳,男性)
【評価:★★★★★】
- あのマシマロでも話題になった「猟奇」という言葉のついたこの映画は今みたい映画のひとつです^^(東京都在住,27歳,女性)
- 早く日本で一般公開されて欲しいです。(東京都在住,28歳,男性)
- 福岡では公開されるのでしょうか? 『イルマーレ』、きれいな映画でした。(福岡県在住,28歳,女性)
- これを見た後、ついつい行動なんかも意識してしまっている自分が怖い。(千葉県在住,24歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 知人に薦められて観ました。観る前は只の何処にでもあるようなドタバタ・コメディーと思っていた。観終わった時頬が涙で濡れていた。是非日本でも劇場公開して欲しい。(大阪府在住,34歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 面白かったです。場面展開がいろいろあって実に楽しい作品であり、涙する所もありました。こんな映画一度でいいから撮ってみたいです。(東京都在住,27歳,男性)
【評価:★★★★】
- このタイトルを聞いて「どんな内容だろう?」と非常に気になっていました。観たら納得! ずばりはまってました。どんどん引き込まれてしまいました。キャスティングもはまってました。あの二人しかいないと感じました。最初のほうは、「猟奇的な彼女」のさまに大笑いし、最後のほうでは微笑みながら泣くといった感じでした。とても後味の良い映画でした。(東京都在住,26歳,女性)
【評価:★★★★】
- 感想なし(広島県在住,30歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 韓国での興行記録をぬりかえただけある意欲作。『シュリ』や『JSA』、『友へ/チング』とは正反対に、こんな映画も作れるんだと言わしめた。ただ残念なのは、男女二人の若者らしいカッコいい一面も映像として、見せてほしかった。(埼玉県在住,29歳,男性)
【評価:★★★】
- 夕張まで行けませんでしたが、昨年の東京国際映画祭の協賛企画の際に見ました。傑作! 星五つでは足りませんよぉ・・・ 10個は最低つけたい。前半の彼女のユニークさに大笑い、後半の運命のすれちがいにドキドキ、ハラハラ、延長戦では最高!を心の中でくりかえしてました。(神奈川県在住,46歳,男性)
【評価:★★★★★】
- 2001年のベストワンでした。友人にも必ず見ろと勧めたかいあって、みんなはまっています。わたしは主役の女優さんの生写真を買うほど、友人は香港でレオン・ライのコンサートでチャ・テヒョンに会ったーと狂喜するほど、他作品の女優さんは皆、髪型も化粧法も似たり寄ったりなのですが、この作品はポップで凄くよかった。ぜひ公開をお待ちしてます。(神奈川県在住,28歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 韓国の友人宅でビデオで見ただけですが、すごくおもしろかったです。前半彼女のぶっ飛んだところと、彼のいじらしい姿がかわいい! 私の好きなシーンはキョヌが学校で代返してる場面と、友人と飲んでるとき彼女が通って、「アガシ、アガシ・・・」「?!アガシィ?! ヤ!!」と彼女が怒るところです。今まで日本に紹介されてる韓国映画の男性のイメージをすっかり裏切りましたね(いい意味で)。ラストもほっとする終わり方でよかったです。韓国人の友人には「猟奇なら猟奇のまま終わったらいいのに」って言った人もいましたが・・・ 次はちゃんと字幕付きで見て100%理解したいです。(大阪府在住,27歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 実は見ていません。(東京都在住,35歳,女性)
- ゆうばり映画祭で見ました。今回の映画祭の、私にとってオープニング作品だったのですが、忘れられない作品です。さっそくビデオを買いましたが、字幕がないので細かいところがわからない。日本での公開を心待ちにしています。(北海道在住,29歳,女性)
【評価:★★★★★】
- 時間を感じさせないスピ−ディな展開の映画でした。(千葉県在住,53歳,男性)
【評価:★★★★】
- こんなに笑えて泣ける映画がありますか! 今までの韓国映画の認識を180度変えざるをえない作品。この映画が日本でもヒットしないわけはないが、あんまりにもヒットしちゃうとちょっと寂しい。でもやっぱり日本で大ヒットしてほしい。(東京都在住,39歳,男性)
【評価:★★★★★】
- ふてくされたチョン・ジヒョンがいい。(千葉県在住,男性)
【評価:★★★★】
- 私はチャ・テヒョンのファンです。だからというのではないですが、この映画のナレ−ションがとても好きです。素晴らしいと思います。映画は韓国で見たのでまだ十分理解出来てないのですが、それでも笑えたし泣けました。是非沢山の人に見ていただきたい映画です。香港でも今公開されててヒットしているようです。(福岡県在住,33歳,女性)
【評価:★★★★★】
- すごく面白かったです。日本語版のDVDが出るのを今から楽しみにしています。(東京都在住,23歳,男性)
【評価:★★★★】
- 僕はこの作品凄く気に入ってます。名作とか傑作といったタイプの作品ではないので<4>を付けましたが、お気に入り度からすると十分<5>クラスですね。何がイイって、さんざん笑わせときながら最後はしっかりとホンワカさせてくれるその絶妙なサジ加減がいいですね。構成がしっかり<前半戦><後半戦><延長戦>と分かれているところもメリハリが利いてて、最後まで飽きずに見られる要因では。あと、ちょっとした有名作品のパロディがあるところも映画好きには嬉しいジョークですね。そしてこの作品を面白くしている最大の要因はなんといっても主演の二人の好演でしょう。まずチャ・テヒョンですが、この作品が公開されたらタイプは少々異なりますがウォンビンの時のような反響があるのでは。コミカルな演技はまさにはまり役です。そして、チョン・ジヒョンこそ、この映画の成功の立役者。『イルマーレ』の時とは正反対の弾けた役柄を伸び伸びこなしてました。彼女一人で「喜怒哀楽の見本市」をしているかのようでした。作品自体は終始この二人を中心に展開していくので、セリフの掛け合いの出来が重要になってくるのですが、その点も申し分無いですね。小気味良く進んでいきます。何はともあれこの作品は、<脚本><人材>の両面で、現在の韓国映画の勢いそのままに飛び出して来た逸品という感じがします。(東京都在住,22歳,男性)
【評価:★★★★】
- 私は今韓国に留学していて、その時に見たのだけど、とてもリズムカルな映画だし、実際にあったってところが本当に胸にくるし、最後の方は本当に切なくて泣けてしまった。主演の女の子がすごい面白いし、でもかわいいし、切なくてよかったです。(静岡県在住,20歳,女性)
【評価:★★★★】
- 私自身はあざとさが目に付いてあまり好きではなかった。(埼玉県在住,22歳,女性)
【評価:★★★】
投稿者:Moogieさん 投稿日:2003/2/10 03:14:04
韓国のテレビ・ドラマによくあるパターンの、ヒロインはお金持ちのお嬢様、その父親はたいてい交際に反対、そしてどちらかが外国へ行ってしまう、そんなありきたりの背景は差し引き、また、ここ数年の韓国映画からそのまま頂いたようなシーン、ポーズ、カメラ・ワークなどありましたけど、それも差し引いたとしてもかなり楽しめました。
笑える場面は確かに多いけども、決してコメディではないですよね。笑える映画で済ましてはいけないと思います。一般的に男性を立てて生きて行かなければいけない韓国女性の普段のうっぷん晴らしの代弁映画でもあり、また、タバコの投げ捨てなどを注意するなど、道徳や正義感を遠回しに植え付けようとする(大げさかな)、そんな映画として私は見ていました。でもやはり一番のテーマは、「偶然」と「運命」であったでしょうか。
もしあの女の子が可愛くなかったらどうだろう?と考えると、やはり外見主義の世界でしか成立しない映画かもしれません。でもあの子のあの「にらみ」は大好きです。にらまれる快感を味わうだけでも見る価値のある映画かもしれません。目で会話ができるっていいですよね。
お下品なシーンや人を叩いたりするところなどは日本のドリフターズを思い出しました。志村けんの電車内のコントそのままだったですよね。
おもしろい映画ではあったものの、ちょっと長く感じたのは不思議です。なくても良かったようなシーンがあったのと、もうひと味足りないかなということで私は星四つですが、韓国映画には珍しく(?)ハッピーエンドだったので星四つ半にしておきます。
【評価:★★★★】
投稿者:たびこさん 投稿日:2003/3/3 22:32:41
電車のシーンではあやうくもらいゲロするところでした。彼女の外見と言動のギャップが奇をてらっただけのような気がして、あまり期待をしてなかったのですが、いつのまにか目を離せなくなっていました。ずっと気の強い彼女に振り回されっぱなしの優男にしか見えなかった彼も、最後には本当にかっこよく見えました。
ハリウッドでリメイクの話があるそうですが、韓国だから面白いような気がするんですが・・・
意外にも最近見た中では、一番のおすすめ。
【評価:★★★★★】
投稿者:Dalnaraさん 投稿日:2003/7/8 00:32:32
はじめまして、こんばんは。いつも楽しく拝見しております。今日七夕の日に、映画『猟奇的な彼女』のこと、キョヌのことがまた思い出されました。
「運命は努力する人に橋をかけてくれる」といった言葉が映画に出てきますが、今日、朝鮮半島の七夕伝説を思い出しました。半島ではかささぎが天の川に橋をかけてくれるそうです。キョヌ(牽牛)と橋と、半島の七夕伝説が結びついているのかもしれない、と思いました。
最後に、僭越ながらお知らせいたします。韓国映画についてはまだあまり書いておりませんが、日本と韓国の文化などについて雑文をwebの日記形式で書きはじめました。
http://diary.lycos.co.jp/view.asp?QnDiaryID=55406
「Dalnara暦」です。
以上つたない短評ですが、よろしくお願いいたします。
【評価:★★★★】
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