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私にも妻がいたらいいのに


画像提供:駐日韓国大使館 韓国文化院(以下、同じ)


題名
英題
ハングル
私にも妻がいたらいいのに
I wish I had a wife
나도 아내가 있었으면 좋겠다
製作年 2000
時間 106
製作
提供

配給
共同提供
 
サイダス
アイ・ピクチャーズ
無限技術投資
シネマ・サービス
コエル創業投資
Intz.com
監督 パク・フンシク
出演 チョン・ドヨン
ソル・ギョング
チン・ヒギョン(特別出演)
ソ・テファ
ホ・ジャングン
ミン・ギョンジン
チェ・ユソン
パク・ナミ
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 平凡な男女が主人公のナチュラル・ラブ・ロマンス。何気ない日常の出来事を通して、主人公たちの心理を繊細かつユーモラスなタッチで描いた話題作。

 30代で入社3年目の銀行員キム・ボンス(ソル・ギョング)。彼は、ある日、地下鉄の中で他の人は皆携帯電話で誰かと話をしているのに、自分には電話をする相手一人いないことに気づき、愕然とする。しかし、彼が勤める銀行の向かい側にある補習学院(日本でいう「塾」)には、彼を遠くから熱いまなざしで見つめる塾講師のチョン・ウォンジュ(チョン・ドヨン)がいた。二人は毎日のように会う仲だが、ボンスはウォンジュの気持ちに気付かないでいる。そうこうしているうちに、入院がきっかけで再会した大学の同窓生テラン(チン・ヒギョン)と付き合い出すボンス。彼はテランに結婚を申し込もうと意を決して彼女の店へ行くが、そこで彼女の事業が失敗したことを知る。またまた結婚が遠のいてしまったボンスだが、皆が退社した銀行に残った彼は監視カメラに録画されたテープの中にウォンジュの姿を発見する。

 ソル・ギョングが初めてコミカルな演技に挑戦。結婚したくてしょうがない割には、自分の近くにいる宝石のような女性を見つけることが出来ないでいる銀行員を演じ、見事な手品の腕前も披露している。チョン・ドヨンは、ソル・ギョングを愛する平凡な塾講師として出演。今回は、パク・チュンフンにも勝るとも劣らない八面相ぶりを発揮しており、その、くるくる変わる表情は必見。なお、この作品での彼女のギャラは2億ウォンで、これは女優の歴代最高出演料となる。チン・ヒギョンはボンスの大学同窓生で、彼と付き合う女性テラン役で特別出演。

 題名にもなっている「私にも妻がいたらいいのに(ナド アネガ イソッスミョン チョッケッタ)」は、『フェリーニのアマルコルド』(AMARCORD,1974年)の台詞からの引用で、劇中では男女主人公のボンスとウォンジュの二人がこの台詞を言う。韓国語の「ナ」は意味的には「僕」と訳したほうが良いが、女性主人公も同じ台詞を言っているため「私」と訳してみた。

 本作品で監督デビューしたパク・フンシクは、1965年生まれで延世大学天文学部と映画アカデミー8期を卒業し、『あの島へ行きたい』『美しき青年 全泰壱』の演出部、そして『八月のクリスマス』の助監督を担当した人物。

 なんともほんわかとしたムードを漂わせる音楽は映画の内容にベスト・マッチ。この映画で音楽を担当したのは『八月のクリスマス』のチョ・ソンウ。メランコリックな雰囲気が心地よいタイトル・ソング『私にも妻がいたらいいのに』を歌うのはイ・ヒョヌ。彼は1991年に『夢』でアイドル・スターになった歌手だが、映画関連では『土曜日午後2時』にラジオのDJ役で友情出演している他、『ホワイトクリスマス 恋しくて、逢いたくて』のサントラ製作に参加したり、インターネット映画『メイ』(2000)に主演したりしている。

 脚本は監督のパク・フンシクとチャン・ハッキョ、チェ・ウニョンの3人。製作はチャ・スンジェ。撮影は、成均館大学社会学科と映画アカデミー11期を卒業したチョ・ヨンギュ。彼は、故ユ・ヨンギル撮影監督のアシスタントとして映画界入りし、ポン・ジュノの短編『支離滅裂』(1994)を皮切りに、『ラブラヴ』『バッドムービー』の35mmと16mmの撮影,『美術館の隣の動物園』『ほえる犬は噛まない』『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』の撮影を担当している。

 ドライブ・シアターでデートする場面で上映されていた映画は、『少女たちの遺言』

 第37回(2001)百想芸術大賞最優秀女子演技賞(チョン・ドヨン)・新人監督賞(パク・フンシク)受賞作品。

 第14回(2001)東京国際映画祭協賛企画コリアン・シネマ・ウィーク、第22回(2002)Fantasporto国際映画祭新人監督週間部門招待作品。2002年韓国文化院開院23周年記念『韓国映画特別週間』、大阪韓国映画祭2002上映作品。

初版:2001/2/1
最新版:2001/12/24


【ソチョンの鑑賞ノート】

2001年2月1日執筆

 2001年1月13日、ソウルの中央シネマで鑑賞。15日にもシネコア劇場で再度鑑賞。

 製作は『八月のクリスマス』のウノ・フィルム(現、サイダス・ウノ・フィルム)、監督は、『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督の弟子であるパク・フンシク、音楽は『八月のクリスマス』のチョ・ソンウ、撮影は『八月のクリスマス』の撮影を担当した故ユ・ヨンギル撮影監督のアシスタントとして映画界入りし、『美術館の隣の動物園』,『ほえる犬は噛まない』,『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』などの撮影を担当したチョ・ヨンギュ、そして、日常のさりげない出来事を繊細なタッチで描いた恋愛映画。主演はソル・ギョングとチョン・ドヨン・・・

 事前にこれらの情報を頭にインプットしていたので、これはもう『八月のクリスマス』級の傑作を期待して見に行ったのですが、ちょっと期待し過ぎでした。特別、どこが悪いとは言えないのですが、全体的にテンポが悪いと言うか、だらだらしているというか。『八月のクリスマス』も『美術館の隣の動物園』も、様々な愛らしいエピソードが積みあがって行って最後の感動に至るわけですが、『私にも妻がいたらいいのに』は、監督の演出力に差があるのか、リズム感がなく「退屈」と感じることもしばしば。

 この映画は繰り返しがとても多い作品です。ソル・ギョングは達者な手品を3回披露しますし(ファンの方は必見!)、チョン・ドヨンは銀行のATMの監視カメラに向かって可愛らしい素振りで何度も話し掛けます(これまた、ファン必見!!)。そして、映画の最初に出てくる花びら占いはその後も何度も出てきます。細かい描写や小道具に凝っていて、見終わった時には

  1. 手品を習いたくなる
  2. 監視カメラに向かって話し掛けたくなる
  3. ヤクルトを底のほうから反対にして飲みたくなる
  4. 眼鏡をかけたくなる
  5. 『シネ21』の巻末にある割引券をひきちぎりたくなる
  6. 花びら占いをしたくなる
等など不思議な効果がある作品です。が、逆に何度も反復し過ぎなのか、反復のポイントがずれているのか、前述の通りどうも「退屈さ」を感じてしまう。一例を挙げましょう。

 冒頭ではボンスの幼少時代の思い出が描かれています。雨の中、自宅に大急ぎで帰ってくる中学生。しかし、次の角を回れば家が見えるというところで、ボンス少年は立ち止まって、木の枝を折り、葉っぱを一枚ずつちぎりながら占いを始めます。

「おんまが、とらがっしょった(お母さんは死んでる)」
「あにだ(いや、生きている)」

 そして「生きている!」という声と共に最後の一枚を引き千切り、角から首を突き出して家の方を見るボンス少年。しかし、門の前には「謹弔」の提灯が・・・

 という訳で、恋愛映画でありながらも「死」をテーマにしているのかと(ついでに言えばウォンジュも小さい頃に父親を亡くしているという設定)、これまた『八月のクリスマス』を連想して、期待度が更に跳ねあがったのですが、その後、花びら占いは繰り返されますが、幼少時代の親の死が二人の性格に影響を与えているようには感じられませんでしたし、それに関するエピソードもありませんでした。このあたりの描写を入念に行えばまた違った魅力のある作品に仕上がったと思うのですが・・・

 悪くはないけれどとりわけ良い点もない、とても印象の薄い映画でした(2回見て2回とも途中うとうとしてしまいましたし)。

 『美術館の隣の動物園』と同じく、とてもとてもキュートな映画で、劇中、ソル・ギョングの手品の腕前と、チョン・ドヨンの可愛らしさは際立っていましたが、最後の結末には、ちょっと腑に落ちない部分があります。

 ウォンジュ(チョン・ドヨン)は、ボンス(ソル・ギョング)を想って、そこはかとなくアプローチをかける、例えば、退社したボンスに「蛍光灯の調子が悪いから見に来て!」と頼んで帰りに「お茶でも・・・」と軽く誘ったり、銀行の窓口で書類に「お昼でもご一緒に」と書いたり、意地らしいことを色々やるんですが、ボンスは旧友のテラン(チン・ヒギョン)になびいてしまい、まるで相手にしない。そして、ウォンジュは一旦は彼のことを諦めるのですが、テランと別れてウォンジュのことが気になり始めたボンスが、やっと彼のほうから誘うと、多少バス停でじらすものの、あっさりオーケーしてしまう。一途に思う可愛い女性と言えばそれはそうなんですが、ひねた私などは「男から見たら、随分都合のいい女性だなぁ〜」などと思ってしまったのでした。

 ウォンジュは、ボンスとテランの関係は知らないので、映画的にはハッピーエンドで良いのかも知れませんが、「映画みたいな素敵な恋でも、裏にはドロドロしたものがあるのよねぇ〜、あの後、ボンスはテランとの関係をウォンジュに、どの面さげて告白するのかしら?(笑)」とクールに見てしまった私は、あまりこの映画にのめりこめませんでした。

 『美術館の隣の動物園』は女性に対する細やかな観察力が際立った映画でしたが、『私にも妻がいたらいいのに』はその対極にあるような映画で、結婚できない男に対する細やかな観察力が発揮されています。そして、ソル・ギョングも「なる程、それでは結婚できないよ」と思わせるリアリティを持ってボンスを演じています。加えて、チョン・ドヨン演じるウォンジュは明らかに「男性から見た理想の女性像」。

 『私にも妻がいたらいいのに』は、『美術館の隣の動物園』とセットで鑑賞されると対照的で面白いかもしれません。



投稿者:SUMさん 投稿日:2002/5/26 21:49:51

 チョン・ドヨンが、たぶんいちばんダサイ役で出ている映画。でも、『ファースト・キス』チェ・ジウ『ミスター・マンマ』チェ・ジンシルに通じる、男心をくすぐるイケテなさ。シーンの一つ一つは楽しめる。

 ただ、伏線になりそうなものが、全部からぶっているのはなんだろう。主人公二人とも片親を小さい頃に亡くしていること。二人ともがそれぞれ別のところでふと口にする「私にも妻がいたらいいのに」というセリフ。ソル・ギョングの謎の独白ビデオ。ソル・ギョングの手品。去ってしまったテラン(捨ててはいないと宣言しているのに)。なんだったんだろう。

【評価:★★★★】


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