失業と借金に苦しむ中年夫妻が主人公で、家族の大切さと愛の意味を問う作品。平凡な中産階級の家庭が危機に際し、なんとか資金繰りしようとする様をリアルに描いて話題となった。題名の「ベサメムーチョ」は「熱くキスして」という意味のスペイン語。
チョルス(チョン・グァンニョル)とヨンヒ(イ・ミスク)は結婚十年目の中年夫婦。四人の子供がおり、小さな家を持つのが夢だ。そんなごく平凡な家庭に、ある日とんでもない災難が降りかかる。夫のチョルスが突然失業したのに加えて、借金による破産の危機に直面したのだ。チョルスとヨンヒは家計をなんとかするために東奔西走するが、そんなある日、ヨンヒは、学生時代に自分を慕っていたハン・ジフン(ハン・ミョング)と偶然再会する。彼は今や大成功した企業人だ。そして、その数日後、彼女はジフンからある提案を受ける。その提案とは「一億ウォンやるから、一晩を共にしてくれ」というもの。一方、若い資産家ジュニョク(チョ・ウォニ)の下で働くようになったチョルスにも、ジュニョクの妻ソリン(ホン・スンヒ)からの誘惑が迫る。
MBCの人気時代劇『ホ・ジュン』でブレイクしたチョン・グァンニョルが夫のチョルスを好演。1962年2月生まれで、1980年にTBC22期タレントとしてデビューしたチョン・グァンニョルは、『総合病院』、『Advocate』、『薔薇と豆もやし』、『青春の罠』など人気テレビ・ドラマへの出演経験はあるが、映画出演はこれが初めて。なお、チョン・グァンニョルは十年程前に事業に失敗して借金の山を背負った経験があり、この作品のシナリオを見たとき思わず涙したという。妻のヨンヒを演じるベテラン女優イ・ミスクは相変わらずの貫禄の演技。金でチョルスを誘惑する妖艶なソリンを演じたホン・スンヒは、1994年のスーパー・モデル出身。映画はこれは初めての出演となる。
主演のベテラン俳優二人の演技に加えて、四人の子供を演じた子役俳優、ペク・ソンヒョン(長男ジオ役)、チョン・ファヨン(長女ジャドゥ役)、ユ・ヒョンジ(次女ヨンドゥ役)、キム・ヨンチャン(末っ子の次男ヘオ役)の天真爛漫な演技が主婦層の観客の涙腺を刺激して好評。ちなみに、1994年生まれで最年少のキム・ヨンチャンを除いて、彼、彼女等は既にテレビ・ドラマなどで活躍しているベテラン子役。
この作品でデビューした監督のチョン・ユンスは、1971年にソウルに生まれ、中央大学映画学科卒。これまで、短編映画の『季節の変わり目』、『グッバイ・ソウル 新派』、『何事もなかった日』を演出しており、1993年に大学の卒業作品として製作した『グッバイ・ソウル 新派』で第3回シニョン映像芸術祭優秀賞、第10回韓国創作短編映画際審査委員特別賞・脚本賞・音楽賞を受賞し、商業映画界からも注目を受けた人物。ほかに、第4回(1999)釜山国際映画祭の予告編を演出した経験もある。長編劇映画では、カン・ジェギュの『銀杏のベッド』と『シュリ』の演出部で修行しており、『シュリ』では脚色も担当した。
製作社はカン・ジェギュ監督の姜帝圭フィルム。企画・製作はカン・ジェギュ。脚本は監督のチョン・ユンスほか、キム・ソンミ、チャン・ジェヨンが執筆。音楽はイ・ドンジュン。撮影は『銀杏のベッド』のパク・ヒジュ。編集はパク・コッチ。セットはオ・サンマン。
韓国では、チョン・ハナによりノベライズ化された小説も出版された。
第25回(2002)黄金撮影賞銅賞(パク・ヒジュ)・準会員賞(パク・チュヒョン)・新人監督賞(チョン・ユンス)受賞作品。
初版:2001/8
最新版:2001/9/15
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