永遠に忘れられないような「不朽の名作」を作りたいと思っているポルノ・ビデオ専門監督が、いつかは自分の名前で小説を出したいと願っているゴースト・ライターと出会って恋に落ちるラブ・ストーリー。今時のオシャレな恋とは一味違ったオールド・ファッションな恋愛物語で、10年から20年前に流行った曲や昔ながらの食事風景、サーカス団、バナナ牛乳などのアイテムが見る者の郷愁を誘う。
インギ(パク・チュンフン)は母が作った借金を返すために止むに止まれずポルノ・ビデオを撮っている監督。彼の夢は文字どおり「不朽の名作」を作ることだが、彼にはアイディアを文字にする、つまりシナリオを書く能力が欠落している。ある日、構想中だった映画のアイディアを先輩の映画監督ミョンジュン(ファン・インソン)に話したところ、彼は出版社でゴースト・ライターをやっているヨギョン(ソン・ユナ)を紹介すると言う。そして、ヨギョンと会ったインギは彼女に一目惚れ。性格的に意気投合した二人はインギのアイディアを『死の人間爆弾』というシナリオにする。
『死の人間爆弾』は、スター団員が去り、経営難に陥ったサーカス団のピエロが、愛する団長の娘のために、そしてサーカス団の再建のために、団長の娘がいなくなったスター団員に恋焦がれているのを知りながら、無理な曲芸に挑んで死んでしまうという悲劇だ。そして、現実の世界では、インギがヨギョンに恋心を抱いているが、ヨギョンはミョンジュンを愛しており、ミョンジュンはヨギョンがゴースト・ライターをしている有名女優ソンミ(ソ・ジノ)と恋人関係。加えて、ポルノ女優のチニ(キム・ヨラン)はインギに思いを寄せている。インギのヨギョンに対する恋心の行く末は? そして「不朽の名作」を作るという彼の夢は成就するのだろうか?
『美術館の隣の動物園』と同じく、劇中劇の構成になっており、この映画の中では、実際に製作費2億ウォン余りが投入され、映画『死の人間爆弾』が作られている。
パク・チュンフンと、『ミスターQ』,『折り鶴』,『Advocate』,『乞食』,『Bad Friends』などのTVドラマで人気のソン・ユナが初共演。助演陣では、1970年代に美男タレントとして鳴らし、最近ではSBSのTVドラマ『トギ』にも出ているペク・ユンシクがポルノ・ビデオ会社の社長役で出演。また、劇中インギが演出するポルノ・ビデオの主役チニを演じる新人女優キム・ヨランの演技が好評。彼女は1976年生まれでソウル芸術大学放送演芸科卒。KBSスーパータレント2期でデビューし、KBSの『青い鳥はいる』、『王と妃』などに出演している。映画は『穴』に続き『不朽の名作』が二作品目。その他では、CMモデル出身のイ・ジヒョン(21歳,169cm,43kg)が、この映画でスクリーン・デビューしている。
パク・チュンフンと親しいシン・ヒョンジュンが、映画俳優の本人役で特別出演しているが、劇中の彼とパク・チュンフンのやり取りはシン・ヒョンジュンの2000年出演作を頭に入れて聞くと笑える。他にも『彼は私にチータを知っているかときいた』(1997)の監督ク・ソンジュが古本屋の主人役で、またSBSの『一晩のTV演芸』のリポーターとして活躍しているチョ・ヨングがリポーター役でカメオ出演。チョ・ヨングは劇中でもファン・インソンとソ・ジノの結婚発表記者会見をレポートする。
この作品が監督デビュー作となるシム・グァンジンは、1966年生まれ。中学3年の時までは音楽狂だったが、映画狂の友人と『テス』(1979)がカンヌで賞を取るかどうかの賭けをして負けたのがきっかけで映画に関心を持つようになる。当初は評論家を夢見ていたが、高校生の時にハ・ギルチョン監督追悼行事で『馬鹿たちの行進』(1975)を見てから韓国映画を再評価し監督を志すようになる。漢陽大学演劇映画科卒を卒業し、チャン・ソヌ監督の『私からあなたへ』(1994),『つぼみ』(1996)で演出部を、ク・ソンジュ監督の『彼は私にチータを知っているかときいた』(1997)で助監督を担当。なお、シム・グァンジンは1997年頃に、デビューを予定していた映画社が倒産し、随分と苦労した経験を持つ。劇中のインギのようにポルノ・ビデオを撮った経験はないが、才能を生かすことが出来ないでいるという主人公の設定には、監督の個人的経験も入っており、韓国映画産業の現状が投影されている部分もある。また、監督は2年前に『不朽の名作』のシナリオをパク・チュンフンに見せて出演依頼をしたが断られ、以来2年に渡る修正を経て完成したシナリオ完成稿を見て、パク・チュンフンが出演を承諾。シネマ・サービスの投資も決まり、製作が決定したという経緯がある。
製作はカン・ウソク。脚本はキム・ユニョンと監督のシム・グァンジン。
製作にあたって実際のポルノ・ビデオ撮影現場をスタッフ・俳優が視察した。また、劇中のポルノ・ビデオの題名として、原題『ハッカ飴』の『ペパーミント・キャンディー』が『パガ(突っ込め)飴』、原題『オー! スジョン』の『秘花 〜スジョンの愛〜』が『オー! 発情』、そして、原題『人情事情お構いなし』の『NOWHERE 情け容赦無し』が『奥様の事情お構いなし』というパロディ題名となって登場する。日本も同じだが、韓国でもヒットした映画の題名をもじった題名をポルノ・ビデオの題名にするのは実際によくあること。
初版:2001/1/7
最新版:2001/1/27
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