人間の性欲を写実的に描く「高品質ポルノグラフィー」を標榜する作品。『明日に流れる川』(1995)のパク・チェホ監督第四作。
舞台は1980年代の光州。反社会運動で警察に手配され郊外の村に潜伏した学生サンホ(リュ・スヨン)は、木造アパートの二階に住んでいた。そこで、下の階に住む人妻ヒラン(キム・ジヒョン)を偶然盗み見てしまった彼は、やがて小さなのぞき穴から見る彼女に恋をしてしまう。彼女は、刑事テヨル(チェ・チョロ)に体を奪われ、無理やり彼と結婚させられた上に、ほとんど監禁状態の生活を送っていた。ある日、テヨルが落とした鍵を拾ったサンホは、ヒランの部屋に入り激しい情事を繰り広げるのだが・・・
刑事の夫、彼に強姦された妻、そこへ逃げ込んできた学生運動家といった三角関係の設定に、光州事件の起った1980年代の抑圧された韓国社会が暗喩されている作品だが、評壇では、セックスを見せ場にする作品なのか、抑圧された社会状況の比喩を目的とした作品なのか、どっちつかずだと酷評された。
人気グループ "Roo'Ra" のリ―ドボーカル、キム・ジヒョンがこの映画で映画俳優としてデビュー。オール・ヌードのセックスシーンを披露し、一部で「本番をしているのでは?」と噂になるほどの大熱演を見せたが、彼女のファンからは「社会の偏見に屈せず自分のやりたい仕事をした」、「歌手として成功しているのに敢えて脱ぐ必要があったのか?」など賛否両論の声が聞かれた。彼女の濡れ場が事前に大きな話題になった割には満足のいく興行成績をあげることはできなかったが、情事シーンのノーカット・メイキング・フィルムが見られる18禁の公式サイトは大人気で、公開から二週間ほどで300万を越えるアクセスがあった。
SBSドラマ『愛と離別』で顔を知られるようになったリュ・スヨン(22)がこの作品でスクリーン・デビュー。
脚本はユ・ガビョル。製作はチャ・スンジェ。美術はオ・サンマン。2億ウォンを投入して、ソウル総合撮影所にセットを作って撮影した。
エロティックな内容のため、劇場予告編とポスターがなかなか審査をパスできず、ポスターだけでも10種類以上が不合格になった。加えて、映像物等級委員会の審査をパスしたと思ったら、今度は地下鉄広告への掲載を拒否されるなど波乱含みの宣伝活動となった。また、公開前から「住民登録番号」を入力しないと見られない18禁の公式サイトで、情事シーンのノーカット・メイキング・フィルムと予告編を公開したところ、アクセス過多でサイトがダウンし話題となった。その一方で、濡れ場に対する期待感を煽るため、敢えて一般試写会は行わずに封切りするという珍しい戦略も取られた。
第6回(2001)女性観客映画賞私たちの地獄賞(女性観客が選んだ今年最悪の韓国映画)受賞作品。
初版:2001/6/11
最新版:2001/12/28
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