子猫をお願い
画像提供:オフィス・エイト
題名 英題 ハングル |
子猫をお願い Take care of my cat 고양이를 부탁해 |
製作年 |
2001 |
時間 |
112 |
製作 提供 共同提供 配給 |
魔術の笛 アイ・ピクチャーズ 無限技術投資 映画振興委員会 Intz.com WARNER BROS.PICTURES |
監督 |
チョン・ジェウン |
出演 |
ペ・ドゥナ イ・ヨウォン オク・チヨン イ・ウンシル イ・ウンジュ オ・テギョン キム・ファヨン(特別出演) |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video DVD |
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20歳の女性五人の成長物語。猫を預かる事になった女子高校同窓生の女の子五人の日常を通じ、20代初めの女性の実態、そして夢と愛と挫折を、みずみずしい感性で描いた作品。
気立てはいいがちょっと突拍子もないことをするユ・テヒ(ペ・ドゥナ)、可愛らしいシン・ヘジュ(イ・ヨウォン)、絵が得意なソ・ジヨン(オク・チヨン)、明るい中国系の双子姉妹オンジョ(イ・ウンジュ)とピリュ(イ・ウンシル)。五人は、仁川の女子商業高校を卒業した同窓生。いつも一緒の仲良しだった彼女達だが、20歳になり、みな異なる道を歩み始め、それぞれの悩みを抱えるようになる。テヒはボランティアで知り合った脳性麻痺の詩人と愛を育みはじめ、キャリアウーマンとしての成功を夢見るヘジュは、ソウルの証券会社に就職するが高卒の彼女は職場ではただの雑用係扱い。両親がおらず祖父母と一緒にバラック小屋に住むジヨンは、美術の才能をいかしてデザイン関係の仕事をしたいが、経済的な理由で疲れきっている。そして、自ら作ったアクセサリーを道端で売り、生活している双子姉妹。ある日、ジヨンは可愛らしい迷い猫ティティを拾い、ヘジュの誕生日にプレゼントするのだが・・・
劇中、実際に子猫が登場するほか、単独行動を好み簡単には心を開かない神秘的な動物=猫と、20歳の女性の行動・心の内をダブらせた内容。
主役五人を演じた若手女優陣の演技が大好評。誰も理解できないような恋を始めるテヒを演じたペ・ドゥナは元々「犬派」だったのが、この映画に出演することによって、猫好きになったとか。『アタック・ザ・ガス・ステーション!』でガソリンスタンドでバイトをするカルチを演じていたイ・ヨウォンがキャリアウーマンを夢見る女の子ヘジュを演じる。1997年以降、主にCMやファッションショー・雑誌のモデルとして活躍してきたオク・チヨン(玉志英)が、オーディションでジヨン役を射止め、この映画でスクリーン・デビュー。劇中で双子の姉妹を演じたのは、実の双子姉妹イ・ウンジュとイ・ウンシル。彼女たちの明るい演技が話題となったが、二人は『純愛譜−じゅんあいふ−』でイ・ジョンジェが勤める役所に住民登録証の写真を撮りに来る双子として出演しているほか、CM・ドラマなどにも二人で出演している。姉のウンジュは明知大学演劇映画科、妹のウンシルはソイル大学演劇映画科の学生。
『異邦人』、『女校怪談』、『少女たちの遺言』のプロデューサーとして知られるオ・ギミンが設立した映画社「魔術の笛」創立作品。製作はオ・ギミン。製作投資はチャ・スンジェとチェ・ジェウォン。
この映画がデビュー作となるチョン・ジェウン監督は、韓国芸術総合学校映像院1期出身の女流監督。ちなみに彼女は猫マニアとか。シナリオは監督のチョン・ジェウンと、この映画で助監督をつとめているパク・チソン。脚色はキム・ヒョンジョンとイ・オニ。撮影監督は、『美しき青年 全泰壱』、『三人友達』、『美術館の隣の動物園』、『ほえる犬は噛まない』、『私にも妻がいたらいいのに』などの撮影部で修行をし、デジタル・インターネット・ムーヴィー『カミングアウト』(キム・ジウン監督)と『たちまわLee』(リュ・スンワン監督)でカメラを担当したチェ・ヨンファン。長編劇映画の撮影監督としてはこれがデビュー作となる。照明監督は、1984年に『ザ・マーニム(原題:恣女木)』の照明部で映画界入りし、『モーテルカクタス』で照明監督デビューしたパク・チョンファン。彼は、『家族シネマ』、『イ・ジェスの乱』、『ほえる犬は噛まない』、『寵愛』、『私にも妻がいたらいいのに』の照明も担当している。音楽はチョ・ソンウが所属する韓国初の映画音楽専門プロダクションM&F;。
一般には、若くて美しく消費社会の象徴として認識されている20代の女性とはかなりのギャップのある、例えば江南の瀟洒なブティックではなく東大門市場でリーズナブルな洋服を購入するのにもあれこれ悩む女性、そんな若い女性の平凡な生活空間を几帳面なまでにリアルに描いて高い評価を受けた。また、劇中で使用される若者の必須ツール=携帯電話や、タイプライターのメッセージを独特な方法でスクリーンに映し出すなど斬新な手法も目立つ。
「2001年の韓国映画界の収穫、『鳥肌』に続く光る処女作」など、評論家からは大絶賛され、公式サイトの掲示板では「推奨運動をしよう!」といった書き込みも見られたが、興行的には同時期公開されていた『花嫁はギャングスター』、『ガン&トークス』に押されて完全な失敗に終わった。しかし、上映終了後もこの映画を見て感動したファンやアーティスト、評論家等が再公開運動を展開し、ソウルとこの映画の舞台となった仁川で再上映が実現。特にソウルでの興行は好調で再上映にもかかわらず拡大公開され、話題となった。
第6回(2001)釜山国際映画祭「新しい波」部門、第31回(2002)ロッテルダム国際映画祭コンペ部門、第52回(2002)ベルリン国際映画祭フォーラム部門、第16回(2002)フリブール国際映画祭、第24回(2002)クリテイユ国際女性映画祭長編劇映画コンペ部門、第17回(2002)パリ映画祭コンペ部門、第15回(2002)シンガポール国際映画祭、第4回(2002)ブエノスアイレス国際独立映画祭、第26回(2002)香港国際映画祭、第16回(2002)ワシントン国際映画祭、第5回(2002)ハワイ・スプリング国際映画祭(11月に開催されている正規のハワイ映画祭とは別に1998年から春に開かれている映画祭)、第28回(2002)シアトル国際映画祭Contemporary World Cinema部門、スペインのシネマ・ラブ国際映画祭、第56回(2002)エジンバラ国際映画祭Rosebud部門、第26回(2002)モントリオール国際映画祭シネマ・オブ・トゥモロー部門、第27回(2002)トロント国際映画祭ナショナル・シネマ・プログラム部門、第11回(2002)ドイツ・フェミナーレ女性映画祭コンペ部門、2002年ウィーン国際映画祭招待作品。
第31回(2002)ロッテルダム国際映画祭ではオランダ批評家協会が授けるKNF賞Special Mentionを、第11回(2002)ドイツ・フェミナーレ女性映画祭ではデビュー賞を受賞。第6回(2001)釜山国際映画祭「新しい波」部門Special Mention・アジア映画振興機構(NETPAC)賞、第21回(2001)映画評論家協会賞主演女優賞(ペ・ドゥナ)、第22回(2001)青龍賞新人女優賞(イ・ヨウォン)、2001年今年の女性映画人賞(チョン・ジェウン)・女性映画人賞演技賞(ペ・ドゥナ)、第9回(2001)春史羅雲奎映画芸術祭企画賞(オ・ギミン)・主演女優賞(ペ・ドゥナ,イ・ヨウォン,オク・チヨン)・審査委員特別賞(チョン・ジェウン)、第6回(2001)女性観客映画賞女性観客天下賞(女性観客が選んだ今年最高の韓国映画)、第38回(2002)百想芸術大賞最優秀女子演技賞(ペ・ドゥナ)・新人女子演技賞(イ・ヨウォン)、第3回(2002)釜山映画評論家協会賞主演女優賞(ペ・ドゥナ)、第1回(2002)MBC映画賞新人監督賞(チョン・ジェウン)受賞作品。
日本ではノベライズ『子猫をお願い』(チョン・ジェウン、前川奈緒、竹書房文庫 HR 2)が出版されている。
初版:2001/10/13
最新版:2002/3/14
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■ 「日韓映画バトル」で初来日のチョン・ジェウン監督随行記
2003年に「日韓映画バトル」で初来日されたチョン・ジェウン監督の随行記はこちら。
■ アジアフォーカス・福岡映画祭2003 リポート
チョン・ジェウン監督が来日されたアジアフォーカス・福岡映画祭2003のリポートはこちら。チョン・ジェウン監督の独占インタビュー(『子猫をお願い』に関連した内容あり)はこちら。
■ 『子猫をお願い』をプッタカムニダ
岸野令子さんの特別寄稿「『子猫をお願い』をプッタカムニダ」はこちら。
投稿者:SUMさん 投稿日:2002/2/24 19:09:57
画像提供:CINEMA SERVICE
若い女性の描き方のしっかりした佳作。
途中から猫の出番が減って、猫ってこの映画にとってなんだったのだろう、というのがちょっと見えなくなるのが残念。
【評価:★★★】
投稿者:スガンさん 投稿日:2002/4/7 18:41:01
字幕なしで見たので、詳しくわかっていないかもしれませんが、自分のハタチくらいの頃を思い出しました。
画像提供:オフィス・エイト
一般的な道になっている大学進学という道に進まず、または進めず、働いたりフリーターだったりして自由な感じがするけど、実は本人達は「これで良かったのかな」と悩んでいる。
仕事がなかなか決まらずいらついてる子や、学歴で仕事が限定されてしまう子の苛立ちなんかは私も通ってきた道なので、すごく気持ちがわかりました。それからペ・ドゥナ演じる女の子が、家を出るのにワーキングホリディに行こうかと思っているようなとこがありましたよね。私も同じ事を考えて21才の時にオーストラリアへ行ったので、感慨深いものがありました。
今までは仲が良かったのに、状況が違ってくると話が合わなくなったり、嫉妬心や優越感が出て来たり、女の子の心理とはやっかいです(笑)。我が強い子がいたり、仲をとりもつニュートラルな子がいたりするのも良く描かれていました。そういう微妙なところがじーんと感じられて良かったです。
こういう点は、安田真奈監督の『イタメシの純和風』にも通ずるものがあると思いました。韓国では受けなかったようですが、日本では好まれるのではないでしょうか。
【評価:★★★★】
Review 『子猫をお願い』 − 漂泊少女 −
Text by 鄭美恵(Dalnara) 2004/7/11
高校生のときは月曜から土曜まで朝から夕方までいつもいっしょで、5人仲良く水平な関係を築いていた。卒業して1年、水平でわけ隔てなかった関係が少しずつ変化している。
一緒に写真を撮る時のように横に並んだ、水平だった友情が、社会に出てからは立場や環境の違いに足を引っ張られて上下しているのを肌で感じざるを得ない。映画は子猫のように安住する場所を探して、彷徨し漂泊する若者のみずみずしい瞬間を仁川(インチョン)の港町の風景で透視するように描いている。
テヒ(ペ・ドゥナ)は家業を手伝っている。その父親はかなりの男尊女卑で家では居心地の悪さを感じている。口述筆記のボランティアを続けていたり、友情の変化に敏感でどうにか5人仲良くしていこうと奮闘する。ヘジュ(イ・ヨウォン)は5人の中で唯一就職しているが、学歴による待遇の差を感じはじめている。一方ジヨン(オク・チヨン)はなかなか定職が見つからない。高校時代はヘジュと一番仲良しだったが、ヘジュとの距離を感じはじめている。ピリュ(イ・ウンシル)とオンジョ(イ・ウンジュ)は中国系の双子で、手作りのアクセサリーを露天で売っている。
ヘジュの誕生日を5人で祝うことになった時、求職中のジヨンは、お誕生日プレゼントも買えず子猫にリボンをつけてみる。子猫はその後5人の間を行ったり来たりするのだが、定職がなかったり進路が定まらなかったり、まだどこかふわふわと浮遊しているような5人と子猫が重なるようにも思える。
学生のときは意識していなかった、社会で生きていく、ということを、正面から受け止めようとする現代韓国女性が等身大に描かれている。モラトリアムというほど甘くない、辛口のリアリティが淡々と綴られる。仁川の港町に吹く風を受けるように社会の冷たさを頬で感じながら歩いていこうとする5人の姿。揺れる心や想いは頭の中と胸のうちをぐるぐる駆け巡っているのだろうが、映画ではすべてがストレートに言葉として発せられないかわりに行間を読むように風景を読み、映像を読むことを促される。街を少女たちの淡い心象風景としても受けとめられるような表現の繊細さが感じられた。女性監督チョン・ジェウンのデビュー作。
携帯電話をつかう場面が印象的な作品でもある。ハッピー・バースデーの演奏は5人そろって携帯で奏で、孤独もわびしさもないけれど、子猫に聞かせているのか、ジヨンが携帯電話の着信メロディーを屋根裏の部屋でつぎつぎに変えて鳴らす場面は切ない。家で音楽を鳴らす手段、聞く方法はそれしかないのかもと想像させる。ジヨンは仲間に「電話あんまりかけてこないね」と言われていたりもする。仕事中であろうと退屈な時は友人たちに次々と電話をかけるヘジュと対照的だ。携帯電話やタイプライターで打った文字が、風景の中に溶け込んで浮遊感と孤独感をうっすら感じさせる映像が心に残る。映像全体が、多くを語らない主人公たちの心象風景の一部になっているからだ。
ほかにも、まだまだ女性が生き難い韓国社会、中華街がある仁川、東南アジアから来た労働者、市民の訴えをなかなか聞き入れない役所、商業高校卒の学歴など、社会問題が遠景として静かに提起されてもいるが、主題はあくまで今の韓国の少女たちの心理的葛藤と自立を淡彩で描くことのようだ。観客が映画の行間を読むことができる抑えた表現が、かえって鋭敏に現代女性の心理を映し出している。
【評価:★★★★】
投稿者:ジプシー丈大さん 投稿日:2004/10/3 17:11:22
群像劇だけに、ドラマの構築度は決して高くはないが、ペ・ドゥナをはじめとする女の子たちが生き生きとした感じだった。特に、祖父母と古い家で暮らす失業中の女の子が、現代社会を象徴しているような感じで共感が持てた。
ただ、作品としてはこれといった山場もなく、同じようなトーンで後半は息切れだった。
【評価:★★★】
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