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情事


画像提供:ギャガ・コミュニケーションズ Kシネマグループ
(以下、同じ)


題名
英題
ハングル
情事
an affair
정사
製作年 1998
時間 107
製作
配給
ナイン・フィルム
シネマ・サービス
監督 イ・ジェヨン
出演 イ・ミスク
イ・ジョンジェ
ソン・ヨンチャン
キム・ミン
イ・ウヒョン
チェ・ミョンス
クァク・チュウン
キム・ミニョン
チョン・ヨンジュ
イ・ジウン

【特別出演】
キム・ドンホ
イ・ヨンナン
チョン・ギョンスン

日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 禁断の恋を描いた官能的メロ・ドラマ。日本でも、『鯨とり ナドヤカンダ』『その年の冬は暖かかった』,『桑の葉』,『冬の旅人』などで有名なイ・ミスクが10年ぶりに映画界に復帰。相手役は『若い男』,『火の鳥』,『朴対朴』のイ・ジョンジェ。また『結婚物語』『銀杏のベッド』『手紙』などで敏腕を振るったプロデューサーのオ・ジョンワンがシンシネから独立して製作した初めての作品でもある。

 建築家の夫ジュニル(ソン・ヨンチャン)と10歳の息子を持つ平凡な家庭の主婦ソヒョン(イ・ミスク)。彼女の妹ジヒョン(キム・ミン)が結婚することになる。しかし、ジヒョンはアメリカ在住で忙しい身。ソヒョンは妹に代わって結婚準備をすることになり、妹のフィアンセ、ウイン(イ・ジョンジェ)と会う。出会った瞬間からお互いに何かを感じる二人。そして、一緒に新居を探すことになったソヒョンとウインは次第に惹かれあうようになる。

 イ・ミスクとイ・ジョンジェの耽美的なまでに美しいセックス・シーンは必見。また、二人の激しい情熱を内に秘めつつも抑制の効いた演技は映画に深みと洗練された気品を与えている。その完成度は韓国の評論家の間でも高く評価され、「高品質メロ映画」と評された。

 結婚&出産により映画界からは事実上引退していたイ・ミスクが本作品で華麗に復帰。本作以降も『燃ゆる月』へ出演したり映画製作会社を設立したりと旺盛な活動を展開している。特に若手女優の台頭が目立つ韓国女優界にあっては、ベテラン女優としての彼女の価値は計り知れない。『イルマーレ』『純愛譜−じゅんあいふ−』『Interview』などが日本公開されているイ・ジョンジェだが、彼が映画界で確たる地位を築いたのは本作『情事』から。その他、イ・ジョンジェのフィアンセ役として『GO』、『アクシデンタル・スパイ』のキム・ミンが、イ・ミスクの夫役として『反則王』ソン・ガンホにヘッドロックをかける支店長を演じていたソン・ヨンチャンが出演しているなど、脇役も充実。また、釜山国際映画祭の執行委員長をつとめ、今日の韓国映画の隆盛をもたらした最重要人物の一人、キム・ドンホ氏がパーティーのシーンでちょい役出演しているのも面白い。

 この作品が長編映画デビューとなるイ・ジェヨン監督は、『Interview』ピョン・ヒョク監督と共同製作した短編映画『ホモ・ビデオクス』が Clearmont Pelang 短編映画祭などで賞を獲得。ドキュメンタリー『ある都市の物語』を演出するなど実験映画も製作している実力派。日本では第二作『純愛譜−じゅんあいふ−』が先に公開された。デザイナーのチョン・グホが衣装、インテリア・デザイン、メーキャップ、小道具を担当。

 韓国では、シナリオ担当のキム・デウが執筆した小説が人気に。またサントラの売れ行きも好調で、「1997年に65万枚の売り上げを記録した『接続』神話の再現なるか?」と言われた。音楽担当は『八月のクリスマス』『純愛譜−じゅんあいふ−』『春の日は過ぎゆく』チョ・ソンウ

 封切り以降、ソウルだけで30万名を越える観客を動員。若年層に加えて30代〜40代の女性の支持も得て、1998年秋夕(チュソク:旧盆の連休)一のヒット作に(→「1998年韓国映画興行成績」)。

 米カリフォルニア州のオレンジカウンティで開かれた第4回(1999)ニューポート・ビーチ(Newport Beach)国際映画祭でアジア映画賞(Asain Cinema Kaleidosocope)を受賞。第13回(1999)福岡アジア映画祭ではグランプリを、イタリアの第4回(2000)スケルミ・ダモレ映画祭では批評家賞・芸術功労賞を受賞している。第3回(1998)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門、イタリアの Far East 映画祭、第3回(1999)富川国際ファンタスティック映画祭「ファンタスティック韓国映画特別展」部門、フランスの第2回(2000)ドーヴィル・アジア映画祭コンペ部門出品作品。

 第7回(1999)春史映画芸術賞女子演技賞(イ・ミスク)、第22回(1999)黄金撮影賞新人撮影賞(キム・ヨンチョル)・新人監督賞(イ・ジェヨン)、第35回(1999)百想芸術大賞人気賞(イ・ミスク)、第19回(1999)映画評論家協会賞女子演技賞(イ・ミスク)受賞作品。

初版:1998
最新版:2001/11/7


【ソチョンの鑑賞ノート】

 第19回青龍賞候補作上映祭にて1998年11月30日鑑賞。

 連日連夜深夜にまで及ぶ映画鑑賞がたたってか、この映画、途中うとうとしてしまいまして、はっと気づいたらイ・ミスクとイ・ジョンジェがゲームセンターでナニをいたしておりました。という訳で肝心要の二人がひかれあうようになる部分を全く見逃してしまったのですが、それでもこの映画には魅力を感じます。

 抑えた色調の映像に、ダルなBGM。そしてイ・ミスクの演技。劇的な展開もなく台詞も少ないのですが、今までの韓国映画とは違う物を感じました。ラス前、妹が自分のフィアンセと姉が不倫関係にあることに気づくシーンがあるのですが、一昔前の韓国映画だったらここで殴り合いの喧嘩が始まるところ。しかし、妹はぐっとこらえて去っていきます。この辺の描写に逆にリアリティー(=怖さ)を感じましたね。私は。

 そして主人公たちは口にこそしないものの皆自分の意志というのを持っていて、それに従って行動しています。過去や家にとらわれない生き方。それがいいことなのかどうかは別問題ですが、とにかくこの映画には新しい何かを感じました。

1998年12月7日執筆



投稿者:SUMさん 投稿日:1999年1月23日(土)22時58分15秒

 韓国版『失楽園』では、ストーリーもシーンもほぼ同じであるにも関わらず、どこか保守的な映画になっていたことを考えると、むしろこちらの方が、日本の『失楽園』に近いとさえ思える作品でした。

 イ・ミスクを中心にして、二人の心の動きの先を見る側に惑わすような落ち着いて日常からの脱出に迷うさまから、輝き、そしてまた迷っていく様を見事に表した脚本と、演出、そして演技。イ・ミスクが等身大に落ち着いた美しさを放っていて、どこまでもその映像に引き込まれていきます。

 これを見るなら、日本映画『失楽園』は見なくてよかったかな。

【評価:★★★★】



【鑑賞ノオト】 Text by 月原万貴子(月子) 2002/2/1

 「匂い立つような」というのはこういう女性のことをいうのではないだろうか。結婚による引退から10年ぶりに映画界に復帰したイ・ミスクに、すっかり圧倒されてしまった。

 1980年代、美貌の演技派女優として日本でもその名を知られていたイ・ミスクは、確かにきれいでセクシーだったけれど、正直言ってやぼったかった。ヒットした主演作『桑の葉』(1985)での「山奥の農村で一番色っぽい若妻」役が似合うような、健康的なお姉ちゃんだったのだ。それがどうだ。久々に登場した彼女は、すっきりと垢抜けた大人のいい女になっているではないか。10年間も映画界の一線から身を引き、子供を二人産み、30代も後半になった彼女のこの美しさは驚異的だ。なんせヌードが若い頃よりきれいなんだもの。普通じゃ考えられません。

 建築家の夫と10歳の息子を持つ裕福な専業主婦ソヒョンは、仕事が忙しい妹に代わって、彼女の婚約者ウインを手伝い結婚準備を進めるうち、あろうことかウインと不倫関係に陥ってしまう。ソヒョンにとって夫と妹を二重に裏切る行為とは分かりつつも激情を抑えられないふたり。

 そんなふたりが心も体も深く惹かれあっていく様を、丹念にかつ官能的に描いた映像が美しい。よほどのベテランの作品かと思っていたので、本作がイ・ジェヨン監督のデビュー作だと知った時には、本当に驚いてしまった。

 ウインを演じるイ・ジョンジェは、しなやかな肉体と熱いまなざしで、まさしく「若い男」の魅力を存分に発揮している。特に、そっと手を握る時の長い指と、じっと見つめる時の濡れたような瞳がたまらなくセクシー。ちなみに彼は英国の伊達男ダニエル・デイ=ルイスの映画『ラスト・オブ・モヒカン』(1992)を見て、ロマンチックなキス・シーンの研究をしたのだとか。その成果を充分に発揮している本作を見た多くの30代・40代の女性が、彼の大ファンになってしまったというのもうなずける(もちろん私もそのひとり・笑)。

 不倫をテーマにした映画だけに、ラブ・シーンも多く、深夜のゲーム・センターだの小学校の理科実験室だの、AV顔負けの際どいシチュエーションも登場する。しかし、私がそれらよりもセクシーだと思ったのは、ふたりが車道を挟んで、通りの向こうとこちらを同じ方向に向かってゆっくりと歩くシーンだ。数メートルの距離があっても、お互いの存在を感応しあうふたりの穏やかな微笑みに宿る官能。うーん、素敵。

【評価:★★★★★】



投稿者:大西康雄さん 投稿日:2002/2/18 16:00:30

 本作を一言でいえば、イ・ミスクは魅力的に好演しているが、ごくごく普通の不倫映画である。若い男の子にアタックされてよろめいてしまう人妻というプロットは日本の昼メロによくありそうな話だ。とはいえ、日本的な感覚だけで切ってしまってはいけないと思う。

 韓国では既婚の男女が自分の配偶者以外の相手と旅行する「ムッチマ(聞くな)」旅行が流行っているそうで、いくら姦通罪が残っている国だといっても、不倫が珍しいわけでもないだろう。しかし本作では、イ・ミスク演じるソヒョンの夫は浮気したり、妻を殴るといった道徳的に外れたことをしているわけではなく、誇るべき職業も持ち(おそらく学歴も高く)、恵まれた生活水準を享受させてくれる、世間的には立派な夫である。今の韓国の女性から見れば極めて理想的な結婚相手といえるだろう。従って妻の浮気を仕方ないなと思わせる世間的な理由は見当たらない。

 それにもかかわらず、この映画は、イ・ジョンジェ演じる無鉄砲な(しかも妹の婚約者である)若者ウインのアタックを受け揺れ動く中で、「世間的には立派」というだけの夫に対しどうにも物足りなさを感じて、あらゆる道徳・道理に完全にそむいて若者に心が傾いていく女性の心情を肯定的に描いている。日本では、既にいささかステレオタイプとなっている話であるが、おそらく韓国社会においてはこの部分がかなり衝撃的だったのではないか?

 また、この作品がもつ、あからさまな感情表現がない日本風のテイストも、韓国において、新しさ&おしゃれさを感じさせたのかもしれない。ただソヒョン側の心情はよく描写されているものの、イ・ジョンジェの演技力がまだ足りなかったせいかもしれないが、アタックしていくウインの心情描写がもの足りないのが残念だ。

 イ・ジェヨン監督は、現在の韓国映画界では少数派である「女性側のロジックを活かした商業映画作り」を志向しているように思える。その意味で括弧付きの「フェミニスト」映像作家と呼べるだろう。ただ、現在の韓国映画界での位置付けを考えると、彼が志向している(韓国社会では)革新的な方向性の行く先は、日本の常識的なドラマ作りの論理に帰着することになるのではないだろうか?

 次作『純愛譜−じゅんあいふ−』が日韓共同製作となったのも大いにうなずける話である。

【評価:★★★】



投稿者:iwakoさん 投稿日:2002/3/22 13:09:25

 この映画で一番好きなのは、イ・ジョンジェが最初の方でいつもズボンのポケットに手をいれているところ。若い男の屈託をよく表現していると思いました。恋しちゃいけない女性への想いと自分の生きたいように生きられなかった不満がウインの屈託になっていて、すねたような、無口な態度で、とてもかわいくみえました。

 あと、おもしろいと思ったエピソードは、二人がデートの最中ミスクさんのだんなさんの同僚の女性に会ってしまうとこ。この女性転んで腕を折ってしまいギブスをしています。で、この女性はギブスにサインをもとめるのですね(サインしてもらうと早く治るというようなおまじないでもあるのでしょうか)。二人は仕方ないのでサインします。このサインが後になって問題になるのかなと予想されるわけですが・・・

 そして、だんなさんがミスクさんの不倫に気づいて自分もと思い、ギブスの女性を誘うのですが、彼女は「あなたとの友情をこわしたくないわ」と拒否します。ギブスの女性は二人のサインがあるのでそっとギブスをかくします。本筋にはあまり関係ないですが、このギブスの女性素敵です。

 「不倫」という言葉も嫌いだし、人の恋人を盗ったり盗られたりするのも嫌いで、絶対そういうことにならないよう生きてきた私ですので、映画の内容はそんな好きではありません。でも、イ・ジョンジェは美しいし、ファンとしては三回も見にいってしまいました。

【評価:★★★★】


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