家族シネマ
題名 英題 ハングル |
家族シネマ KAZOKU CINEMA 가족시네마 |
製作年 |
1998 |
時間 |
114(韓国公開版) 113(日本公開版) |
製作 協力製作 |
朴哲洙フィルム ヨンソン・プロダクション ムエ・プロダクション |
監督 |
パク・チョルス |
出演 |
柳愛里 梁石日 伊佐山ひろ子 パク・ヨンノク 金守珍 中島忍 松田いちほ 海野けい子 益富信孝 佐藤一平 |
日本版 Video DVD |
Video DVD |
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芥川賞を受賞した柳美里の同名小説を映画化。個人化された現代家庭の悲哀を描く。両親の別居でバラバラに住んでいる家族が20年ぶりに集まり、家族の再会を映画化しようとするが...
劇中の映画は柳美里が家族を見る目、そしてこの映画そのものはパク・チョルスが主人公の家族達を見る目。映画の中の話と実際の話がごちゃ混ぜになりながらドキュメンタリー風に撮られているのが面白い。小説では映画撮影が家族旅行で中断になるが、映画は完成品の試写までの一家を追う。
原作小説が芥川賞を受賞した後、日韓双方から多くの映画化申し込みがあったが、コンペの結果パク・チョルスが権利を獲得。柳美里の実の妹で俳優の柳愛里が長女素美役。父役には『月はどっちに出ている』の原作者梁石日、母役は伊佐山ひろ子、次女役は松田いちほ、弟役は中島忍、そして劇中の監督役には新宿梁山泊代表金守珍がキャスティング。東映の仁侠映画『残侠』に出演している韓国俳優パク・ヨンノク(朴永祿)も母親の情夫で出演。完全日本ロケ(奈良県御所市)作品で、台詞も100%日本語。
企画・監督はパク・チョルス。柳美里の原作をシナリオ化したのはウ・ビョンギル。撮影はイ・ウンギルとチェ・ジョンウ。
1998年当時、日本映画の上映が禁止されていた韓国での公開にあたっては、日本の映倫にあたる公演芸術振興協議会が日本色が濃厚なため審査拒否する動きを見せたり、映画振興公社が日本人俳優の起用と日本語台詞を理由に版権担保融資(3億ウォン)撤回を表明したり、一方のパク・チョルス監督は「韓国で封切りできなければ亡命する」と応戦するなど荒れ模様だったが、1998年秋の日本映画部分解禁(及びその日程の発表)により無事韓国公開された。封切りにあわせて、柳愛里・伊佐山ひろ子・松田いちほの3人が映画広報のため訪韓。ただし、韓国での興行は惨敗だった。
第35回(1999)シカゴ映画祭コンペ部門、イタリアの第14回(2000)Far East映画祭出品、映画振興公社が選定する1998年の「芸術・実験映画」選定、第7回(1999)春史映画芸術賞監督賞、第36回(1999)大鐘賞脚色賞(ウ・ビョンギル)受賞作品。
初版:1998/11
最新版:2000/4/1
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【ソチョンの鑑賞ノート】
1998年11月30日、ソウルのシネコア劇場にて鑑賞。
『家族シネマ』はソウルで5館程度で上映されていました。私が確認したのはシネコア、ハリウッド、ミョンボの3つ。日本での関心の高さをはぐらかすようにどこもがらがらでした。ミョンボのチケット売り場の上には「日本俳優、日本語で作った韓国映画の代案 パク・チョルス監督の『家族シネマ』」という横断幕がぶらさがり、掲示板には日韓の新聞記事が貼り付けられていました。シネコアの前ではKBSが入場者にインタビューしていました。でも、チケット売り場は閑散としてまして、行列は訪韓時に大ヒットしていた『約束』のところにできるばかり。
映画が始まるとまず俳優・スタッフのクレジットに驚きます。全部漢字です。最近の韓国映画のクレジットは全部ハングルなのですが、この映画ではすべて漢字でクレジットが出て、横にハングルの字幕が出ます。ここら辺で監督は明らかに韓国での上映ではなく日本公開を意識して作っていることにピーンときます。そして肝心の本編ですが内容はないです。原作自体そうなのですが、特にストーリーらしいストーリーもなく進んでいきます。私は行きの飛行機の中で原作を読んでおいたので、原作とここが似ている、ここが違うと楽しめましたが、原作を読んでいない人、そして作者の柳美里がどういう人物であるか、またこの小説が書かれた背景などを知らない人にはチンプンカンプンな映画かも知れません。ちなみに原作にはかなり忠実に映画化してました。台詞など全く同じでしたから。
映画が始まって10分くらいで俳優の下手さ加減に嫌気が差します。特に梁石日の大根役者振りとパク・ヨンノクの下手な日本語にはほとほと呆れ返ります。が、です。これも演出の一部なのだ(多分そうなのだと思います)と考えると逆に面白味を感じました。つまり素人の家族が映画を撮るということでコチンコチンに硬くなっていて、それで台詞もぎこちないのだと。そう考えると、まるで家族のやりとりを覗き見ているようなそんな錯覚に陥ってきてなかなか楽しめました。監督であるパク・チョルスの最近作『学生府君神位』と『産婦人科』はどちらもドキュメンタリー・タッチな作品。この『家族シネマ』でもそういう彼独特の演出方法が思わぬ効果を上げている。そんな印象を持ちました。ただし、娯楽として映画館に行く人や、日韓合作としての意義など映画以外の部分に付加価値を見出せない人にはお勧めできないですね。
1998年12月7日執筆
【2度目の『家族シネマ』】
1998年秋に韓国で封切られた時にソウルで見て以来、2回目の『家族シネマ』を見てまいりました。日本で見るのは初めてです。
で、一言。
とても、面白く感じました。(^^)
2年前にがらがらのシネコア劇場(ソウル)で見た時は、なんだかなーと思ったのですが、2回目は意外や意外・・・と言うと監督に失礼になりますが、ホント面白かったですね。韓国映画って、一回目より二回目のほうが面白く感じることが多いのですが、それともちょっと違う面白味。なんてんでしょ、これ日本映画だと思ってみれば、そう見えちゃうんですよね。在日外国人をテーマにした日本映画はここのところとても多いし、ドキュメンタリータッチの日本映画というのも珍しくない(もちろん単館系)。台詞が日本語&オール日本ロケというのもありますが、それ以上に作品のテイストとして、ミニシアターで単館上映される日本映画に非常に近い要素を持っている(=「商業性がない」とも言う)ように感じました。
ですので、一般受けしないことはまず間違いないのですが、単館で上映される日本映画が好きな人が見れば、10人に2人くらいは高く評価する人がいるんじゃないかと思います。ただ、全般的な評価はおもいっきり割れるでしょうね。最近見た映画では『セレブレーション』とか、『M/OTHER』とかもそうですけど、こういうドキュメンタリー・タッチな、現実と演出の区別がつかないタイプの映画って、人間の嫌らしい面をグリグリ見せるので、好きな人は「うぉー、これぞリアリズムじゃ〜」となるし、嫌いな人は「何これ? あたしゃ映画館に夢を求めて来ているのよ! 人間の汚い面見せて何が楽しいの! ぷんぷん」となるんじゃないかと思います(汗)。
『家族シネマ』を作品として評価する声はあまり聞きませんが、こういう映画って好きな人は一定数必ずいるので、プロモーションさえうまくやってそこそこの観客を動員できれば、良くも悪くも、もうちょっと「話題の作品」になれたのではないかと思います。
2000年3月4日執筆
投稿者:SUMさん 投稿日:1999年2月23日(火)22時51分13秒
柳美里的皮肉とB級カルトムービー的な「ブラックユーモア」が境界線なく混在している。この二つはそもそも共通点があっても異質ではないのかと思う。
パク・チョルスがこの作品に目を付けた理由はよくわかる、確信犯である。評価はきっとまっぷたつに割れるのではなかろうか。
柳美里的な世界を利用して、パク・チョルスのテーマである人間というジョークを描いているような気もするが、そうするとなおのことB級である。柳美里よりも、ホン・サンス監督のセンスに近いかも知れない、アプローチは異なるが。人間の殺伐というよりも、「人間ってやだねぇ」って苦笑いするような感覚があるようなないような。
【評価:★★★】
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