韓国で初めて劇場公開された16mm長編映画。パリの映画学校を卒業したキム・シオン監督の長編第一作。大企業からの援助が得られず、8,000万ウォン程度の低予算&16mmで独立製作した。1997年に撮影が終わっていたが、35mm化する資金もなく劇場公開は絶望的だったが、第3回(1998)釜山国際映画祭での上映後、各国の国際映画祭から招待されるに及び、1999年なんとか国内公開が実現した。
田舎の廃校を背景に、「夏」,「雨」,「燈」の3つのモチーフを通じ、若者の彷徨と追憶をイエローとブルーの色彩で水彩画のように描いた作品。ストーリーらしいストーリーはなく、色彩感覚とイメージを楽しむタイプの映画。その映像からは、CGでは味わえない豊饒さと余韻を感じることができ、韓国インディー映画の実力を垣間見ることができる。
【夏】 梅雨が終わった蒸し暑い夏、ビョンニム(カン・テヨン)、チャンド(チョン・ジェウク)、ハンス(イ・ジョンウ)の3人の若者が山里の廃校になった分校に現れる。黒板に何気なく書かれている「エリム分校、さようなら」という文字。強盗で得た金を持って潜伏しに来た彼らは学校で子供のようないたずらをして日々を過ごす。
【雨】 梅雨が始まる直前、この廃校の最後の卒業生であるチュギョン(イム・ジウン)、タジョン(イ・アヨン)、ソンヨン(チャン・ギヒョン)は同窓生の死を契機に学校に戻ってくる。校庭を散歩しながら過去の追憶に浸る3人の女性。夢多き過去は去り、今は「あきらめ」だけの人生。酒を飲み、過ぎ去った過去に思いをはせた3人は教室の黒板に書き置きをして去る。
【燈】 1年後、チュギョンが再び廃校にやってくる。そこでビョンニムとハンスを見送り一人残っているチャンドと出会い、そして別れる。
撮影は後に『ディナーの後に』,『ユリョン』などの撮影監督を担当したホン・ギョンピョ。そのせいか本作と『ディナーの後に』の色彩感覚には共通性が感じられる。
第3回(1998)釜山国際映画祭「新しい波」部門、第35回(1999)シカゴ映画祭新人監督コンペ部門出品、第18回(1999)バンクーバー国際映画祭コンペ部門出品、第28回(1999)ロッテルダム国際映画祭タイガー賞コンペ部門進出作品。タイガー賞は長編映画を初めて作った監督を対象とした賞で1997年に『豚が井戸に落ちた日』でホン・サンス監督が受賞している。他に第1回(1999)ブエノスアイレス映画祭では「南米で上映された最初の韓国映画」となり、スイスのフライブルク映画祭でも上映。いずれも好評を受ける。
初版:1999/9/21
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