受賞作品/人物
「韓国のアカデミー賞」と呼ばれる第38回大鐘賞の授賞式が、4月25日、ソウルの世宗文化会館大講堂にて開催されました。
授賞式は、大鐘賞の広報大使であるアン・ソンギとチョン・ドヨンの挨拶に始まり、ユ・ジョンヒョン、チョン・ジヨン両アナウンサーの司会のもと、SBSで全国中継されました。
作品賞を受賞したのは、2001年5月26日より東宝洋画系で全国公開される『JSA』。昨年記録的な大ヒットとなり、年末の青龍賞では、最優秀作品賞など五冠を達成した本作は、大鐘賞でも作品賞に加え、主演男優賞(ソン・ガンホ)・美術賞・音響賞を受賞し、四冠を独占しました。また、この作品で主役を演じたイ・ビョンホンは、ファンの投票によって選出される人気賞を受賞。ソン・ガンホとイ・ビョンホン、日本ではどちらがより人気者になるでしょうか?
なお、主演男優賞はソン・ガンホのほか、イ・ビョンホン、そして大鐘賞開催期間中に『シュリ』や『JSA』を上回るペースで大ヒットを続けていた『友へ/チング』のユ・オソン、チャン・ドンゴン等の争いになりましたが、まずはソン・ガンホの貫禄勝ちといったところでしょうか。ちなみに、当のソン・ガンホですが、主演男優賞受賞の弁で「トロフィーの半分は映画で共演したイ・ビョンホンのものだ」と発言し、客席に降りてイ・ビョンホンの手を両手で握り締めたそうです。映画の中でも、そして私生活でも義理堅く、兄貴肌のソン・ガンホらしいエピソードですね。
さて、準グランプリとも言える審査委員特別賞を受賞したのは、出産後たった一日しか生きられない赤ん坊を宿した夫婦の愛と葛藤を描いた『エンジェル・スノー』。この作品は、韓国で今年1月に公開され、そこそこヒットしたメロ・ドラマですが、大鐘賞では監督賞(ハン・ジスン)・主演女優賞(コ・ソヨン)・助演女優賞(ユン・ソジョン)といった主要四部門で受賞。大変な成果を上げました。監督のハン・ジスンは、これが3作目ですが、心地よく笑わせ、最後にはしっとりと泣かせてくれる分かりやすいドラマを得意とする若手監督です。ちなみに、ハン・ジスン監督ですが、大鐘賞での受賞と前後してシンガーソング・ライターのノ・ヨンシム(盧英心)との結婚を発表し、まさしくおめでた続き。これまでは、どちらかというと大衆には支持されても、評論家筋からは評価されない監督でしたが、監督賞も受賞し、今後の活躍が期待されます。
『エンジェル・スノー』の演技で主演女優賞を受賞したコ・ソヨンは、韓国ではシム・ウナ、チョン・ドヨンと並び称されるビッグ・ネームですが、これまではなぜか映画賞に縁のなかった女優。今年、米アカデミー賞では、ジュリア・ロバーツが3度目のノミネートでついに栄冠を手にしましたが、韓国ではコ・ソヨンが念願の主演女優賞を受賞。似たような現象は続くものですね。ちなみに、コ・ソヨンは『JSA』にもブロマイドでほんのちょっぴり出演しています。お楽しみに。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001でプレミア上映され、そのド派手な火災シーンが話題となったディザスター・ムービー『リベラ・メ』は、撮影賞・照明賞・編集賞・特殊効果賞と技術系四部門を独占。この作品は大鐘賞に先立って開催された第37回(2001)百想芸術大賞でもグランプリを獲得しており、2000年を代表する韓国映画の一つとなりました。
新人部門では、日本公開作『ディナーの後に』でデビューしたイム・サンスが第二作の『ティアーズ』で新人監督賞を受賞。また、新人女優賞は第13回(2000)東京国際映画祭で上映された『秘花 〜スジョンの愛〜(映画祭上映時のタイトルは『オー! スジョン』)』のイ・ウンジュが、新人男優賞は『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』のリュ・スンボムが受賞しました。ちなみに、リュ・スンボムは『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』の監督であり主演のリュ・スンワンの実の弟で、劇中でもリュ・スンワンの弟役を演じています。
ファンの投票によって選ばれる人気賞ですが、男優は前述の通り『JSA』と『バンジージャンプする』で主役をはったナイス・ガイ、イ・ビョンホンが、女優は最近仕事を全く入れないため結婚引退説がささやかれているシム・ウナが受賞しました。
一方、韓国で『シュリ』,『JSA』を上回るペースで大ヒット中の『友へ/チング』は意外にも無冠。また、2001年上半期の秀作として挙げられる『バンジージャンプする』も脚本賞と新人技術賞を受賞するにとどまりました。
さて、華やかに幕を閉じた大鐘賞ですが、今回も運営上の問題が噴出。特に新人監督賞のイム・サンス、男女助演賞のチョン・ウンピョとユン・ソジョン、人気賞のシム・ウナなど受賞者が欠席したのはなんとも残念。主催者側の説明では「審査の公平性のため、授賞式の現場で誰が受賞するのかを決定/発表した、つまり事前に受賞者に連絡ができなかったために、このような事になってしまった」とのことですが、逆に言うと、映画人なら誰もが参加するのが当たり前の映画賞になっていないという事実を露呈した格好になりました。他にも授賞式当日の進行の段取りが悪いなど、問題山積。是非、来年には解決してもらいたいところです。
第38回大鐘賞受賞作、日本公開スケジュール(2001/5/5現在)
作品名 |
公開予定 |
『JSA』 |
2001年5月26日より東宝洋画系にて全国公開 |
『エンジェル・スノー』 |
第15回福岡アジア映画祭2001にて 『ハル(一日)』という題名で上映 |
『アウトライブ −飛天舞−』 |
日本公開予定作 |
『リベラ・メ』 |
『燃ゆる月』 |
『Interview』 |
『秘花 〜スジョンの愛〜』 |
第13回(2000)東京国際映画祭にて 『オー! スジョン』という題名で上映 |
『ダイ・バッド 〜死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか〜』 |
TOKYO FILMeX 2000にて上映 |
『バンジージャンプする』 |
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『キリマンジャロ』 |
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『ティアーズ』 |
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【付記】
本文で「運営上の問題が噴出」と書きましたが、今回最大の問題とされたのは授賞結果です。具体的に言うと、韓国のマスコミや映画ファンが疑問視したのは、大ヒット中で『JSA』と各賞を競い合うだろうと思われていた『友へ/チング』が無冠に終わり、公開時は評壇からそれほど高い評価を得られず、かつそこそこのヒットにしかならなかった『エンジェル・スノー』が主要四部門を独占したということ。また、授賞式前日までは『友へ/チング』のユ・オソンが圧倒的な票差でトップだった人気賞が、当日には『JSA』のイ・ビョンホンに授賞されたことや、審査委員長が審査中にチョン・ジヌ監督からピョン・ジャンホ監督へ変わったことにたいする説明がなかったことなども、明確な問題点として指摘されました。
そして、授賞式終了後の5月には、審査結果が論議の的となり権威失墜につながった責任をとり、共同主催の映画人会議が執行部の総辞職を発表。もう一方の韓国映画人協会理事も辞任を匂わせるなど、荒れ模様が続いています。そもそも今回の大鐘賞の最大の特徴は、「これまで事ある毎に対立していた守旧派の韓国映画人協会と若手革新派の映画人会議が共同主催」し、両団体の和解を促進させたことだったわけですが、なにやらそれも雲行きが怪しくなってきました。
ただ、いかにマスコミや映画ファンから叩かれたからといって、自らの代表として選出した審査委員が一定のルールの中で決定した結果が「間違いであった」と認定するような行動を取るのはいかがなものかとも思います。映画賞には主催団体のポリシーが反映されてしかるべくで、それが世論と多少の違いはあってもなんら問題はないと思うのですが・・・
とまれ、それだけ大きな注目を浴びている大鐘賞。来年はよりよい形での開催を望みます。
初版:2001/4/27
最新版:2001/5/8
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