カル
画像提供:クロックワークス、ドラゴンキッカー
(以下、同じ)
題名 ハングル 原題 ハングル |
カル 칼 tell me something 텔미썸딩 |
製作年 |
1999 |
時間 |
118 |
製作 配給 製作支援 |
Koo & C フィルム シネマ・サービス 国民技術金融 シネマ・サービス |
監督 |
チャン・ユニョン |
出演 |
シム・ウナ ハン・ソッキュ チャン・ハンソン ヨム・ジョンア ユ・ジュンサン アン・ソックァン キム・ジョンハク |
日本版 Video DVD |
字幕版Video 吹替版Video デラックス版DVD |
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純製作費22億ウォン。『接続』のチャン・ユニョン監督がメガホンを取り、『八月のクリスマス』のハン・ソッキュとシム・ウナが再共演した1999年冬の超話題作。猟奇的な連続殺人を題材にしたミステリー&スリラーで、ある刑事の連続殺人犯追跡劇を描く。韓国映画には珍しく、バラバラ殺人、頭部損傷などの猟奇的で残酷な場面も映像化するため「ハードゴア(Hard-Gore)・スリラー」というキャッチ・フレーズが付けられた。そのあまりに猟奇的なシーンのため映像物等級委員会(日本の映倫に相当する機関)から削除勧告を受け、製作社サイドが一部自主削除するという一幕もあった。
チョ刑事(ハン・ソッキュ)はある猟奇的な殺人事件の捜査を始めるが解決の糸口を掴むことができない。そうしている間にも連続して発生する殺人事件。しかし、チョ刑事は3番目の事件で決定的な糸口を見つける。犠牲者の大学教授クォン・ジュンヒョンの恋人が捜査線上に浮かび上がり、彼女は殺害された三人全員と恋人の仲だったという事が分かったのだ。彼女は国立博物館遺物復元室職員のチェ・スヨン(シム・ウナ)。チョ刑事は彼女から犠牲者に関する情報を聞き出し犯人を探していく。
原案は Koo & C フィルムの共同代表であるク・ボナン。脚本はコン・スチャン、イン・ウナ、シム・ヘウォン、キム・ウンジョン、そして監督のチャン・ユニョンの5人により執筆された。ミステリーが完全には解明されない作りに、映画ファンの間では論議沸騰。「真犯人は?」などの議論を呼び、週刊映画雑誌『シネ21』は「tell me everything」という特集記事を掲載(『カル』の韓国での原題は『tell me something』)。一種の「謎本」文化をもたらした。同じ日に日本で公開された森田芳光監督の『黒い家』や、ドラマ『氷の世界』と共通項が多いのも興味深い。
作家ソ・イヨンが執筆したノベライズ小説では、映画ではっきりと描かれなかった疑問点がある程度明らかになっている。また、日本では公開に先立って、韓国で出版されたノベライズ小説を元に、映画の謎に迫るオリジナル書籍『「カル」の謎−韓国史上最も凄惨な連続殺人事件−』が角川書店より発売された。
チャン・ハンソン、ヨム・ジョンアといった助演陣が味のある演技を披露して高評価を受けた。チャン・ハンソンはハン・ソッキュの相棒オ刑事役。『テロリスト 哀しき男に捧げる挽歌』以来四年ぶりに映画出演するヨム・ジョンア(27)は、シム・ウナの親友の外科医レジデント役。またユ・ジュンサンが犯人の嫌疑を受けるギヨン役を、アン・ソックァンが検死官役を演じている。
グロテスクな映像に頼るだけではなく、画面構図・光の陰影・音楽・音響効果などで総合的に醸し出される恐怖感が一級品。特殊メイクや人造死体の製作に8500万ウォンをかけており、人造死体の一部は日本映画『CURE/キュア』の特殊メイク・チームである劇団飛行船美術工房が製作した。韓国側で人造死体を製作したのはメイジ社。人造死体の監修は『クワイエット・ファミリー』の特殊メイクと『建築無限六面角体の秘密』のミニチュア製作を担当したシン・ジェホ。撮影は、『帰天図』,『接続』,『殺す話』,『チム 〜あこがれの人〜』,『シュリ』などの撮影を担当したキム・ソンボク。彼は故ユ・ヨンギル撮影監督の弟子でもある。照明は、『接続』などの照明を担当したイム・ジェヨン。また、『情事』のアート・ディレクターを担当したファッション・デザイナーのチョン・グホ氏がこの作品でもアート・ディレクターを担当している。『接続』の音楽選曲と『クワイエット・ファミリー』,『陽が西から昇ったら』の音楽監督を担当したチョ・ヨンウクが音楽とサントラ製作を担当。
国内最多封切り館数記録となる全国114館(ソウル34館,地方80館)で封切りされ、封切り直後の土曜日と日曜日で、ソウルで15万名、全国で40万名の観客を動員し大ヒット。封切り直後の土・日2日間の観客動員数は歴代最多記録となった。
香港では『愛的肢解』という題名で2000年3月23日に公開され、公開初日にボックス・オフィス1位の成績をあげた。なお、香港での公開初日の成績は『シュリ』を越えた。
20世紀フォックスが本作のリメイク権を購入し、話題に。
第23回(2000)黄金撮影賞人気女優賞(シム・ウナ)受賞。
東京国際ファンタスティック映画祭2000、イタリアの第14回(2000)Far East映画祭、第9回(2000)豪州ブリスベーン映画祭、2000年スコットランド・エジンバラ映画祭、第25回(2000)トロント国際映画祭Midnight Madness部門、2000年ドイツ・ローズハット映画祭、2000年にデンマークのコペンハーゲンで開催された "Film from the South" 韓国映画セクション部門、第13回(2000)ヘルシンキ国際映画祭Asia Meets Europe部門、第21回(2001)Fantasporto国際映画祭監督週間部門、第33回(2000)シッチェス国際映画祭コンペ部門、第15回(2001)英国リーズ国際映画祭、第18回(2002)アムステルダム・ファンタスティック国際映画祭出品作品。
初版:1999/11
最新版:2001/10/13
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投稿者:T.Uさん 投稿日:1999年12月13日(月)20時29分15秒
ハン・ソッキュとシム・ウナ、あの『八月のクリスマス』のコンビが出演するとなって、週末だったこともあり、公開初日は満員だった。
でも…見終わってみると何か物足りない。シム・ウナはきれいだったし、バラバラ死体の皮膚の質感なんか、なかなかのもの。でも…あんまり期待してみたせいだろうか、ストーリーも今イチ盛り上がらないし、理解できない部分も多い。
見終わって、「あー怖かった」とか「面白かった」とか、素直に言えない。あれはいったいなんだったんだろう????頭の中に疑問符がいつまでも駆け巡る、ちょっと欲求不満な作品。
【評価:★★★】
【ソチョンの鑑賞ノート】
1999年12月にソウルの場末の映画館で鑑賞(ロードショー館での上映は終わっていた)。
決してストーリーが分かり難い作品ではない。逆に、韓国語が全く出来ない方でも基本的なストーリーは全て押さえられるようになっていると思う。が、細かい点で頭の中に「?」マークが残り、観客を混乱させる。多分、語学の達人ほど「?」マークの数が多くなるでしょう。
観客に鑑賞後「あれは一体なんだったの?」と思わせるところは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に通じるものがあるかも。最初の編集では上映時間が2時間を大きく超えてしまったため再編集してバッサリ削ぎ落とした結果分かり難くなったという話も聞いた事があるけれど、どうなんだろうか? 製作社サイドとしては、「謎」を解くためにリピーターが劇場に押し寄せることを狙っていたような節もある。日本ではまもなく『リング0〜バースデイ〜』が公開されるけれど、今回もやはり貞子の謎は解き明かされないようだ。「謎」を「謎」として残しておく、観客に想像させるというのが最近の流行ということか・・・
ハン・ソッキュ&シム・ウナ人気、そして『接続』のチャン・ユニョン監督作品ということで作品に対する期待が大きかったせいか、はたまた8億ウォンを投入したマーケティング戦略が功を奏したのか、封切り直後は記録的な観客動員数を誇ったが、ロードショー期間は6週間と意外なまでに短かった。が、最終的な動員数は立派な成績なので(「1999年韓国映画興行成績」を参照)、それだけ公開直後の動員が凄かったということになる。
重たく暗い映像はなかなかだけれど、音楽が「火曜サスペンス劇場」のノリで、いかにもな選曲になっているのがちょっと減点。シム・ウナは(役柄もあって)恐ろしいまでの美しさを披露している。ハン・ソッキュは憔悴しきって無精髭をはやした刑事役(眼鏡はかけていない)を演じているが、この映画の撮影で髭をあまり剃らない癖がついてしまったそうだ。言われてみれば、この映画の撮影終了後に第12回(1999)東京国際映画祭で来日しているが、その時もうっすら髭を生やしていた。我納得。
衝撃のラストでは決して目をつぶることのないように・・・
2000年1月10日執筆
投稿者:うずら谷さん 投稿日:2000年11月25日(土)1時56分22秒
うずら谷さんのホームページ → http://www2.tky.3web.ne.jp/~monch/ ※「評論」のコーナーに投稿記事の完全版があります。
とにかく謎の多い映画だ。あえて説明を省くことで観客がああだこうだと推理するのを狙ったそうで、原題の『tell me something』は、「お互い何か話そうじゃないか」という意味を含んでいるらしい。まあ小細工が効いているといえば効いているけれども、ちょっと多すぎるような気がしないでもない。
最大の謎は、映画の内容ではないけれど、どうして日本の配給会社が邦題を『カル』などという意味不明なものにしてしまったかだ。監督は「殺人や攻撃性のイメージにあっていていいのでは」というが、語感だけで決めたのであれば、映画の微妙な心理ドラマを無視しているとしか思えない。
被疑者の女性と刑事の間で、お互いにひかれるものがありながらも、ついに決定的な言葉は交わされなかった。女性から「一緒にパリに行きませんか」というそれらしい働きかけはあったものの、曖昧に首を振る刑事は何も言わない。『tell me something』は、この場面の女性の気持ちを代弁している。彼女を現実に繋ぎ止めてくれる一言を刑事が発していたならば、「性向」は改善されていたかもしれない。「ある種の行動」に走らざるをえない自分を止めて欲しいという、痛切な叫びを原題からは感じとることができる。そうすると単なる猟奇モノというより、人間の底無しの孤独とでもいうものが主軸になって、映画のトーンが変わってくる。こういう深読みさえも可能なのだから、タイトルは絶対元のままのほうがいいと思う。
それでも、こんなふうにあれこれ映画について考えさせられて、制作者の意図した「tell me something」の構図にまんまとはまっている気がする。寸どめカタルシスの妙。
【評価:★★★★】
投稿者:まるこさん 投稿日:2000年12月12日(火)13時35分58秒
この作品は、私の期待通りの作品でした。斬新かつ迫力があり、次から次へと謎が生まれてきて、一時もスクリーンから目を離す事など出来ませんでした。
スクリーンを見つめながら、私なりに「犯人はこの人だろう」と予想していくのですが、展開が進むにつれて、その予想が脆くも崩れ去る。そこから数々生まれた謎も、結局作品を見終わった今でも、特定出来ずじまい・・・ そんな不思議な作品でした。
そしてもう一つ注目したのが、『八月のクリスマス』以来2度目となる、ハン・ソッキュさんとシム・ウナさんの共演でした。ウナさんは、ソッキュさんをお兄さんの様に慕っていて、ソッキュさんもウナさんを評価しているという記事を見て、私は何故か自分の事の様に嬉しくて、この『カル』でも、『八月のクリスマス』とは違う、渋くて素敵なソッキュさんと、大人っぽいウナさんが、再びスクリーンで共演している姿を見て、やっぱり二人は息が合ってるなあ、と思いました。
『八月のクリスマス』でソッキュさんに出会っていなかったら、この『カル』を見に行く事はなかったと思います。この作品を見て、ソッキュさんの魅力、この作品の魅力を心の底から感じました。
【評価:★★★★★】
投稿者:SUM さん 投稿日:2000年12月18日(月)00時23分38秒
意味深な登場人物の動き。この謎を解きにかかるとかなりハマる映画。私はどっちかというと、ただ単にご都合主義で破綻しているだけと解釈してしまったので、その辺乗り切っていない。
とはいえ、その謎を「おやおや?」と思わせる演出力と役者の力はある。ストーリーをどんどん展開させて押し切るようなこの映画が、監督の表現したかった「コミュニケーションの欠如」というテーマを中心にゆっくりと濃厚に展開するように撮られていたら、それが気になる。大幅にカットしたという話だけに、そういうバージョンはどこかに存在するのかもしれないけれども。
【評価:★★★】
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