娼
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韓国現代史をおりまぜながら一人の娼婦の一生を描いた作品。巨匠イム・グォンテクの娼婦を見る目が温かい。主演は『九老アリラン』と『若い男』に出演しているシン・ウンギョン。
ヨンウン(シン・ウンギョン)は17歳の時に娼婦街に流れてきて、以後あちらこちらさ迷い歩きながら春を売っている。「こんな生活から抜け出したい」という思いはあるもののなかなか自分の思い通りにはならない。そんな夢も希望もない生活を続ける彼女にとって、時折現れては人間らしいぬくもりを感じさせてくる男キルリョン(ハン・ジョンヒョン)の存在が唯一の救い。2人は会うたびにオートバイに乗って郊外へツーリングをするのだった。
1997年韓国映画第3位の興行成績を挙げたヒット作(「1997年韓国映画興行成績」)。高度経済成長を謳歌する韓国の中で末端の生活をする人々が丁寧に描かれており、1970年代から1990年代にかけての韓国の生活史と娼婦街の歴史を理解する助けとなる。製作・企画はイ・テウォン。脚本はイム・グォンテクと後に『バンジージャンプする』で監督デビューするキム・デスン。音楽はキム・スチョル。
第35回(1997)大鐘賞助演女優賞(チョン・ギョンスン)・美術賞(キム・ユジュン)・音響技術賞(キム・ボムス)・衣装賞(クォン・ユジン)、第18回(1997)青龍賞女優主演賞(シン・ウンギョン)・女優助演賞(チョン・ギョンスン)・撮影賞(チョン・ジョミョン)・人気スター賞(シン・ウンギョン)、第34回(1998)百想芸術大賞人気賞(シン・ウンギョン)受賞作品。映画振興公社選定「1997年良い映画」。
初版:1998
最新版:2001/2/19
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投稿者:SUM さん 投稿日:1998年8月7日(金)09時40分00秒
【評価:★★★★】
【ソチョンの鑑賞ノート】
1997年10月11日、第2回(1997)釜山国際映画祭で釜山滞在中に、場末のヨンフン劇場にて鑑賞。
『風の丘を越えて〜西便制』,『祝祭』のイム・グォンテク作品ということで期待して見たせいか、少々期待外れだった。映画そのものは他の韓国映画とは一線を画す重厚な出来で、さすがイム・グォンテクと思わせるし、主演のシン・ウンギョンも文字どおり体を張って熱演しているのだが、いかんせんテーマが私の興味の範囲外。『風の丘を越えて〜西便制』では韓国の伝統的な家族のあり方を、『祝祭』では現代韓国における家族のあり方を描いてきたイム・グォンテク。その彼が『娼』で一体何を伝えたかったのかが、よく分からなかったというのが正直なところ。非常に真面目に作ってあり、監督の娼婦を見る目の温かさは理解できるのだけれど、私はそれ以上のものを感じなかった。
なお、観客は男ばかりかと思っていたが、女性が半分くらい。女性同士、友人と連れ立って来ている客が多かったのが印象的だった。
1999年1月1日執筆
投稿者:Kamibeppuさん 投稿日:1999年4月4日(日)20時44分01秒
友達は、「単なにきわどい映画」だといっていたし、私自身も、余り興味のない内容だったが、イム・グォンテク監督の作品なので見てみた。しかし、流石、イム・グォンテク監督である。70年代から80年代、そして88年のオリンピックに突入、発展し、自信を深めていく韓国。そんな中で、取り残されたような、娼婦街の女性達。この苦悩と現実を、社会の発展の光とその裏の闇を、見事に描いていると思います。
人間性なんてものは、捨てなくてはやっていけないような毎日の生活の中で、ヨンウンに会いに、時々やってくる男、キルリョンとの心の交流。また、幼い頃、本当の親と過ごした、美しい思いでの場所を捜し求める彼女。ようやく見つけたその場所は、あまりに普通で、何の感動もない。逃げ出したい現実、理想であった自分の思い出がつきつける現実。
彼女の本当の居場所は?
逃げ出したい現実は、また続く…。
信じがたいことだが、こんなことが、実は、現在の韓国でも、決して、珍しいことではないらしい。
【評価:★★★★】
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