祝祭
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『風の丘を越えて〜西便制』の監督=イム・グォンテク、原作=李清俊(イ・チョンジュン)のカップリングの再現。今回は、イ・チョンジュンの児童文学『翁草は春を数える花』を読んだイム・グォンテクが感銘を受け、「葬式」をモチーフにした映画と原作小説の『祝祭』を同時進行で製作。劇中『翁草は春を数える花』が絵本と実写で登場。おばあちゃんとウンジの心温まるお話が、この映画を味わい深い物としている。
高名な作家ジュンソプ(アン・ソンギ)の母親(ハン・ウンジン)が亡くなり、葬儀に様々な人々が訪れる。親戚や村の人々、そしてジュンソプと付き合いのある編集者や評論家。何事もなく始まった葬式だが、13年前に家の金を持ち逃げしたヨンスン(オ・ジョンヘ)が姿を現したことから波紋が広がる。様々なあつれきがありながらも、酒と歌と踊りの中、葬式は進行していく。
人間の生と死を暖かく見つめている。見れば見るほど味の出てくる作品。韓国の伝統的なお葬式を舞台に繰り広げられる様々な悲喜劇を、ひとつの「祝祭」として描く。伝統音楽とポップスが融合した金秀哲(キム・スチョル)の音楽も秀逸。同テーマを扱った韓国映画に『学生府君神位』がある。
第17回(1996)青龍賞最優秀作品賞・監督賞、第33回(1997)百想芸術大賞監督賞、第16回(1996)映画評論家協会賞最優秀作品賞・男優演技賞(アン・ソンギ)受賞、第18回(1996)ナント映画祭コンペ部門本選進出作品。映画振興公社選定「1996年良い映画」。
初版:1998
最新版:2000/11/26
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投稿者:SUMさん 投稿日:1998年4月23日(木)9時44分00秒
1994年前後、『ショートカッツ』を初めとして、いわゆるグランドホテル形式の群像劇映画が流行り、複雑さとかを緻密に描いていくようなスタイルが、そういった時代を反映しているのかな、などという話をその頃映画好きの知人としていた覚えがある。
円滑でなかったあの一族は「葬式」を機に一応の和解を見せるわけだが、あの後も「和解」したままかどうかは判らない。もちろんこの和解が映画のテーマなんだが、このすれすれに人間模様をリアルに見せてくれるのが監督の手腕であろう。ドロドロしている部分もあるが、総体としてはずいぶんとあっさりとして、いや当事者としては「すっきり」となんかはしてないものが、人間関係ってはたからみるとあんなもんなんじゃないか、そういう視点で見つめている。
おしつけがましくなく、家族や生と死について考えさせられる映画である。
【評価:★★★★】
投稿者:iwakoさん 投稿日:2002/3/19 10:17:11
映画館ではなくDVDで家で見ました。
伊丹十三監督の『お葬式』みたいな映画なのかしらと最初の方では予想してしまいましたが、ちがいました。葬式というのはハレの場所なので人々が何となく興奮している様がおもしろく、あんな風景は私も何回か葬式や通夜で経験したこともあるなあなど興味深い一面でした。さすがに花札が行われたお葬式お通夜は経験したことはないけれど。
作家の娘の声で映画中朗読される童話『翁草は春を数える花』は、作家が母親に対して現実にはできなかった事を本当はしてあげたかった気持ちの表明なのでしょうか。死が美しく暖かく豊なイメージでとらえられて良いのですが、実際の老人介護は甘くないわけで、あの童話の挿入は受け取る人によって是非が分かれそうだと思いました。
ラストで一族が、困り者のヨンスンも交えて記念撮影をするシーンは良かったです。一族というのは、仲良しばかりで成り立つわけではなく、負の存在またはスパイスとしてヨンスンみたいな人も必要なのですね。
【評価:★★★★】
投稿者:垂水の髭狸さん 投稿日:2003/5/1 18:23:01
韓国のソウルへの第一回目の家内との旅行で、ほとんどの場面では英語でなんとかなったのですが、裏道に迷い込み、旅行者用の地図には漢字と英語が書いてあるがハングルが書いてなくて、ここは誰、私はどこ?という状況に陥り。くそう縦棒や丸の文字を読め、かつ話せるようになるぞ。と決意したのが見事に韓国に嵌りましたね。
人が好き。食事が好き。文化が好き。と三拍子そろい。今では日常会話位は何とかこなせるようになっています。
『祝祭』は人間の喜怒哀楽や韓国の文化をあの時間の中に見事に封じ込めた秀作だと思いながら、楽しみました。神戸でどこで売ってるのでしょう。ご存知でしたら教えてください。
【評価:★★★★★】
投稿者:たびこさん 投稿日:2004/5/22 23:42:17
初めてみたときはテレビの録画に失敗し、最後が途切れてしまったせいか、韓国のお葬式ってこんな感じかあ、とその形式にばかり気をとられてしまった気がします。私が身内のお葬式というものを経験していなかったせいかもしれません。
実際にその立場になれば、悲しんでばかりはいられないし、ソツなくこなすことだけが大事なわけでもない。めったに顔をあわすことのない親戚が集まれば、どんな家でももめごとの一つや二つはあるもので、今ではそれがよく分かります。それはどこの国でもおんなじなんだなあと思いました。
作品中にでてくる絵本は、老いるという事、死を迎えるということが、とても優しい視点で語られていて、考えさせられました。
最後にみんなでそろって写真を撮っていましたが、お葬式の間に起きた色々な出来事が、それで昇華させられたような気がします。祖父の葬儀の時に、伯父がカメラを持ってこなかったことを悔やんでいたことを思い出しました。お葬式とは故人が自分の命と引き換えに、一同が顔を合わせる機会をつくってくれる、そういうものだと思いました。
【評価:★★★★】
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