1997年のアジアフォーカス・福岡映画祭で上映。上映作品中最多観客を動員し大好評を博した。原題の「犬のような」は「最悪の」という意味。
記録的な猛暑の夏のある日。人々のイライラが頂点に達していたその時、夫ソング(イ・ジェラク)から虐待を受けていたジョンヒ(ハ・ユミ)を目撃した団地の女達は、彼女を助けようとして勢い余って夫ソングを殺してしまう。次々と到着する警官隊。彼女たちは成り行きで団地の屋上に篭城するが、事件を聞きつけたテレビ局のホン記者(ムン・スジン)が彼女たちのことを報道するにいたり、市民からの共感を得、ふとしたことで発生した事件は、ついに女性の権利を守るための戦いに発展する。
あらすじを読むとおどろおどろしく感じられるかもしれないが、映画はコメディタッチでテンポも良く、男達をこてんぱんにやっつける女性達は見ていて爽快感すらある。韓国映画の女性主人公といえば、どちらかといえば男から虐げられる存在であることが多いが、この映画は全く逆。今までの韓国映画の常識、そして韓国社会の常識を皮肉っているかのような快作。香港映画祭やハワイ映画祭でも大絶賛された。
機動隊長を演じるチョン・ボソクは後に『秘花 〜スジョンの愛〜』に出演する。こそ泥のドッペ役でイ・ギョンヨンが、また彼の相棒ダルス役でキム・ミンジョンが出演している。途中で自殺してしまうお婆さんを演じていているのは『八月のクリスマス』で葬式用の写真を取り直しに来るお婆さんを演じていたキム・エラ。キム・スンウも鎮圧隊長役でラストにちょっとだけ出演している。歌手で美しいニューハーフのお嬢さんを演じるのは、「緑色地帯」のキム・アルム。食堂のおばちゃんで、出前に来て事件にまきこまれるコン・ジュテク役を演じたのは、これまたプロの歌手イム・ヒスク。エンディングのテーマソングも彼女の歌とか。
脚本は、監督のイ・ミニョン他、イ・ギョンシク、チョ・ミノ、チャン・ジンの4人。撮影はソ・ジョンミン。編集はパク・コッチ。企画はチャン・ヒョンス,イ・ビョンヒョン,キム・ウンジュ。
1995年度映画振興公社選定「良い映画(下半期)」、第32回(1996)百想芸術大賞新人監督賞(イ・ミニョン)・女子人気賞(チョン・ソンギョン)、第34回(1996)大鐘賞新人監督賞(イ・ミニョン)、第16回(1995)青龍賞女優助演賞(ソン・オクスク)・新人監督賞(イ・ミニョン)、第6回(1995)春史映画芸術賞創作脚本賞(イ・ギョンシク)・女子優秀演技賞(キム・ボヨン)・新人監督賞(イ・ミニョン)、1996年ハワイ映画祭グランプリ受賞、第46回(1996)ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品作品。
日本語字幕付きのDVD&Videoは発売されていないが、ムックの『韓国ドラマスターLIVE 2』(竹書房、2005年)に日本語字幕付きで本作を完全収録したDVDが付いている。
初版:1998/6/23
最新版:2000/12/11
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