バッドムービー
題名 英題
原題 ハングル |
バッドムービー Timeless,Bottomless,Bad Movie BAD MOVIE(日本上映時) 悪い映画 나쁜 영화 |
製作年 |
1997 |
時間 |
137(映像資料院データベース)
125(韓国映画年鑑)
120(釜山国際映画祭)
143(東京国際映画祭)
116(日本公開版) |
製作 |
ミラシン・コリア |
監督 |
チャン・ソヌ |
出演 |
クォン・ヒョクシン チャン・ナムギョン ハン・スルギ パク・キョンウォン イ・ジェギョン ピョン・サンギュ キム・ドッキ イ・ヒョヌク キム・コッチ チュ・ジンジュ チェ・ミソン ソン・ガンホ |
日本版 Video DVD |
字幕版Video DVD |
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ストリート・キッズとホームレスが繰り広げるフェイク・ドキュメンタリー。家出、窃盗、シンナー吸引、強姦などの非行を繰り返す少年・少女の姿をドキュメンタリー・タッチで描く。主な出演者は、下着姿で家を追い出された美女、頭の弱い鳥頭、バイクに乗せてもらうためならセックスも殺人も厭わない少女ウンコ、盗み癖のある血便男、ヤクでハイになると盗みができるイモなど10代の若者達。監督のチャン・ソヌは社会的弱者に目を向けた作品や、タブーに挑戦した作品を生み出すことで有名で、韓国ではアンチ・ヒーロー的存在となっているが、若者やホームレスの刹那的で無軌道な行動を映像化したこの作品でも、監督の人間の弱さに対する暖かい視線を感じることが出来る。
映画の冒頭に「決まった出演なし」「決まった脚本なし」「決まった撮影なし」「決まった音楽なし」とドキュメンタリーを印象づけるような文字が並ぶが、実際には綿密に計画的に撮影しているようにも見え、そこが「フェイク・ドキュメンタリー」と言われる所以。その一方で、あまりにリアルな映像は、どこまでが作り物でどこからが本物なのか分からない部分があり、観客を惑わせる。
韓国では、封切り前に、日本の映倫にあたる公倫(現、映像物等級委員会)から「等級なし」の判定(事実上の上映禁止)を受け、騒ぎになった。結局、一部修正して再審後に「年少者入場不可」等級(いわゆる「成人指定」)を受け上映にこぎつけた。騒動のため、過激な性描写が話題になったが、問題意識は非常にまじめな作品。1998年に出品されたAvignonアジア映画祭では題名に反して「良い映画」との評も出たが、多くの映画祭では観客が気分を悪くして途中退席するなど「やっぱり悪い映画」との評も。
日本で発売されたDVDには、日本公開版(116分)と共に、日韓で未公開のディレクターズ・カット版(142分)も収録されている。
脚本は監督のチャン・ソヌ他、キム・スヒョン他19人が担当。35mm、16mm、8mm、ビデオ、アニメなどを駆使した映像と、ポンチャック(コリアン・ラップ)などをふんだんに使った音楽の組み合わせが面白い。この映画の16mm撮影とデジタル6mm撮影を担当したキム・ウヒョンは、後にチャン・ソヌの『LIES/嘘』、そして『ハッピーエンド』の撮影監督を担当する。音楽を担当したのは、カン・ギヨン(現ダルパラン)、チュ・ジェグク。最後に流れる印象的な曲は、ファン・シネ・バンドの代表曲『チャンポン』。
第2回(1997)釜山国際映画祭「コリアン・パノラマ」部門で「NETPAC賞」を受賞。第10回(1997)東京国際映画祭では『バッド・ムービー』という題名で紹介され、アジア映画賞1997(渋谷区長賞)を受賞。第48回(1998)ベルリン国際映画祭フォーラム部門、第45回(1998)シドニー映画祭、第34回(1998)ペサロ映画祭、第22回(1998)モントリオール世界映画祭、第17回(1998)バンクーバー国際映画祭、第42回(1998)ロンドン国際映画祭、第9回(1998)ストックホルム国際映画祭、第28回(1999)ロッテルダム国際映画祭、第35回(2002)シッチェス国際映画祭「オリエント・エクスプレス」部門などにも出品された。
初版:1998
最新版:2000/5/8
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投稿者:SUMさん 投稿日:1998年12月20日(日)10時20分37秒
なかな良くできた作品ではあります。とはいえ、名前の通り、「悪い映画」を狙ったしゃれか技術的なお遊びというか見せびらかしがいい方に出ている部分も決して少なくないものの、空回りしているとしか思えないものも少なくなかったのが残念です。
この系統の諸外国の映画と比べると一歩及ばなかった感は否めないものの、韓国でもこういった作品が撮れたと評価することはできるでしょうし、韓国での「ワル」な若者を見るという意味では価値があるでしょう。
こういう映画だけにといいましょうか、エンドクレジットに名高いアングラバンドの名前がずいぶん出てきますが、こういった面が聞き所ではあるともいえるでしょう。
【評価:★★★】
【ソチョンの鑑賞ノート】
ストリート・キッズとホームレスが繰り広げるフェイク・ドキュメンタリー。という訳で、おのずとラリー・クラークの『キッズ』(1995年,米)や原田眞人の『バウンス Ko GALS』(1997年,日本)と比較されてしまうと思うのですが、『キッズ』と『バウンス〜』の主人公達が劇中で成長していく、または自分達の行動を振返る部分があって、それゆえ観客にとって見易い(=共感しやすい)映画になっているのに対して、『バッドムービー』はひたすらストリート・キッズのバッドな振る舞いを垂れ流しにするので、その点(作品の善し悪しは別として)ちょっと共感しにくい映画になっています。
以上は、韓国版ビデオを見た時のファースト・インプレッション。
先日、好運にも映画雑誌からお呼びが掛かって、監督のチャン・ソヌにインタビューする機会を得ました。監督自ら「演出も何もしていない」と豪語している作品で、引き受けたはいいけれど一体全体何を聞けば良いのやらと思いながら会場に到着すると、「劇中最後にレイプされちゃう「姫」役のチェ・ミソンさんも一緒に来日されました」との話。アイゴ、アドリブきかない私にそんなごむたいな、お代官様!と思うまもなくインタビュー開始。
最初は、チャン・ソヌ作品群における『バッドムービー』の位置づけとか、韓国映画史から見た場合の『バッドムービー』の存在意義を探ろうと(笑)、ワタクシにありがちな堅い質問をしていたのですが、当然のようにチェ・ミソンさんがつまらなそうな顔をされています。こりゃマズイということで、途中から監督とチェ・ミソンさんの会話を司会するような感じにチェンジしたのですが、これが大あたり。ストリート・キッズやホームレス達のその後やら、監督との触れ合いやら、お二人の話は漫才のように面白かったです。その内容はここで書く訳にはいかないので、雑誌の記事(『キネマ旬報』2000年10月下旬号)を後日読んで下さいということになるのですが、とにかく監督と出演陣が何を思って、そして何を伝えたくてこの映画を作ったのか、それがよ〜っく分かってヨカッタです。
インタビュー後は、子供達を見る監督の視線は北野武の『キッズ・リターン』的でもあるなと思ったことです。ただ、最初に『バッドムービー』を観た時の印象とインタビューから受けた印象とはかなりの隔たりがあり、これは私の映画鑑賞眼の欠如が成せる技なのか、それとも・・・ 幸い、東京から一週間遅れで名古屋でも公開されますので、もう一度見直しておこうと思います。
チャン・ソヌはやんちゃ坊主がそのまま親父になったような人でした。写真や作品を見ると恐い人のように思えるのですが、全然普通の変な親父です(笑)。できれば、この映画は監督と出演陣のトークショー付きで見てもらいたいなぁ。そういう企画があればですけどね。
この記事で触れている『キッズ』、『バウンス Ko GALS』、それに『キッズ・リターン』はいずれもビデオで出ていますので、参考映画として一度ご覧になって見て下さい。『バッドムービー』を見る前でも、見た後でもどちらでもいいですから。ということは『バッドムービー』も見てねってことなんですが。
【後記】
後日、映画館で字幕付きを再度鑑賞。ビデオで見るのとは微妙に印象が異なるもので、最後の集団レイプのシーンの後、レイプをした男の彼女が彼を問い詰めるシーンが印象的でした。そして、浮浪者の娘ドヨンの死・・・ 最後の最後に監督が言いたかったことが凝縮されているように感じました。
2000年8月31日執筆
投稿者:ゼアリズエンタープライズさん 投稿日:2000年9月1日(金)18時37分17秒
渋谷のシアター・イメージフォーラムにて9/2(土)より『バッドムービー』のロードショーを毎夜9時よりを行います。
韓国映画界の異端児チャン・ソヌ監督の送る韓国では様々な物議を醸した衝撃の問題作です。ソウルに暮らすストリート・キッズたちを余すところなく描いてあります。
是非、皆様、お誘い合わせの上、ご来場下さい。
絶対、損はさせません!
【評価:★★★★★】
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