私(ソチョン)が韓国映画にはまるきっかけとなった映画。1996年、釜山国際映画祭にて鑑賞。それまでは、日本公開作しか見ていなかったが、この映画で未公開作の中にも珠玉の映画があることを知る。韓国映画=暗い・堅い・悲惨 という先入観を持っていたが、それは大きな間違いと気づかせてくれた最初の作品。
恋に不器用な中年男女の素敵な恋愛物語。男性主人公のずぼらな映画監督ハ・ソンウを監督のペ・チャンホが演じ、女性主人公、ちょっと完璧主義気味のインテリア・コーディネイターのスインを監督の実の奥さん(!)キム・ユミが演じている。
題材としては特に新しい物ではないけれど、世界中探しても、これほど素敵で、見ていて幸せな気持ちになれる恋愛映画はそうそうないだろうと思えるほどの珠玉の出来。誰にでも理解できる(韓国語ができなくても、英語の字幕が無くても理解可能)普遍性のある単純なストーリーに加え、ペ・チャンホ監督ならではの心憎いまでの演出の数々。主人公の二人のおしゃれで小粋な会話と、ちょっとした仕草。今までのぺ・チャンホ作品では演出のしすぎが鼻につくと感じることもあったが、この映画では全くそんなことはなく、監督の演出が全ての俳優の魅力を引き出しつくしている。また、「ペ・チャンホってホント映画が好きなんだなぁ〜」と感じさせてくれるエピソードが随所に出てきて、映画好きにはたまらない逸品。
30秒以上笑いが途絶えることのないコメディータッチな映画でありながら、最後にちょっと考えさせられた後、ほのぼのとした気分を漂わせながら終了。老若男女世界中の人々に観てもらいたい映画です。
製作はペ・チャンホ。原案はキム・ユミ、脚本は監督のペ・チャンホ。脚本と主演を監督夫婦が担当していることになるのだが、キム・ユミ(1962年ソウル生まれ、漢陽女子大学応用美術学科卒)はプロのインテリア・デザイナーだったのが、9歳年上のペ・チャンホ監督とある講義で出会い、彼の人間的魅力にひかれて、3ヶ月後に結婚(1993年)。『若い男』の製作にタッチした後、この『ラブ・ストーリー』に出演するため34歳にして女優に転身した。話の経緯からして、この『ラブ・ストーリー』はペ・チャンホとキム・ユミの出会いの物語を映画化したものと思われる。
第16回(1996)映画評論家協会賞脚本賞(ペ・チャンホ)受賞作品。
初版:1998/5/27
最新版:2001/1/1
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