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ヒューマニスト


題名
英題

ハングル
ヒューマニスト
Humanist
Dadnap
휴머니스트
製作年 2001
時間 95
製作
配給
共同製作

製作支援
ベア・エンターテイメント
コロンビア・トライスター
ソウル放送
第一創業投資
シムマニ・エンタ・ファンド
監督 イ・ムヨン
出演 アン・ジェモ
カン・ソンジン
パク・サンミョン
ミョン・スンミ
パク・ヨンギュ
ノ・ギョンヘ
キム・ミョンス
イ・ムヨン
コ・インベ
パク・チュナ
コ・ヨンハ
イ・ギョンソン
ミン・ソンジュ
アン・ソックァン(特別出演)
チェ・ラン(特別出演)
日本版
Video
DVD
DVD

 教会、家族、警察、若者など、すべてが堕落して腐敗した世の中を描いた社会風刺のブラック・コメディー。題名からして既に逆説的で、韓国社会のあらゆる道徳的価値観を嘲弄する内容になっている。

 にわか成金の退役将校のドラ息子で、何でも金で解決できると思っているマテオ(マタイ:アン・ジェモ)、インポで自分の絵を売って生活しているユグレナ(カン・ソンジン)、小学生のときの怪我が原因で子供並の知能しか持ち合わせていない巨漢のアメーバ(パク・サンミョン)。孤児院出身のユグレナとアメーバは金目当てでマテオと付き合っている。ある日、飲酒運転をしていた三人は、ものの弾みで警察官を殺してしまう。そして、それを目撃したほかの警官(アン・ソックァン)から脅迫され、巨額の口止め料を要求される。悩んだ末、マテオは権威主義的な自分の父親(パク・ヨンギュ)を拉致して身代金をせしめようとするのだが・・・

 1994年5月に起ったパク・ハンサン事件が元になっている作品。この事件は、息子が自分の両親を殺害するという儒教社会の韓国にあっては衝撃的な事件で、当時、教育制度の失敗や、反道徳的な行動の広がりに対する危機意識が高まったが、この映画は「なぜ、パク・ハンサンは両親を殺したのか? そこには外部からは窺い知れない何かがあったのではないか?」という関心からスタートしている。

 『悪い女 青い門』『ドクターK』『NOWHERE 情け容赦無し』で脇役出演していたアン・ジェモが初じめて主役を演じ、『アタック・ザ・ガス・ステーション!』でタンタラを演じていたカン・ソンジン、ガソリンスタンド社長を演じていたパク・ヨンギュ、そして『反則王』『リベラ・メ』のパク・サンミョンらと共演している。また、『スプリング・イン・ホームタウン』で主人公の少年の姉を演じていたミョン・スンミが、全羅道なまりのひどい修道女を演じる。

 製作費は約13億ウォン。ポップ・コラムニスト、ラジオのDJ、シナリオ作家など多彩な経歴を誇るイ・ムヨン(1962年生まれ)の映画監督デビュー作。彼は、ニューヨーク・ニュージャージー州立大学(ドラマ専攻)を卒業しており、この映画では音楽も担当。インタビュアー役で端役出演もしている。脚本は、『JSA』パク・チャヌクと監督のイ・ムヨン。なお、イ・ムヨンはパク・チャヌクとは親友で、『3人組』『アナーキスト』、『JSA』の脚本を彼と共同執筆している他、『ボーン・トゥ・キル』『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』のシナリオも担当している。撮影は『ジャングル・ストーリー』『陽が西から昇ったら』『ホワイトクリスマス 恋しくて、逢いたくて』『アウトライブ −飛天舞−』のピョン・ヒソン。

 主題曲や挿入歌として、オオブ・プロジェクトや故チェ・ムリョンの歌が使用されているが、これらが収録されたサントラが最高!と評判。

初版:2001/6/11



投稿者:Q さん 投稿日:2002/8/27 14:07:08

 Saerom Entertainment Corporation 製作による英語字幕付きDVDにて観賞いたしました。

 個人的に、あらゆる映画のジャンルの中で、的確にマトを当てることが一番難しいのがいわゆるブラック・コメディーではないかと思います。笑いに集中しすぎると、弛緩して軽くなってしまいますし、逆にあまりに深刻、あるいは陰惨になると、濃すぎるコーヒーのように苦すぎて飲み込めない。しかも、題材および描写は酷烈・反常識でなければブラック・コメディーとは呼べない。

 さて、過去十年間製作された韓国映画の中で、初めからブラック・コメディーを意図して企画・製作したと思われる作品は、私が見た限りでは完成度を度外視しても非常に少ないのですが、この『ヒューマニスト』はその数少ない作品のうちの一つです。後は『新装開店』くらいでしょうか? パンチの強烈さにおいて『ヒューマニスト』には遠く及ばないですが。

 一口で言うと「アクの強い」という表現を絵に描いたような映画ですね。徴兵制、地方差別、障害者差別、大都市上流階層の特権意識と俗物性。『友へ/チング』等の映画では美しくノスタルジーに包まれて描写された「男の友情」の裏面など、ありとあらゆる形で韓国社会の偽善性を、執拗かつ皮肉たっぷりに、これでもかこれでもか、と言わんばかりに暴いてゆきます。なにしろ誘拐事件に巻き込まれるカトリックの尼さん(ミョン・スンミ)以外、ほとんど全ての登場人物が、どうしょうもない強迫症患者であるか、あるいは「他人の不幸は自分の幸せ」と考えているウルトラ機会主義者であるか。とにかく『ヒューマニスト』という題名にふさわしい人物は、それこそ眼を皿のようにして探しても見当たらないのです。でも、こんなにハチャメチャに脱線している社会は、もはや寓話の世界みたいで滑稽に見えてしまう。それがブラック・コメディーたる所以です。

 この映画、確かにおかしいのですが、実際に経験していたら笑えるどころか卒倒してしまいそうな無法・非道・理不尽の極みといったシチュエーションを積み重ねていくので、一歩間違えば気の利いた皮肉からただの悪趣味へと成り下がる可能性があったでしょう。軍隊から脱走したせいで、すっかり人生が狂ってしまったホームレスおじさんの、腐乱して蛆(うじ)が這いまわる足をいきなりアップでみせつけられたり、ユグレナ(『アタック・ザ・ガス・ステーション!』のカン・ソンジン)は幼い時に犬に性器を噛まれて生殖不能という設定だったり、アメーバ(『反則王』『リベラ・メ』『花嫁はギャングスター』のパク・サンミョン)は脳震盪の治療のため「あるもの」をゴクゴクと飲んじゃったり、悪乗りしすぎで生理的に「おえっ」とくるようなところも少なくない。しかしながら、監督イ・ムヨンと脚本家パク・チャヌク(『JSA』『復讐者に憐れみを』の監督)両氏の「世界観」が首尾一貫していて力強くまとめてあるので、途中で腰砕けになって甘っちょろく終わるという韓国映画の弱点の一つは見事にクリアしています。それに、主人公マテオ(アン・ジェモ)が金目当てのただの悪人ではなく、彼なりの思想(?)の持ち主で、最後まで反省しないままクールに韓国社会を嘲笑し続けるところが大いに気にいりました。

 また、マテオが父親誘拐計画を立てる際、なんと黒澤明の『天国と地獄』を参照したり(非常に手の込んだ、モノクロ映像によるオマージュが楽しめます)、肩透し的なオチはパゾリーニの『豚小屋』を連想させたりするなど、映画好きの方々にアピールする要素も持っています(このようなマニア的な部分は、多分脚本を書いたパク監督の貢献であるだろうと私は睨んでいます)。

 アン・ジェモ、パク・サンミョン、カン・ソンジンは、皆個性を活かして好演。全羅道なまりを駆使するミョン・スンミ、主人公を痛めつける悪徳警察官役が大ハマリのアン・ソックァン、目玉が飛び出さんばかりのご立腹の表情が楽しめる父親役のパク・ヨンギュなど、助演陣も充実しています。

 最後に蛇足的に付け加えますと、マテオ(=マタイ)の家族はカトリックという設定で、聖堂でのマテオの家族と神父様とのやり取りなど、カトリックの私には自然に笑えましたが、カトリック教会に無縁な方には意味不明に写る可能性があります。しかし、カトリックのことなど知らなくても映画全般を理解するのには何の支障もありませんので、ご心配なく。

【評価:★★★★】


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