1980年代を代表するロードムービーの傑作。同じくチェ・イノが原作・脚本を手がけている『馬鹿たちの行進』に始まる「馬鹿シリーズ」の一つ。
日本では、1985年に『鯨とり −コレサニャン−』というタイトルで公開された後、2011年に『鯨とり ナドヤカンダ』と改題されてリバイバル公開された。
ピョンテ(キム・スチョル)は、結婚するまで童貞を守ろうと考えているような内気でうだつのあがらない大学生。彼はひょんなことで出会った浮浪者「親分」(アン・ソンギ)に連れて行かれた売春宿で、失語症の少女チュンジャ(イ・ミスク)と出会う。彼女と一夜を共にしたピョンテは、チュンジャが東海(日本海)の離島の出身と知り、彼女を救出して故郷に送り届けてやる決心をする。そして「親分」を加えた三人の旅が始まる。
題名の『鯨とり』は、ロック歌手ソン・チャンシク(宋昌植)が歌い、放送禁止となった『鯨とりの歌』から来ている。ちなみに、『鯨とりの歌』は『馬鹿たちの行進』の主題歌だった。また「鯨とり(コレサニャン)」は、韓国語で「何か巨大な目的を狙う」という意味の隠語でもある。
『馬鹿たちの行進』も『鯨とり ナドヤカンダ』もチェ・イノが脚本を書いているが、両作品の主人公は同じくピョンテ(炳泰,ちょっと頭の足りない奴といった印象を与える名前)という名の学生。また『馬鹿たちの行進』ではヨンチョルという青年が「東海で鯨を捕まえたい」と叫んでおり、そういった点からも『鯨とり ナドヤカンダ』との関連が見て取れる。
ミュージシャンとして有名なキム・スチョルが主役のピョンテを演じている。後に『情事』,『燃ゆる月』などに出演するベテラン女優イ・ミスクの若き日の代表作だが、この作品の彼女は中山美穂のような可憐さだ。また、浮浪者を演じるアン・ソンギの躍動感あふれる演技が素晴らしい。
製作はカン・デジン。企画はファン・ギソンとムン・ヒョヌク。助監督はイ・ミョンセ。撮影はチョン・グァンソク。音楽はキム・スチョル。
興行的にも大ヒットし、1984年の最高観客動員記録をマークした(「興行成績」)。
第4回(1984)映画評論家協会賞最優秀作品賞・監督賞(ペ・チャンホ)、第20回(1984)百想芸術大賞大賞・作品賞・新人賞(キム・スチョル)受賞、第1回(1985)東京国際映画祭出品作品。
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初版:2000/12/12 最新版:2011/3/27
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