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美術館の隣の動物園


画像提供:東光徳間(以下、同じ)


題名
英題
ハングル
美術館の隣の動物園
Art Museum by the Zoo
미술관 옆 동물원
製作年 1998
時間 108
製作
製作投資
配給
シネ2000
シネマ・サービス
シネマ・サービス
監督 イ・ジョンヒャン
出演 シム・ウナ
イ・ソンジェ
アン・ソンギ
ソン・ソンミ
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 ある日突然同居することになった男女が反目しながらもやがて愛し合うようになる過程を描く新鮮なラブ・ストーリー。第18回(1997)青龍賞から始まったシナリオ公募で大賞を取った作品で、審査委員だったキム・ユジンソン・ヌンハンキム・ソンスチャン・ユニョンらが揃って絶賛。監督を申し出る者多数という状況の中で、4年かけてこのシナリオを書いた女流作家イ・ジョンヒャンが自らメガホンを取った。独特な設定とユーモアあふれる台詞が秀逸。1998年末に封切られ、年を越してのロングランとなったヒット作でもある。

 軍の休暇を恋人のタヘ(ソン・ソンミ)と過ごそうと胸膨らませて帰ってきたチョルス(イ・ソンジェ)。しかし彼女は既に引っ越しており、そこに住んでいたのは結婚式のビデオ撮影技師チュニ(シム・ウナ)だった。チョルスはタヘと連絡をとるためにチュニ宅に居座るが、チュニは滞納していた家賃をチョルスが払ってくれたため彼を追い出すことができず、二人の奇妙な共同生活が始まる。やがてタヘが別の男と結婚することを知り愕然とするチョルス。一方、国会議員補佐官インゴン(アン・ソンギ)を片思いしているチュニは、理想の恋愛をシナリオにしている。そして、そのシナリオに関心を持ち、執筆に口を出すチョルス。異なる恋愛観を持ち、ことごとく対立する二人だが、シナリオを共同執筆するに連れお互いの感情に変化が現れ始める。

 チュニはシナリオ公募に出すためのシナリオを書いているが、このシナリオ自身がこの映画のシナリオという「映画の中の映画」設定が面白い。がさつで掃除もせず、歯も磨かず、毎朝遅くになってから起きるという性格のチュニのモデルは監督自身とか。また監督自身、タヘの母親の電話の声で映画出演している。奇妙な題名だが、美術館と動物園は映画の舞台でもあり、静的で内気な美術館のチュニ、動的で活気あふれる動物園のチョルスという主人公二人の性格も表している。アン・ソンギとソン・ソンミは一人二役。それぞれ現実の世界ではチュニとチョルスの片思いの相手として登場する他、シナリオの中でアン・ソンギは動物病院獣医師インゴンを、ソン・ソンミは美術館案内員タヘを演じる。

 美術館と動物園が両方ある果川が背景で、映画で一度も公開されたことがない国立現代美術館が舞台となる。シム・ウナのノーメークでありながらも清純な容姿が話題。なお、ソン・ソンミは1996年の SBS スーパー・エリート・モデル金賞のタレント。

 第7回(1999)春史映画芸術賞創作脚本賞(イ・ジョンヒャン)・技術賞(オ・サンマン:美術)・新人監督賞・男子新しい顔演技賞(イ・ソンジェ)、第35回(1999)百想芸術大賞男子新人演技賞(イ・ソンジェ)、第36回(1999)大鐘賞女優主演賞(シム・ウナ)・新人監督賞・新人男優賞(イ・ソンジェ)、第19回(1999)映画評論家協会賞新人監督賞・新人男優賞(イ・ソンジェ)、第20回(1999)青龍賞脚本賞(イ・ジョンヒャン)受賞作品。

 第4回あいち国際女性映画祭 '99、第3回(1999)富川国際ファンタスティック映画祭「ファンタスティック韓国映画特別展」部門出品、第48回(1999)マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭本選進出、第4回(1999)上海国際映画祭コンペ部門進出、第4回(1999)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門、第5回(2000)ケーララ国際映画祭、第21回(2001)Fantasporto国際映画祭監督週間部門出品作品。

初版:1998/12
最新版:2001/2/14



投稿者:コチョンさん 投稿日:1999年1月16日(土)23時00分38秒

 見終わって、隣で一人で座っていた女性に、一緒にご飯でも食べませんか、と生まれて初めてのナンパをしてしまうところで、危うく思いとどまりました。もともと何の関係もなかった男女が惹かれあうというストーリー自体にも原因がありますけど、ともかくそれくらい気持ちが開放される、かわいい映画で、誰かに話をしたくなってしまいます。韓国ではとくに女性が一人で映画を見に行くことはあまりないようですが、この場合は封切り日の第一回で、シム・ウナほかの舞台挨拶があったため彼女は一人で来ていたのでしょう。

 脚本が賞を取ったという評判通り、筋書きやせりふが大変に良くできています。2組のカップルそれぞれのやりとりが、細かい笑いに満ちていて退屈しない。またラストシーンのシム・ウナがすばらしく、メロドラマにありがちな結末が逆に新鮮に見えて驚きます。また、映画内の映画について、衣装などかなり誇張された演出(あるいは、ソン・ソンミの場合単に演技になれてないだけなのかもしらんが)で現実の世界と対比するという方法によって、いまだシナリオを書いている段階という想像の世界をうまく表現しています。

 映画とは直接関係ありませんが、韓国語学習に大変適した映画だと思います。田舎の話でも昔の話でもなく、登場人物もワルすぎず良い子すぎず、というところです。ただし、何がおかしいのか説明してもらえる韓国人が必要かもしれません。私もいくつか人に聞きました。隣に座っていた女性じゃないですよ(そうか、その手があったか・・・)。


【評価:★★★★】


【ソチョンの鑑賞ノート】

 1999年4月1日、ソウルの新村グランド劇場で鑑賞

 文章で読むと複雑な設定ですが、様々な工夫で非常に理解し易くなっていて、映像だけ見ていてもちゃんとストーリーを追える構成になっています。そして主役の二人、シム・ウナとイ・ソンジェの演技を見ているだけでも十分楽しめます。ただ、この映画に関しては前評判がすごく高かったので、それはそれはものすごい映画なのだろうと思って見に行ったせいか、私は今一つ楽しめませんでした。最大の理由は、この映画は普通の若者の日常をさりげなく自然に描いていて、ジーンと来る映画が好きな私にはちょっと物足りなかったこと。また、私が「台詞の面白味」を聞き取れる、そして理解できるほどの韓国語の能力を持っていない事と、閑散とした映画館(観客5人)で見ていたというのも理由の一つかもしれません。韓国で映画を見る時には、韓国の皆さんのオーバーなリアクションに助けられて映画を楽しんでいる部分が多分にありますから。

 この映画の本当の面白さは台詞に依存している部分が大きいそうなので、日本語字幕付きを見る機会があったら是非もう一度見てみたいですね。

 ところで、この映画の主演男優イ・ソンジェは『ドクター・ポン』の頃のハン・ソッキュを彷彿とさせる俳優ですね。将来大物になるかも。

1999年5月8日執筆

【追記】

 あいち国際女性映画祭で字幕付きを見た。語学堪能な方から、「この映画は台詞の面白さが占める割合が大きい」という話を聞いていたけれど、もちろん台詞が分かって面白味が理解できた箇所も多々あるものの、解釈違いをしていたという事もなく、字幕なしで見た時に受けた印象とは大きくは異ならなかった。

 この映画祭では監督が来日しており、少しお話する機会も持てたのだが、映画の持っている少女漫画のような可愛らしさは、この監督自身が持っている雰囲気なのだと実感。良い映画というのはその映画しか持っていない独特の雰囲気というのがあるのだけれど、その雰囲気というのはやはり監督自身が持っているそれと合致することが多い。『八月のクリスマス』ホ・ジノ監督がその良い例だ。そして、同じ事を『美術館の隣の動物園』とイ・ジョンヒャン監督でも感じた。独特な雰囲気を持っている映画というのは、「その監督にしか作れない映画」であることがほとんどで、その意味では、少女漫画のような独特な可愛らしさを持つこの映画の存在はやはり希有なものであると思う。

 女性映画祭で鑑賞した女性に感想を聞くと、皆さんこの映画を心の底から楽しまれたようで大絶賛。監督の人柄に触れたというのも大きいのだろうけれど、映画の持つナチュラルさにひかれている方が多い様子。私は男なのでピンと来ないのだけれど、「肩肘張って生きるのは止めよう。自分のありのままの姿で自然に生きよう」というような、そんな監督からのメッセージを感じ取り、それに共感しているのかもしれない。

1999年9月9日執筆

【更に追記】

 『美術館の隣の動物園』が日本公開されましたので、以前から思っていたことをまとめておきます。

 この映画、韓国の女性陣には大変好評で、それこそ「新しい女性像を示した」というような高い評価があるのですが、日本人の目から見ると、どこがそれ程革新的なのかぴんと来ない。日本公開時のキャッチコピーのように「キュートなラブストーリー」を素直に楽しめば良いは良いのですが、この映画の評価の日韓の温度差というのは、そのまま日韓の文化や女性観の違いにつながるので、その辺りの事情を知っておくことは損にはならないでしょう。

 この映画があいち国際女性映画祭で上映されたときに、会場の女性から「男性が女性にビールを注がせるのは、男女の役割分担を固定化するもので、あぁいうシーンはジェンダー的視点から見てよくない」という批判が飛び出しました。ジェンダー的視点の良し悪しは置いておくとして、これは日常生活の中で女性が男性に酒を注ぐ習慣が当たり前の日本では成立する批判なのですが、韓国では事情が全然違うのです。韓国では通常、女性が男性にお酌をするということは絶対にあり得ません。お酌をするという行動は昔で言えば妓生(キーセン)、今で言えば水商売の女性がやることで、普通の女性がそれをやると尻軽女に見られてしまいます。これが韓国の常識なのです。ところが、『美術館の隣の動物園』では、チョルスが突き出したグラスにチュニはいとも簡単にビールを注ぎます。これが何を意味しているのか、実のところ私にもよく分からないのですが、一つの解釈としては「伝統的な価値観にとらわれず、男性とも対等にフランクに付き合う新しい女性像の具現化」とみなすことは可能だろうと思います。

 昨今、日本では夫婦別姓がよく論議され、その意味として「女性の自立」を制度面・精神面から支援することがあげられますが、韓国では昔から夫婦別姓です。では、韓国の制度のほうが進んでいるかというと、話はそれ程単純ではありません。韓国には「族譜」と呼ばれる家系図があるのですが、妻は(姓が異なるため)その家系図に名前を入れてもらえません。つまり、儒教社会において、歴史的に女性は「男の子」を産む道具として扱われるにすぎず、夫と妻の対等の関係を意図した夫婦別姓ではなく、女性蔑視の結果としての夫婦別姓なのです。

 ここでは、男にお酌をする女性、夫婦別姓の例を取り上げましたが、全く同じ行動・制度でもその国のバックグラウンドに熟知していないと、その意味を正反対に取ってしまう事になります。そして、『美術館の隣の動物園』はそういう文化的バックグラウンドの違いによって、外国人が見るとその意味を取り違えてしまう、またはその新しさに全然気づけない可能性が高い作品であるというのが私の印象です。

 ですから、この映画を「キュートなラブストーリー」として楽しんでいただくのも、それはそれで、もちろん良いのですが、できればこの映画をきっかけとして韓国文化に関する書籍を紐解いていただきたいですね。そうすれば、この映画をよりよく理解することができるようになるでしょうし、そういった知識は他の韓国映画を見る際においてもきっと役に立つはずです。そして、観客に韓国文化を勉強する契機になっているとしたら、この映画を日本公開した価値はとてつもなく大きいと言えるでしょう。

 とまれ、監督のイ・ジョンヒャンは今までの韓国人男性監督には「ない」感性の持ち主であることは間違いありません。川に指輪を投げ捨てるチョルスに向かって、チュニが言う台詞「溶けないものを川に捨てないで」は、環境に配慮したものでしょうし、シナリオの中にセックスシーンを入れようとするチョルスは、一昔前、プロデューサーが観客サービス(と言う名の金儲け主義)のために何でもかんでもセックスシーンを入れるように要求した韓国映画界の悪弊(日本人から見ると、韓国映画は不必要なセックスシーンが多いように感じることってありますよね?)を辛辣に批判しているのでしょうし、そもそも、歯も磨かないようなずぼらな女性と几帳面で料理もする男性という組み合わせ自体、これまでの韓国映画にはあり得ない設定です。

 あとは、隠喩・暗喩ではなく、外国人にも作品の新しさ、新鮮さがストレートに伝わるような、そんな作品作りをして欲しい。これが私のイ・ジョンヒャンへのリクエストです。

2001年1月2日執筆



投稿者:SUMさん 投稿日:1999年7月22日(木)22時47分47秒

 ひょんなことで出会った二人、それぞれに性格がデコボコで、たくさんのすれ違いを生むのだけれども、二人のそのでこぼこさには上手くかみ合う部分もあって、流れていく。画面のリズムとセリフのリズムだけで、微笑んでいるうちに映画が終わってしまった。シナリオのコンクールで受賞した作家がメガホンを撮った作品だが、画面のリズムの良さは監督の才能かスタッフの良さか。これだけ楽しんでしまったら、十分でしょう。センスがちょっとにくい。気前よく、★★★★★といきたいところだけれども、シム・ウナファンでない人もいるかもしれないので、自制してみました。


【評価:★★★★】



投稿者:T.Uさん 投稿日:1999年9月27日(月)11時34分58秒

 韓国留学中、聞き取りがまったく出来なかった僕は、約半年の間、まったく映画を見なかった。いや、あの『タイタニック』だけは見たのか。でも字幕がまったく読めなくて、「アンデェ!(だめ!)」の一言しかわからなかった。日本に帰ってから見た『タイタニック』は韓国で見たのとは話が違っていて、ちょっとショックでした。

 さて、そんな僕が初めて「あ、わかるわかる、この映画、聞き取れるよ!」と思ったのがこの『美術館の隣の動物園』でした。新村で見たのですが、シム・ウナがとてもかわいかったのと、見終わった後、とても充実した気分で劇場を出たのを覚えています。

 シム・ウナの演じたキャラクター、最高です。でも・・・韓国ではシム・ウナが好きだというと「田舎臭い」とか言われたりして、ちょっと立場が弱いんです。

【評価:★★★★】



投稿者:どさんこさん 投稿日:2003/2/2

 以前から観ようと思ってて、なかなか踏ん切りがつかなかったのですが、食わず嫌いでしたね。恋愛映画に区分される映画を避けてたのですが、観て本当に良かったと思います。男女がくっつくまでを、いかにもやきもきさせてただ焦らすような映画は大嫌いです。でもこの映画は全然違いましたね。シナリオの良さと、なんと言っても主演の二人がすばらしかった。特にシム・ウナさんには驚嘆です。

 昨年『カル』を観たときの彼女への印象は、正直そんなにありませんでした。最近『Interview』を観てから、さらにこの映画を観ましたが、三本とも全く違う女性像をそれは見事に演じ分けられている。ド素人の私が偉そうな事は言えませんが、彼女自身の実像らしきものが全く見えてこない。どんな女優さんに対しても、もちろんその人自身の実像が見えているわけではありません。でも何となく役どころが偏ったりして、イメージができてきたりしますよね。シム・ウナさんに関しては、頭の中が錯乱状態です。事実上『Interview』が引退作品のようになっているようですが、またスクリーンに戻ってくれるとうれしいですね。

【評価:★★★★】


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