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ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001 リポート

Text & Photo by 月原万貴子(月子)
2001/3/7受領


はじめに

 ゆうばり映画祭の2日目に当たる2月16日、話題の韓国映画『リベラ・メ』のワールドプレミア上映と舞台挨拶が行われました。また、終映後、この作品の製作に協力した釜山フィルム・コミッションのシンポジウムが開かれました。

 なお、今回の映画祭では、ヤング・コンペ部門の審査員として、『シュリ』チェ・ミンシクが来日しています。



『リベラ・メ』舞台挨拶

ゲスト: ヤン・ユノ(監督)
ヒョン・チュンヨル(プロデューサー)
ソ・ジョンミン(撮影監督 『女校怪談』『灼熱の屋上』
キム・スロ(男優 『シュリ』『アタック・ザ・ガス・ステーション!』『反則王』『アウトライブ −飛天舞−』


左から男優のキム・スロ、ソ・ジョンミン撮影監督、ヒョン・チュンヨル プロデューサー、そしてヤン・ユノ監督


 映画祭プロデューサーの小松沢氏の紹介の後、各人が夕張の印象と映画の見所について語ってくれました。

監督:
 「夕張はまるで童話の中の風景のようです。私は日本映画をいろいろ見ましたが、『リベラ・メ』は、日本の映画とはどこかが違うと思います。どこが違うのかみなさんにも考えて欲しいと思います。」

ヒョン氏:
 「私は韓国の中でももっとも南の土地に生まれました。だから日本の中でも北にある夕張は、まったく違った土地柄だろうと思っていたのですが、人情は同じだと分りました。私はこの映画の消防士たちをひとつの家族のように思っています。皆さんにも人間の結びつきに共感を持ってもらえるとうれしいです。」

ソ氏:
 「夕張の空気はすばらしくおいしい。ソウルに持って帰りたいくらいです。この美しい風景と空気を守りつづけて欲しいです。」

キム氏:
 「韓国を代表する先輩俳優が大勢出演している中、末席にいる私がこういった舞台に立たせてもらえることをありがたく思います。この映画は非常に力の入った作品で、危険なシーンも多かったのですが、最後までやり遂げられたのは、現在の韓国映画の状況が整ってきたからであり、誰もが手を抜かなかったからです。」

<月子の感想>
 監督は実年齢(1966年生まれ)よりも落ち着いた感じに見え、反対にヒョン氏はまるで学生のように若く見えました。ソ氏はいかにもベテランといった風格で、こういった人が参加することで、若い人が多い現場も引き締まるのでは?と思えました。キム氏は個性的な服装で、まさにいまどきの若者といった印象でした。


『リベラ・メ』作品紹介&レビュー


会場に貼ってあった『リベラ・メ』のポスター

 釜山市内では、原因不明の火事が相次いでいた。犠牲者も多く、消防隊員からも殉職者が出る。パートナーが自分をかばって死んだことが頭を離れない消防隊員のサンウ(チェ・ミンス)は、極限状態の火災現場で、無謀なまでに救助活動に没頭する。そんなサンウを新しいパートナーである後輩のヒョンテ(ユ・ジテ)は不安な面もちで見つめていた。やがて、調査員のミンソン(キム・ギュリ)とともに現場写真を調べていたサンウは、野次馬の中に不審な男(チャ・スンウォン)がいることに気が付く・・・

 とにかく火災シーンの迫力にびっくり。まるで生き物が呼吸するかのように縦横無尽に走る炎の怖ろしさが、温度を持って感じられるのだ。しかもこういった火災シーンを街の中心部で撮影したというのだからすごい。人が大勢集まる場所での火災といったものの恐怖が、リアルに伝わってくる。釜山フィルム・コミッションの全面協力があってこそ実現した作品なのだということが、よく分かった。

 とはいえ、火だけがすごくても、人間がきちんと描かれていなければ、つまらない作品になってしまうというもの。その点、本作は役者の熱演が、炎と同じくらいに熱いのがうれしい。チェ・ミンスは『ユリョン』でも見せたような、人に有無を言わせないような気迫に溢れており、まさにはまり役。ユ・ジテはあの魅力的な笑顔が少ないのが寂しいが、正義感と恐怖心の間で揺れ動く普通の男の子らしさを繊細に演じてみせている。しかしもっとも心を揺さぶられたのがチャ・スンウォンの演技だ。整った外見と、優しげな低い声。一見しごくまともな青年ながら、その内面に癒せない傷と、異常性を抱え込んでいる男を、確かに演じきった。モデルから俳優に転身してまだ3年目だというが、これからが楽しみな逸材だと思う。


フィルム・コミッション・シンポジウム

パネリスト: キム・ジソク(釜山映画祭プログラマー)
キム・ヒョンソク(釜山フィルム・コミッション)
ヤン・シヨン(釜山国際映画祭プログラミング・コーディネーター)
ヒョン・チュンヨル(『リベラ・メ』プロデューサー)
佐谷秀美(映画プロデューサー)

左からキム・ジソク、キム・ヒョンソク、ヤン・シヨン、ヒョン・チュンヨル


 日本映画『ひまわり』のプロデューサーとして釜山国際映画祭に参加し、釜山フィルム・コミッション(以下、FC)の存在を知ったという佐谷氏の呼びかけで実現した本シンポジウム。韓国初の釜山FC全面協力作品である『リベラ・メ』の製作過程を例にとって、その成り立ち、仕組みなどの詳しい説明がなされました。以下はその概略です。

 釜山市は韓国第2の大都市でありながら、近年は経済不調にあえいでいる。これを打破すべく、国際映画祭が市民に浸透していることから、映像産業を釜山市の新しい産業として根付かせるべく、官民合同でFCを立ち上げた。映画祭発のFCということで、スタジオやテーマパークの建設といった形ではなく、行政側が熱意と責任を持って取り組むことで、市民レベルの協力を取り付け、市街地での撮影がスムーズに行われることを目標とした。

 釜山市民は映画祭の国際的成功に誇りを持っており、世論調査でも進んで協力したいと答える人が多かった。実際、現在は市民によるエキストラ団体も3つ存在している。

 釜山FCは設立して1年しか経っていないが、かなりの成功を収めているといえる。たとえば『リベラ・メ』の場合、当初の見積もりでは50億ウォンほどかかると思われていた製作費が、FCの協力で40億ウォンほどに納まった。さらに、この映画を釜山市で撮影することで、撮影に関わる経費(滞在費、食費、機材のレンタル料など)が、市に10億ウォンほど落とされることとなり、確かな経済効果をあげることができた。

 現在は年間40本ほどの支援依頼があり、その中には海外(香港、日本など)からのものも含まれている。今後はより映像都市のイメージを確立すべく、映画学校の設立なども考えている。

<月子の感想>
 私の住む北海道も経済不調に悩んでいる土地でして、そのせいかどうかは知りませんが、北海道庁内で、FC立ち上げの準備が進んでいるそうです(*)。しかしながら、道民が釜山市民ほど映画撮影に対して寛容かどうかは疑問ですね。まあ、お話を伺っていると、釜山でも中には「爆音に驚いて犬が逃げたので探して」だの「あんたは若すぎて信用できないから、もっと偉い奴を連れて来い」だの言った人もいたそうですけど。
 それにしても、撮影のために警察が道路の封鎖に協力したり、路線バスの路線を変更したりなど、日本では(マラソンのときぐらいしか)考えられないほどの徹底した協力体制、すばらしいですね。

(*) 北海道でのFC設立の動きに関しては「シアターキノ」のホームページを参照して下さい。その他、日本のFCに関しては「FC設立研究会」や「横浜フィルムコミッション」が参考になります。

● シアターキノ「FC勉強会のお知らせ」
http://www.tanukikoji.or.jp/kino/FC.htm

● FC設立研究会
http://www.fc-japan.com/

● 横浜フィルムコミッション
http://www.city.yokohama.jp/me/ycvb/film/


【おまけ】審査員チェ・ミンシク氏に対する月子の感想

 チェ・ミンシク氏、予想以上に大柄な人でした。縦も横も大きくて貫禄があるから、実年齢より年上に見えました。ウェルカム・パーティーで半纏着せられて餅つきに参加していたのですが、似合っていました(笑)。

 付け焼刃ながらも色々丸暗記していったはずの韓国語ですが、実際に本人にお会いしたら、出てきた言葉は

「チェ・ミンシク氏  サイン ジョセヨ」
チェ・ミンシクさん サイン 下さい

だけでしたね(爆)。それでも『ハッピーエンド』のVCDを出したら「これ、見たんですか?」と聞いてくれました(傍にいた超美人の奥様が通訳してくれた)。優しい人でした。

 そして、ものすごく真面目な人でした。というのもコンペ部門の審査員だったのですから、作品を見るのは当然なのですが、上映後の作品関係者と観客のティーチ・インにも通訳の方と共に参加して、客に混じって質問までしていました。ここまでする人はなかなかいません(去年のアン・ソンギ氏は参加はしても、質問まではしなかった)。

 今年は、ユ・ジテくんとチャ・スンウォン氏の来夕キャンセルのニュースに泣いた私ですが、ふたを開けてみれば、しっかり楽しんじゃいました。来年はどんな作品が、そしてどんなゲストが来夕するのか今から楽しみです!



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