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THREE/臨死


画像提供:東京国際映画祭組織委員会事務局


題名
Video邦題
英題
原題
ハングル
THREE/臨死
THREE 死への扉
Three
スリー
쓰리
製作年 2002
時間 137
139(釜山映画祭)
127(日本公開版)
製作
 
 
配給
 
 
アプローズ・ピクチャーズ
映画社春
Cinemasia
CJエンターテインメント
アプローズ・ピクチャーズ
Sahamonckol Film
監督 キム・ジウン
ノンスィー・ニミブット
ピーター・チャン(陳可辛)
出演 キム・ヘス
チョン・ボソク
スウィニット・パンジャマワット
レオン・ライ(黎明)
エリック・ツァン(曽志偉)
日本版
Video
DVD
字幕版Video
吹替版Video
DVD

 韓国・タイ・香港の有名三監督による共同製作オムニバス・ミステリー映画。豪華な監督・スタッフ・俳優は、さながらアジア映画のドリーム・チームといった趣。

 アジア三ヶ国の資本と人材、ノウハウを結集して製作された本格的な汎アジア合作映画。『金枝玉葉〜君さえいれば』、『ラヴソング』のピーター・チャン監督が、新しい汎アジア映画のために人的資源と財源の組織化をめざして設立したアプローズ・ピクチャーズが企画。韓国からは『クワイエット・ファミリー』『反則王』のキム・ジウン監督が、タイからは『ナンナーク』、『ジャンダラ』のノンスィー・ニミブット監督が、香港からはピーター・チャンが参加。三ヶ国のプロデューサーが共同で企画し、製作・投資・配給は各国で独自に行うが、韓国はポスターとホームページ製作を、タイはポスプロ作業を、香港は海外セールスとプロモーションを担当するなど、各国が得意とする分野は分業制にしているのが特徴。

 第一話『メモリーズ(Memories)』は、韓国の映画社春が製作し、監督・脚本はキム・ジウン。プロデューサーはオ・ジョンワン。撮影はホン・ギョンピョ。美術はチョン・グホ。音楽は『マリといた夏』のイ・ビョンウ。

 ごくごく平凡な夫であるソンミン(チョン・ボソク)は、新都市のアパートに妻(キム・ヘス)と娘と一緒に引っ越してくる。しかし突然妻が蒸発。一人残されたソンミンは彼女を探し始めるが、アパートでは次々と不思議な事件が起こる。一方、ソンミンの妻は、とある路上で目覚める。記憶を失ってしまった彼女にとって、手がかりは財布の中のクリーニング屋の領収書だけ。彼女は我が家を探しながら、少しずつ記憶を取り戻し始める。

 現代韓国の象徴でもある新都市の描写が秀逸。また明るく元気なキャラクターのキム・ヘスが、初のホラー映画で既存のイメージとはまったく異なる演技を披露して話題に。チョン・ボソクは『秘花 〜スジョンの愛〜』で主演していた男優。

 ノンスィー・ニミブットの手による第二話『ホイール(Wheel)』は、呪われた操り人形によって引き起こされる連続死を通じて、人間のとどまるところを知らぬ欲を描いた作品。タイで口伝されている伝説をもとにしており、映画に出てくる人形劇団は今でも存在する。タイの伝統人形劇の技術は親から子へと伝授されるものだったが、他人にそれを盗まれないように持ち主が人形に呪いをかけることがあったという。

 タイの伝統仮面劇をするトンと、操り人形劇の名手タオ。二人は親戚だが、トンは貧しくタオは裕福だった。そして密かにタオをうらやむトン。病気にかかったタオは、人形の呪いを恐れて、妻と息子に人形を捨てさせようとするが、妻と息子は溺死。あくる日には、火事でタオも死んでしまう。タオの人形を盗んだトンに対して、タオの高弟だったカン(スウィニット・パンジャマワット)は「人形の呪い」を警告する。

 ピーター・チャンの第三話『ゴーイング・ホーム(Going Home)』は、ミステリー・メロ。撮影はクリストファー・ドイル。音楽はチョ・ソンウ

 古ぼけたアパートに、刑事のウェイ(エリック・ツァン)と息子が引っ越してくる。ウェイの息子は、ある日、真っ赤な服の少女と出会い、やがて行方不明に・・・ 息子を探すウェイは、赤い服の少女の家を訪れるが、そこには漢方医フェイ(レオン・ライ)がいた。

 ピーター・チャンが『八月のクリスマス』から大きな衝撃を受けたというのはよく知られた話だが、『ゴーイング・ホーム』に出てくる写真館は『八月のクリスマス』のそれを想起させる。

 三作品とも幽霊・怪談物だが、そこには三ヶ国の文化や情緒、三人の監督の個性による違いが明確に現れていて面白い。

 本作を企画したアプローズ・ピクチャーズ(香港)は、『春の日は過ぎゆく』に出資しているほか、香港映画『十二夜』、ノンスィー・ニミブットの『ジャンダラ』、オキサイド・パン&ダニー・パン兄弟の『The Eyes』を製作するなど、アジアをまたにかけた活動をしている会社。

 本作は、アジア三ヶ国の映画人が力をあわせて、市場を広げることを狙いとして製作された。韓国・タイ・香港は、いずれも映画産業が盛んで、量的にも更なる成長をしたいが、自国市場が狭く成長には限界があるという共通点がある。三ヶ国オムニバスで製作し、自国の有名監督作品目当てで映画館に来た観客に、他の二国の作品も見てもらい、各々の国の映画に慣れ親しんでもらおうという狙いがある。ちなみに、韓国側プロデューサーであるオ・ジョンワンの言によれば、アジア映画の中で日本と台湾をメンバーに入れなかったのは、台湾に関しては自国映画市場が沈滞しており、日本には作品性と興行性を兼ね備えたニューウェーブ監督が見当たらなかったためとか。

 まず2002年7月にタイで封切りし、同国映画史上興行三位となる大成功をおさめ、8月15日には香港で、8月23日には韓国で公開された。タイと香港では成功を収めた本作だが、韓国での興行は残念ながら振るわなかった。

 第15回(2002)東京国際映画祭アジアの風部門、第21回(2002)バンクーバー国際映画祭龍虎賞(Dragons and Tigers)部門、第46回(2002)ロンドン映画祭、第7回(2002)釜山国際映画祭韓国映画パノマラ部門、2003年ブリュッセル国際ファンタジー映画祭、第7回みちのく国際ミステリー映画祭2003 in 盛岡招待作品。

 第39回(2002)金馬獎(台湾)最優秀主演男優賞(レオン・ライ)・最優秀撮影賞(クリストファー・ドイル)、2003年香港金像賞最優秀新人賞(ユージニア・ユアン)受賞作品。

 日本ではノベライズ『THREE/臨死』(林巧著)が角川ホラー文庫より出版されている。

 日本劇場公開版は、レオン・ライがエンディングテーマを歌うスペシャルバージョン。

 日本版Video&DVDは『THREE 死への扉』という題名で発売されている。

初版:2002/9/12



投稿者:カツヲうどんさん 投稿日:2002/9/20 22:13:57

 五年前なら、韓国の一般劇場では上映が困難であったろう異色のオムニバス・ホラーだ。

 共通のテーマとして「主観現実」が全ての物語に流れている。そういう点でも娯楽性から遠く離れた作品なのだが、こういう映画がヒットする/しないにかかわらず、大規模公開される韓国の今の現実は、マーケットにおける受ける側と提供する側の大きな変化なのかもしれない。

 以下、ネタばれしない程度に各作品を紹介しよう。

第一話 『ホイール』

 日本でも公開された映画『ナンナーク』のノンスィー・ニミブット監督が撮った、まさにタイの「土着」映画。

 呪われた人形に弄ばれる人々の陰惨な運命を、現実とも非現実ともつかない構成で描いてゆく。作りはなかなか丁寧だが、三作中一番「普通」に撮られていることが裏目に出てしまい、都市を舞台にしていないこと、タイの風俗が韓国や香港・日本とかなり離れていることなどが原因して、もっとも違和感を感じる作品になっている。

 ホラー映画というより、伝奇物・怪奇物といった風情であり、妙に懐かしい感覚に捕らわれる。

第二話 『メモリーズ』

 『反則王』のキム・ジウン監督が描く、スタイリッシュかつ実験的な都市型ホラーであり、力作だ。

 ストーリーに大きなどんでん返しがあるため詳しくは書けないが、記憶を失って街をさ迷う女(キム・ヘス)と、妻が行方不明になった男(チョン・ボソク)の物語である。作風が『反則王』のイメージとは大きく離れているため驚く方もいるとは思うが、この監督、根っからの映画青年であることが良くわかる映画となっている。

 ホン・ギョンピョの撮影が素晴らしく、ここ数年急速に増え続けている新興団地の風景を、韓国の気候風土を織り交ぜながら、巧妙に特異な空間を作り上げる事に成功しており、一見の価値はある。ただし、どこかの作品で観たような手法がそのまま使われていることや、こけ脅しの安易な演出がたびたび入るので、興ざめしてしまう部分もある。だが、感銘を受けた作品のテクニックをそのまま使ってしまう率直さは、韓国映画の活気を支えている大きな要因の一つなのかもしれない。

第三話 『ゴーイング・ホーム』

 香港のピーター・チャン監督が担当した、これも「都市型ホラー」である。主演がレオン・ライ、撮影がクリストファー・ドイルという中々豪華な内容で、個人的には最も気に入った作品。

 死んだ妻の再生を信じる男と、彼の奇妙な行動に巻き込まれた父子の物語が軸になっている。映像は、かつてのソビエト映画のような暗いグリーンを基調にした物で、独特の世界観を醸し出す。本来ならばもっと長い尺数が必要な内容となっているため、未消化になった感はあるものの、絶対にユーモアとヒューマニズムを忘れないピーター・チャンの演出姿勢は、感動的な悲劇を観る者に語りかけ、好印象を残す。


 さて、この企画には実はもう一つの共通テーマがあったように思う。それは「都市」というテーマである。しかし、タイで製作された作品が普通の農村を舞台にした作品であったため、他の二作から大きく浮いてしまい中途半端なのが残念だ。

 また、オムニバス故、作品が後世人々の記憶に残らないという宿命からも、この映画は逃れられないだろう。だが、合作の一つの形として、こういう方法は今後共、定期的に行うべきかな?とも考えた。なぜなら国が違うということは、いくら美辞麗句を並べても、基本になるのは対立だからだ。しかしオムニバスなら、その対立が比較となり、個性となりうる。

 最後に韓国の劇場で気になった事が一つ。キム・ジウンの『メモリーズ』が終わった途端、退席する観客が多かったことである。ある程度は仕方ないものの、もう少し製作&出演者に敬意を払ってもらいたかったところである。

《注》 韓国のプレス資料などでは、第一話が『メモリーズ』、第二話が『ホイール』となっていますが、カツヲうどんさんがご覧になった劇場では、第一話『ホイール』、第二話『メモリーズ』の順で上映されたそうです。

【評価:★★★】


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