現代人の必須アイテムである携帯電話を題材にしたミステリー&ホラー。刃物や血をふんだんに使ったハリウッド型スプラッター・ムービーではなく、中田秀夫監督の『リング』や『仄暗い水の底から』型の作品。「女性の恨み・執念」を恐怖・寒気の根源とする。また、2002年日韓国民交流年プレ事業「2001韓国映画プロジェクト2」で日本初公開されたイ・マニ監督の『魔の階段』(1964)やキム・ギヨン監督の『下女』(1960)など、1960年代の韓国恐怖映画からの引用やオマージュと思われるシーンや設定があるほか、物の怪に取り付かれたかのごとく振舞う子供は『エクソシスト』のリンダ・ブレアに匹敵する凄みを持つ。
援助交際の記事を書いたジャーナリストのジウォン(ハ・ジウォン)は、しつこい脅迫電話に苦しめられ、親友のホジョン(キム・ユミ)とその夫チャンフン(チェ・ウジェ)に勧められるままに、夫妻の別宅にしばらく身を隠すことにする。そして、これを機にと、電話会社で「この番号しかない」と言われた"011-9998-6644"に携帯電話の番号を変更する。しかし、ホジョンの娘ヨンジュ(ウン・ソウ)が、ジウォンの代わりにこの電話に出てから、何かに憑かれたような異常な行動をとり始め、絵に描いたような理想的なホジョンの家庭はめちゃくちゃになってしまう。その一方で、ジウォンに脅迫電話をかけていた犯人が、ジウォンの携帯電話にかかってきた雑音交じりの少女の声を聞いた瞬間、恐怖のあまり心臓発作で死んでしまうという事件も発生。謎の事件の手掛かりを探し始めたジウォンは、以前自分の携帯電話の番号を使っていた人たちが皆謎の死を遂げており、ある女子高生は失踪していることを知る。
劇中登場する電話番号の"6644"は西欧で悪魔の数字と忌み嫌われる"6"と、「死」を意味する"4"(韓国語でも「死」と「四」は同じく「サ」と発音する、四階がないビルも多い)を組み合わせたものだが、この四桁の番号はなんとアン監督の持っている携帯電話の番号と一緒だという。
ハ・ジウォンは、アン監督の前作でこれまたホラー映画の『友引忌 −ともびき−』にも主演。二作続けてのホラー映画出演となり、くわえて両作品ともスマッシュ・ヒットとなったため本作公開中は「ホラー・クィーン」の名を欲しいままにした。また、次回作のギャラも一気に高騰したとか。なお、二作連続でホラー映画にハ・ジウォンを起用した理由を監督のアン・ビョンギは「彼女の独特の瞳に代わるものがなかった」と答えている。
1980年10月12日ソウル生まれで、SBSテレビ・ドラマ『警察特攻隊』(2000)でデビュー、同作でSBS演技大賞新人賞を受賞したキム・ユミ(金有美)がハ・ジウォンの友人カン・ホジョンを演じる。彼女は『警察特攻隊』以外にも、『天使の憤怒』(SBS,2000)、『商道』(2001,MBC)、『太陽人イ・ジェマ』(2002,KBS)、『ロマンス』(2002,MBC)など主にテレビ・ドラマで活躍するタレントで、本作の後には『威風堂々の彼女』(MBC,2003)に出演している。『魚座』に出演していたチェ・ウジェ(1974年ソウル生まれ、187cm)がホジョンの夫で、証券会社CEOのイ・チャンフンを演じる。二人の娘で7歳の女の子は、SBSテレビ・ドラマ『守護天使』の演技により2001年SBS演技大賞子役部門で受賞した子役のウン・ソウが演じる。ちなみに、彼女の兄ウン・ウォンジェは『ロスト・メモリーズ』に出演している。2000年にCMで芸能界デビューしたチェ・ジヨン(1980年ソウル生まれ)は、2001年にチャン・ドンゴンと共演したCMで「イ・ヨンエにそっくり!」と話題になり、MBCテレビ・ドラマ『愛の賛歌』やSBSテレビ・ドラマ『お父さんと息子』に出演した女優で、映画初出演となる本作では問題の女子高生ジニ役を演じた。
『新羅の月夜』のイ・ジョンスと、アン監督の前作『友引忌 −ともびき−』に出演していたチェ・ジョンユンが友情出演。
2000年に公開されヒットした正統派ホラー『友引忌 −ともびき−』のアン・ビョンギ監督第二作。製作も監督のアン・ビョンギ。シナリオはイ・ユジンと監督のアン・ビョンギ。プロデューサーはキム・ヨンデ。撮影はムン・ヨンシク。照明はチェ・ソンウォン。音楽はイ・サンホ。セットはオ・サンマン。編集はパク・スンドク。製作は、アン監督が設立したトイレット・ピクチャーズ。総製作費は30億ウォン(うち純製作費は20億ウォン)。ハリウッドの韓国内直接配給会社ブエナビスタが初めて韓国映画の投資・配給を担当した作品。
第6回(2002)富川国際ファンタスティック映画祭クロージング、東京国際ファンタスティック映画祭2002、2003年ブリュッセル国際ファンタジー映画祭、第5回(2003)Udine Far East Film Festival招待作品。
第26回(2003)黄金撮影賞金賞(ムン・ヨンシク)・準会員賞(ホン・スンワン)・照明賞(チェ・ソンウォン)受賞作品。
全国で200万人を超える動員数をマークし、2002年サマー・シーズンに公開された韓国映画としては、最大のヒット作となった。
日本ではマスコミ試写の最中から不気味な出来事が次々と発生し、試写場でお祓いがされた。また、テレビのスポットCMが、子役のウン・ソウの鬼気迫る演技に「子供が怖がる」とクレームが殺到、急遽別バージョンに差し替えられるなど、公開前から話題を呼んだ。
日本ではノベライズ小説『ボイス』(吉村達也著)が角川ホラー文庫より発売されている。
初版:2002/9/11
最新版:2003/4/28
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