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KT


題名
ハングル
KT
케이티
製作年 2002
時間 138(日本公開版)
125(韓国公開版)
製作
 
 
 
 
製作協力
製作投資
 
日本配給
韓国配給
『KT』製作委員会
 シネカノン
 衛星劇場
 毎日放送
 デジタルサイトコリア
KNHO
VONエンターテイメント
インター・メディア
シネカノン
20世紀フォックス・コリア
監督 阪本順治
出演 佐藤浩市
キム・ガプス
チェ・イルァ
筒井道隆
ヤン・ウニョン
香川照之
大口ひろし
柄本明
光石研
利重剛
麿赤兒
江波杏子
中本奈奈
平田満
キム・ビョンセ
原田芳雄
白竜
浜田晃
佐原健二
山田辰夫
康すおん
金廣照
木下ほうか
キム・ミョンジュン
ユ・イルァン
キム・デソン
日本版
Video
DVD
Video
DVD

 1973年8月8日に発生し、当時の日韓関係に暗い影を落とした金大中拉致事件を、大胆な仮説に基づいて描いた日韓合作ポリティカル・サスペンス。歴史の暗部に鋭いメスをつきつける。

 事件は、当時、朴正煕(パク・チョンヒ)軍事政権に対する反政府運動を展開していた新民党の金大中(キム・デジュン,当時は「キン・ダイチュウ」と発音されていた)元大統領候補が、東京・九段のホテル・グランドパレスの一室から白昼拉致され、5日後にソウル市内の自宅前で、目隠しされたうえ傷だらけの姿で発見されたというもの。日本の国家主権の侵犯、人権といった観点から大問題になったが、その後政治決着がなされ、その真相は金大中が大統領になった現在でも明らかになっていない。

 題名の『KT』は金大中のイニシャルであり、事件当時の金大中暗殺の暗号で「Kill the Target」をも意味する。

 原作は中薗英助の『拉致−知られざる金大中事件』(社会思想社,新潮文庫刊)。脚本は荒井晴彦。ただし、撮影段階で脚本は大幅に変更され、政治的・思想的な背景は極力押さえられた内容となった。音楽監督は布袋寅泰(サントラは東芝EMIより発売)。

 『太白山脈』でガチガチの右翼ヨム・サングを演じていたキム・ガプスが韓国大使館一等書記官キム・チャウン(金車雲)を、『愛の黙示録』『イ・ジェスの乱』『ベサメムーチョ』などにも出演しているベテラン演劇俳優チェ・イルァが金大中を演じる。また、『Interview』『公共の敵』にも出演しているヤン・ウニョン(梁銀容)は、民主化デモによりKCIAに連行・投獄され、出獄後日本に渡ってきたイ・ジョンミを演じる。

 製作費約4億2000万円。ゼネラルプロデューサーであるシネカノンの李鳳宇は製作にあたって「『スターリングラード』、『アポロ13』、『JFK』のような史実に基づいた骨太な映画にしたい」と発言。

 2002年5月3日に、史上初めて日韓同時公開され話題となった。韓国では「現職大統領の金大中をあまりに戯画化している」との理由でこの映画のラジオCMが放送不可とされたり、「金大中を殺せ」というコピーが新聞広告として掲載され「やりすぎでは?」との抗議が来るなど様々なハプニングも発生。ちなみに、金大中大統領本人は、大統領府でこの映画を鑑賞し「この映画を見ると、拉致事件の真実はまさにこれではないかという気がする程でした」とコメントした。

 韓国では一週間で上映打ち切りと興行的には惨敗。

 日本では『映画芸術』より臨時増刊号「KTの全貌」が発売されている。

 第52回(2002)ベルリン国際映画祭コンペ部門、第21回(2002)バンクーバー国際映画祭龍虎賞(Dragons and Tigers)部門、第46回(2002)ロンドン映画祭招待、第3回全州国際映画祭2002オープニング作品。

初版:2002/4/7
最新版:2002/5/13



投稿者:iwakoさん 投稿日:2002/5/13 13:23:15

 原作も読んでみましたが、映画はずいぶんちがう感じがしました。脚本の荒井晴彦の趣味なんでしょうか。三島事件をからめていて、私には主人公富田が「死に遅れた者」として描かれ、KCIAに加担することで、遅れをとりもどそうとしている映画にみえました。

 荒井の1970年代へのこだわりだろうと思いますが、「こだわり」というよりは「ひきずり」でした。今の若い世代の人がこの富田をどのように理解するのかわかりませんが、私は以上のように感じました。

 ヤン・ウニョンさんは『Interview』の時とはがらっと変った役柄を演じていて、健気な女性像を作っていました。

【評価:★★★】



投稿者:hal さん 投稿日:2002/5/18 23:32:43

 初めて韓国がらみの映画を見ました。『シュリ』『JSA』も知らない。この映画も日韓合作ですが、監督は日本人だし、純粋な韓国映画という訳ではないのですが、韓国映画の窓口を開けてくれた作品です。特にキム・ガプスの演技には心奪われるものがありました。

 正直、文句無く面白かった。原作とも視点が違うし、脚本からかなり削った部分も多いようですが、最終的な形としての完成度が高いのではないかと思う。

 ところが、韓国では惨敗とのことですね。冷静に考えると、現場は日本だったし、やはり日本人の目から見た映画ということかもしれない。考えてみれば、自身が韓国映画を見ていない訳だし、この映画が韓国でも興行的に成功することに期待するのも筋違いと思うのですが、エンターテイメントとしてものすごく気に入っている分、すごく残念。

【評価:★★★★★】



【鑑賞ノオト】 Text by 月原万貴子(月子) 2002/6/4

 1973年に発生した金大中拉致事件。未だに解明されないこの事件を、事実の検証と大胆な推理で作り上げたポリティカル・サスペンス。志の高さは認めるが、どうにも言葉足らずの印象が拭えない。なんていうかダイジェスト版っぽいのだ。「もっと長い作品だったのを、この尺になるまでカットした」というのが、ありありなのは、作品としては失敗なのではないだろうか?

 この内容をきちんと描こうとしたら、三時間以上の大作となってしまうだろう。ニ時間程度に収めたいのであれば、脚本段階でそのように検証してもらいたかった。作品全体を覆い尽くす緊張感に「傑作」を予感しただけに、失望感も大きい。

 大使館員の仮面の下で、この拉致事件の実質的リーダーとなるキム・チャウン(キム・ガプス)と、協力者たる自衛官・富田三等陸佐(佐藤浩市)の男気むんむんの演技合戦が見物。日韓・おとなの男の色気対決にはクラクラさせられたけど、正直言ってこの作品にはそれ以外の魅力は感じなかった。

 特に残念だったのがイ・ジョンミ(ヤン・ウニョン)の扱いだ。学生時代に民主化デモに参加し、逮捕された過去を持つという強烈なキャラクターに設定されているにも関わらず、富田とのキス・シーンと、裸になり拷問の傷痕を見せるシーン以外にこれといった見せ場もないなんて、なんのために登場させたんだか? と思ってしまう。女を描くのが下手な阪本監督の弱点が、モロに出てしまった感じがした。

【評価:★★★】


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