光州事件から逃げ出して来た大学生と、彼が潜伏しているアメリカ軍基地街に住むチンピラや娼婦が織り成す青春群像。16mm。独立映画集団チャンサンコンメの作品。製作はナン・ヒソプとイ・ジェグ(李在求)、シナリオはコン・スチャン(孔水昌)とホン・ギソン(洪基善)。この映画の共同監督である3人は後に商業映画界に進出。多彩な活動をしている。
1980年5月に光州で発生した市民の民主化運動に対する政府の大弾圧、いわゆる光州事件をテーマにした作品。若い映画人達がゲリラ的に製作しており、チャンサンコンメ以外にも多くの大学の映画研究部や独立映画集団が製作に参加している。テクニックや演出は稚拙であるが、「何かを伝えたい」という製作者たちの熱意が感じ取れる佳作。
大学生のチョンスが米軍基地の街である東豆川にやってきて、知り合いのチンピラ、テホの厄介になるところから話しは始まる。アメリカ軍人との闇取引や売春行為によって生計を立てているチンピラや娼婦たち。彼らの行動の中に韓国の置かれた立場、そして矛盾を感じるチョンスだが、彼は夜な夜な悪夢にうなされる。実は、彼は光州での民主化運動に参加していたが、政府軍との衝突を目前にして市民軍から逃亡してきたのだ。
韓国では、当局の上映中止勧告にもかかわらず自主上映で延べ30万人の観客を動員したといわれる。この映画が自主上映されたユ・インテクが運営する芸術劇場ハンマダンでは、毎回満席が続いたという。
「チャンサンコンメ」とは、長山(チャンサン)岬(コッ)の鷹(メ)という意味で、朝鮮半島が外国から侵略を受けるたびに長山串(現在は北朝鮮に属する村)の岬から鷹が現れて国を守ったという伝説に由来する。
『グリーンフィッシュ』と『八月のクリスマス』でハン・ソッキュの妹役をしていたオ・ジヘが出演している。また、後に監督として活躍するキム・ドンビン、イ・ジョングクらも製作に協力している。
初版:1998/12/7
最新版:2001/7/31
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