「結婚ってなんだろうねって、自然体で、丁寧に、大人っぽくセンスあるセリフの積み重ねで描いた作品(SUMさんの投稿より)」
結婚に対して嫌悪感すら抱いている大学講師と、「結婚と恋愛は別」と考えている女性を通して、多様な愛の形・結婚の形態を考える社会問題提起型のメロ・ドラマ。既存の結婚制度を風刺する。裕福で経済力のある男と結婚して、週末には別の男と恋愛とセックスを楽しむ女性が登場。二人の男との二重生活によってお金と愛の二つを得るのだが・・・
毎週末のように、韓国全土で繰り広げられる結婚式場でのお馴染みの光景。30代の大学講師ジュニョン(カム・ウソン)は、弟の結婚式の日、友人の紹介で、デザイナーのヨニ(オム・ジョンファ)と知り合う。そして出会ったその日、一杯やって地下鉄がなくなるとジュニョンは「タクシー代よりもホテル代のほうが安いだろう」とヨニをラブホテルに誘い、二人は一晩を共にする。やがて、お互いの結婚観や恋愛観について話し始める二人。ジュニョンは結婚には絶対縛られたくない恋愛至上主義者。一方「結婚と恋愛は別」と考えるヨニは、自由奔放な考えの持ち主だが、安定した家庭生活も夢見ている。その後、ヨニは稼ぎの良い医者と結婚するが、愛のない生活に不満を持ち、ジュニョンに部屋を借り与え、彼と週末夫婦のような生活を始める。
主演男女のナチュラル感のある演技が好評。今や「韓国のマドンナ」とも称される超人気歌手となったオム・ジョンファ(厳正化,1971年8月17日生まれ)の8年ぶりの映画復帰作。あまり知られていないが、彼女は『結婚物語』(1992)でスクリーン・デビューし、本作の監督ユ・ハの前作『風吹く日には狎鴎亭洞に行かなきゃ』(1993)や『女房殺し』(1994)に出演しており、アニメ『ブルー・シーガル』(1994)では声優にもチャレンジしている。また、『風吹く日には狎鴎亭洞に行かなきゃ』では第17回(1994)黄金撮影賞新人演技賞を受賞。
オム・ジョンファの相手役カム・ウソン(1970年10月1日生まれ)は、ソウル大学美術学部を卒業し、1991年にMBC公開採用で芸能界入りしたタレント。テレビ・ドラマ『メディカル・センター』などに出演しており、俳優生活は11年目だが、映画出演はこれが初となる。本作では危険な匂いを漂わせながら、自然で大胆なベッド・シーンを披露したが、彼自身は「社会的メッセージが込められた作品」と判断して、本作への出演を決めたという。ちなみに、カム・ウソンとオム・ジョンファは1993年にMBCのベスト劇場で既に共演済み。
オム・ジョンファが脱いで、ベッド・シーンに挑戦!ということでスポーツ新聞では下世話に報道されたが、リアルでエロティックなベッド・シーンそのものよりも、むしろ若い男女の恋愛観・結婚観を反映した過激な会話内容で驚かせるというパターンは、『ディナーの後に』を髣髴とさせる。ちなみに、同じく人気歌手が脱いだ近作としては、"Roo'Ra" のキム・ジヒョンがオール・ヌードを披露した『覗き』(2001)などがある。
詩人で、1993年に自らの詩集『風吹く日には狎鴎亭洞に行かなきゃ』をチェ・ミンス&オム・ジョンファの主演により映画化したユ・ハが9年ぶりにメガホンをとる。なお、ユ・ハは他にも詩集『武林日記』、『世の中のあらゆる夕暮れ』、『世運商店街キッドの愛』、『天日馬画』、散文集『ブルース・リー世代に捧げる』などを発表している。
2000年に第24回「今日の作家賞」を受賞したイ・マンギョ(34)の小説を映画化。脚色も監督のユ・ハが担当しているが、彼は「今日の作家賞」の審査委員をしており、審査時に小説を読んだ時から、映画化を心に決めていたという。
製作はチャ・スンジェ。撮影はキム・ヨンホ。照明はチョン・ヨンミン。編集はパク・コッチ。音楽はチョ・ソンウの弟子で、これが音楽監督デビュー作となるキム・ジュンソク(M&F;)。美術はパク・イリョン。セットはオ・サンマン。
韓国では全国で100万人を超える動員を記録し、スマッシュ・ヒットに。『寵愛』なみのベッド・シーン頻出映画なため、それ目当てに男性客が殺到したかと思いきや、結婚を目前に控えた20代後半から30代中盤までの男女や既婚男女、それに20代前半のカップルの共感を得たのがヒットの原因とか。ちなみに、公開後に製作会社のサイダスが主婦観客200人を対象に行ったアンケート調査では、回答者の69%が映画の中の二重生活に対して好意的な反応を示したという。また、韓国の週刊映画雑誌『シネ21』は、本作の公開に前後して「印象批評、あるいは女性学エッセーで解き明かした結婚に対する経済学的分析」という特集を掲載。公開後は映画の公式サイトで、ヨニの一妻多夫制(?)に対して賛否両論の論争が戦わされるなど話題を呼んだ。
第15回(2002)東京国際映画祭アジアの風部門招待作品。東京国際映画祭では『結婚は狂気の沙汰』という題名で上映。
第1回(2002)MBC映画賞新人男優賞(カム・ウソン)、第7回(2002)女性観客映画賞「最高の韓国映画」賞二位・「最高の女子俳優」賞二位(オム・ジョンファ)・「最高の男子俳優」賞(カム・ウソン)、第39回(2003)百想芸術大賞最優秀女子演技賞(オム・ジョンファ)受賞作品。
初版:2002/9/12
最新版:2002/9/22
|